【夏野剛】『ブラックパンサー』に学ぶ若きリーダーの哲学
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劇中で、スラム街で遊ぶ少年が空を見上げてワカンダの飛行船に気づくというシーンがありますが、アフリカ系アメリカ人として色々苦しいけど本当は自分達のルーツのアフリカの方が豊かで進んでいて、いつか迎えが来るんでは、とライアン・クーグラ監督の幼き頃に実際に空想していたことだとものの本で読みました。
前作の『クリード』にもかなり衝撃を受けて猛烈に感動したので周りに勧めまくってたのですが、これもロッキーシリーズの中での"飢え"の定義を「人生の成功」から「自分のルーツの奪回」にスライドさせる事でもはやロッキーシリーズ全体を深化させる作品になってました。
ハリウッドでいまパワーワードとなっている"多様性"という追風があるにせよ、たった3作目で『ブラックパンサー』の様なビックバジェットの作品にアサインされるのは、
監督としての実力や芯のある作家性はさることながら制作時の経緯ですら映画がかっていて、もはや彼の周り全てが演出されているかの様な凄みも関係してるかも。
下記の経緯を読んだ時は鳥肌が立ちました。
https://miyearnzzlabo.com/archives/31895
<引用>
(町山智浩)で、いきなりですね、まだ映画を1本も作ってなかったのに、この『クリード』のスタートが始まったんですよね。
(赤江珠緒)それ、すごいですね。いままでの『ロッキー』を台無しにしてしまう可能性だってあるじゃないですか。
(町山智浩)あるんですけど。このライアン・クーグラーっていうアフリカ系の27才の何も撮っていなかった監督に、スタローンは賭けたんですよ。
(赤江珠緒)えっ?
続く・・・この映画、米国人の友人たちに誘われて観たのですが… 「ああ、アメリカヒーローものかあ」と乗り気ではなかったのですが、良かったです!主役級が全てblack。これもまた珍しいこと。夏野さんが仰る通り、長時間バージョンが観てみたいです。
アメリカではタイタニック越えの空前の大ヒットを飛ばし(歴代興行収入第9位)社会現象にもなった「ブラックパンサー」
日本では大方の予想通り、興行的には期待はずれに終わりました。
なにせ、マーベルシネマティックユニバース初のマイノリティ(黒人)ヒーローというのは勿論、あまり強くない男性主人公が、強い美人女性(しかも4人も)の支えでヒーローとして成長していくという筋書き、王位簒奪と真の王の帰還というみんな大好きゲームオブスローンズ的ドラマ要素、そしてエンディングの「賢者は橋をかけ、愚か者は壁を作る」という誰かさんへの当てつけっぽい国連総会の演説のシーンに象徴されるように、現代のアメリカに刺さる要素をふんだんに散りばめた映画ですから、ハリウッド的には大成功作であることは疑いありません。
ただ、ここまでされると、私には流石にある種のあざとさを感じてしまうのですよね。
その分、その手の要素にはあまり反応しない日本のマーケットでは、多分受けないだろうなあ、というのも容易に想像できたことかと。
なお、マーベルは味をしめてか、今後初のイスラム系ヒロインの4代目ミズマーベル、同じくアジア系ではスパイダーマンのクラスメートでもう一人のスパイダーマン(女性だけど)、シルクなどのマイノリティ系ヒーローの映画化が予定されているそうです。
この路線で行くと次は中国系ヒロインかしら?
(シルクはアジア系ですがコリアン系アメリカ人なので)
色々書きましたが、映画自体は面白いのでご安心を。
一連のマーベル作品では先程の狙った要素も含めてかなりの秀作であることは間違いないです。
特に本筋のアベンジャーズのインフィニティウォーでは、ブラックパンサーとワカンダ王国はかなり重要な位置を占めていますから、見ておいて損はない、というか見てないと意味がわからないと思います。
日本人である我々は、あまり余計なことを考えずに、純粋にヒーロー活劇を楽しむべき映画なのでしょうね。