ビジネスの根底が変わる。第4次産業革命は「AI+RPA」で起きる

2018/6/28
「働き方改革」が叫ばれるなか、ホワイトカラーの生産性を劇的に上げると言われるRPA(Robotic Process Automation)が注目されている。このテクノロジーに10年以上前から取り組み、ソリューションとして提供してきたRPAホールディングスは、2018年3月に東証マザーズに上場。「RPAの普及はビジネスの構造を根本的に変える」と語る、高橋知道社長に話を聞いた。
生産性は「1人あたりの粗利」で測る
──「働き方改革」が叫ばれるなか、残業削減などの改革を行い、一定の成果が出ているとする企業も徐々に増えてきました。一方で、労働時間を減らすことは本質ではないという指摘もあります。
高橋 そもそも働き方改革が必要になった背景は、日本企業の生産性の低さにあります。私が考える生産性の定義は、企業における「従業員1人あたりの粗利」。国民所得でいう1人あたりのGDPです。
 いくら残業が減っても、顧客への提供価値が上がらない限り業績は伸びず、従業員の給料は上がりません。社員がハッピーになるためには、労働時間を減らしつつも、会社がプラスに循環していく必要があります。
 だからこそ、生産性は数字で測り、KPIとして捉えるべきなのです。
──あらゆる経営者が頭を悩ませている問題だと思いますが、日本の生産性は、どうすれば本質的に高められるのでしょうか。
 ヒントは、かつての製造業の現場にあります。1970年代〜80年代の日本の製造業は、アメリカの約2倍の労働生産性を誇っていました。
 その原動力は、世界でもっとも先進的だったファクトリーオートメーション(FA)ロボットの技術です。
 ロボットといえば“SF”だった時代に、工場の製造ラインで使えるFAロボットを現場が作り出し、人が張り付いていたルーティンワークを代行させた。それによってミスをなくし、高い品質を実現し、リードタイムを高速化したことで、圧倒的な生産性と価格競争力を獲得したのです。
 重要なのは、これらは「顧客とシェアできる価値」だということ。
 自社の発揮するバリューを評価し、企業価値を引き上げてくれるのは、あくまでも顧客です。内向きの効率化やコストカットではなく、「顧客に高い価値を効率よく提供すること」こそが、生産性向上の本質です。
生産性革命の引き金は“ロボット”
──ひるがえって、RPAはホワイトカラーの業務を自動化・効率化するためのロボットですが、実際にはどう使われるのでしょうか。
 RPAはまだ未知の道具というイメージが強いと思いますが、間もなくホワイトカラーの誰もが日々当たり前に使う“文房具”になります。
 ビジネスに用いられる道具は、テクノロジーの進化とともに移り変わってきました。
 30年前のパソコン、20年前のインターネット、10年前のスマホとたどってみれば、“文房具”が変わることで生産性に革命が起きることは明らかです。つまり、仕事のやり方自体が再定義されるのです。
FAロボットの登場により、製造業の生産性には革新が起きた
 いまやコンピューターは、誰もが特別な知識なしで使えることが当たり前になりました。“文房具”が変われば仕事の中身が変わり、生産性の質が変わるというのは、我々がこの十数年間で体験してきた通りです。
──RPAの普及によって、仕事のやり方に再び革命が起きる、と。
 まだRPAという言葉もなかった10年前、我々がBizRobo!を作った原点は、付加価値の出しづらい煩雑で面倒な作業や業務をロボットに代行させることはできないか、と考えたところにあります。
 ホワイトカラーの生産活動は、インプットが情報で、アウトプットも情報。つまり情報システムと人の組み合わせによって営まれています。しかし、業務内で情報システムの対象にならないものが2つあるのです。
 1つはROIに見合わないもの。情報システムの構築にはエンジニアリングが必要なので、ROIの概念で取捨選択されます。すると、こぼれた作業は人手で処理するしかありません。
 もう1つは変化する業務です。情報システムは変化に弱いので、変化の割合が多い仕事は、やはり人がやるしかないと思われてきました。しかし、実際にはどちらも微細な違いのルーティンワークであることが非常に多いのです。
 この部分を自動化するために用いられるのがRPAです。デジタライゼーションの観点から説明すれば、RPAは情報システムとリソースをつなげる「コネクター」とも言えます。
 よく「第4次産業革命の中心はAIだ」という話がされますが、そのAIも人間のオペレーションが介在したらうまく動きません。24時間止まらないAIと人間とでは処理スピードが桁違いだからです。
 AIを正しく動作させ続けるためにも、あらゆるオペレーションをロボットで自動化する必要があるのです。
 順序でいえば、ロボットが先にきて、次にAIが入る。その結果、さらにロボットの効率化が進むでしょう。ロボット+AIの組み合わせこそが、第4次産業革命の本命なのです。
ロボットが仕事の多様性を作る
──具体的には、RPAのロボットは誰が、どのように作るのでしょうか。
 ここが重要な点ですが、かつての製造業においてFAロボットを作り、使える形に仕立てたのは、すべて“現場の人”です。変わりゆく製造計画やサプライチェーンに柔軟に対応できるのは、あくまでも現場しかいない。
 同じようにRPAのロボットも、日々の業務で生まれたプロセスに対応して、現場で内製することを念頭に置くべきでしょう。ロボットは誰でも設計できます。むしろ、業務を知っている専門的なエンジニアではない方が向いているでしょう。
──業務軸で見て、RPAを適用しやすい領域はどこでしょうか。
