世界のトップアスリートも実践。「スタンフォード式回復浴」とは

2018/6/26
発売後3週間でたちまち8万5000部突破した究極の疲労予防&回復理論『スタンフォード式 疲れない体』(サンマーク出版)。著者の山田知生氏は世界中から有望なアスリートが集結しているスタンフォード大学スポーツ医局に最長在籍する、リカバリーの専門家。スポーツ医学・脳科学・栄養学・人体力学……あらゆるリサーチから導き出したビジネスパーソンのための「究極のコンディショニング法」を、本書より紹介する。
スタンフォードのダメージ対処「冷温」マニュアル
ジョギングなどのスポーツを楽しむ人が、ここ数年とても増えましたが、そういう人の疲労には、ちょっとしたケガや痛みを伴うことが珍しくありません。
ケガに対して、私たちアスレチックトレーナーは「アイス・ヒート」メソッドというものを用いています。
簡単にいうと、痛みが発生した箇所を「冷やして、温める」という対症療法で、まずは「アイス」。
「練習中の打撲」「急に腰が動かなくなった」という急性のトラブルの処置はアイシングが基本です。なぜなら、ケガとは炎症を起こしている状態であり、皮膚の外側は大丈夫でも内側は必ず出血しているから。
そこで、すぐに冷やして炎症を抑え、止血する必要があるのです。
そしてアイスの次は「ヒート」。ダメージを負ってからある程度時間が経過し、人体に備わった自然治癒のプロセスが始まったら、温めを開始します。
ケガを治すには「血液」と「血液によって運ばれる栄養」が必要なので、温めることで血流を促進し、回復を早めるのがねらいです。
一時的に、多少痛みが強くなることもありますが、治ろうとする体の力を優先してヒーティングを続けます。
ケガにも有効な「アイス・ヒート」メソッドは、疲れの解消にも効果があります。
なぜなら、歩きすぎ、走りすぎによる「疲れた体」は、ケガよりは軽いけれど炎症を起こした状態だから。
(写真:Nattakorn Maneerat/iStock)
働いている人が日中患部を冷やしたり、温めたりするのは難しいと思うので、「今日は足を酷使した」という日は、夜に冷やして温める「夜間アイス・ヒート」メソッドを行い、日中負ったダメージを効率よく解消していきましょう。
体の調節機能に即した「48時間回復法」
「アイス・ヒート」メソッドの秘訣は、「生理学的な人間の回復プロセスに準じたタイムマネジメント」です。
きちんと時間を計りながら、この回復法を実践しましょう。時間を守ってこそ、人の体の仕組みに基づいた「ベストな科学的アプローチ」となります。
注意すべき時間は、次の2つです。
① ケガをした直後〜24時間
大