 入っていきやすいのは、いわゆるバックオフィスの管理部門です。弊社では、すでに経理、監査、人事、法務といった31業務をRPAでロボット化しています。
 そもそも管理部門は日によって業務量にムラがあり、月末、月初、締め日などに処理が集中しやすいですが、たとえば経理の場合、仕訳まで全て自動処理できるロボットで代替すれば、人手を介したオペレーションは完全になくなります。
 すると、担当者の仕事は成果のチェック、あるいは人とのコミュニケーション、ロボットに何かトラブルがあったときのメンテナンスなどに変わっていきます。
 重要なことは、それによって自由になった時間をどのように活用していくのかです。より働きたい方は働き、家庭とのバランスをとりたい方は家庭にも時間を設ける。それぞれに選択肢が広がっていくわけです。
──「AIによって仕事がなくなる」という論調もしばしば見受けられます。
 本質的に、「仕事」は「作業」ではないんです。「仕事」とは問題を解決することや、人を喜ばせることだと定義すると、これらの価値は人が生きている以上はなくならないでしょう。
 例えば、私は8年前から上海に拠点を持ち、月に数回往復して現地の変化を見ているのですが、いま中国では銀行の支店やATMがどんどん少なくなっています。
 もちろん、お金や銀行にまつわる課題がなくなったわけではなくて、利用者が窓口やATMに行く必要がなくなったのです。決済は電子マネーだし、アプリを見れば口座残高の確認だけでなく、運用の分析やレコメンデーションまでしてくれる。つまり、課題解決の形が劇的に変わったことで、銀行の“仕事の在り方”が変化したということです。
 一方で「作業」が変わるのは当たり前です。掃除ロボットで代替できるなら、部屋の掃除はロボットに任せればいい。機械ができることを人がやっていても生産性は上がりません。
 「AIで仕事がなくなる論」は、おそらく新しい課題の発見と、その解決の方法の設計までAIが肩代わりしてしまうという思考ではないでしょうか。
──RPAでオペレーションがなくなると、仕事にどんな変化が起きるのでしょうか。
 人間のリソースは、絶対になくならない課題や、新しく生まれる課題の解決に向かいます。そして、ホワイトカラーは「マルチスキル(多能工)」が当たり前の時代になるでしょう。
 業務ごとの人手を介したオペレーションがなくなれば、職域の区切りは薄れていきます。学習が簡単になるので、別の部門や機能に関わることが劇的に容易になるからです。
 実際、弊社のバックオフィスはロボット化が進み、管理部長は自由に使える時間が増えたため、最近は営業を始めています。オペレーションがなくなり、生産性が劇的に向上することが全てのスタートで、まったく新しい働き方がはじまるのです。
──財務や法律など、バックオフィスの専門家人材は価値が下がるのでしょうか。
 いえ、より高度な価値を持つようになるはずです。洞察が深くなることもあれば、役割が広がることもある。多能工としてフロント業務への理解が深まることで、専門的観点からのイノベーションが生まれる可能性があります。
 それぞれ得意分野を持った多能工によって、縦割り組織に横串が通り、新しいパフォーマンスが生まれる。経営的にも一石何鳥にもなる話です。
 一方で、ライフステージによって家族との時間を大切にしたい人もいます。早く帰りたい人は帰る。違う仕事をしたい人は働く。選べればいいんです。
 弊社もホールディングス傘下の会社が増え、売り上げは増えていますが、業務量は増えていません。むしろ減っている状況で、両方の選択肢が選ばれています。
 ポイントは、ロボットを使って生産性を高めた社員の給料を下げないということです。パフォーマンスが出ていれば、別に下げる理由はないんです。時間単位で仕事を測るという発想からは脱却するべきでしょう。
知恵とRPAでビジネスを創出する
──RPAが文房具になるならば、いずれはコモディティ化が予想されます。そのとき、競争力の源泉はどう変わっていくでしょうか。
 「ビジネスデザイン」が勝負を決めるようになるでしょう。私自身は、できるだけ早くその時代にいくべきだと考えています。
 オペレーションが究極までなくなった世界では、極論すれば多能工が1人で事業が作れます。はじめからロボットを前提としてビジネスを設計する。一瞬で、思い付いたアイデアを表現するのです。これが第4次産業革命です。
──そんなに簡単にロボットを作れるのでしょうか。
 現時点でも、専門家が見て“よくできている”と思えるレベルのロボットが、ほとんどの企業で1カ月以内に動き出しています。このスピード感だから、新しい業務が発生したら、すぐにロボットを作るという発想になるし、ダメなら使わないという判断も下しやすい。
 現場で設計・変更できないロボットでは、対応するのに時間もコストもかかりすぎる。先程も言ったとおり、ロボットの設計は初期は外部のサポートを受けながら、最終的には内製化することが大切です。
 ロボットをどう運用するかで人の働き方が変わるし、付随して会社の仕組みも変わっていく必要があるからです。
──自分たちで作れなければ、生産性革命は起こせない。
 そういう結論です。ロボットは、これからの時代の「読み、書き、そろばん」になっていきます。パソコン、インターネット、スマホ、そしてロボットがビジネスの基本スキルになるはずです。
 近い将来、全世界で700兆円、日本で70兆円の産業規模がRPA・AIで変革していくと言われています。
 新しい知恵とRPAがあれば、新しい事業を次々と創造できるようになる。この想いに共鳴し、第4次産業革命をともに担える仲間を我々は求めています。
(編集:呉琢磨、構成:加藤学宏、撮影:岡村大輔、デザイン:砂田優花)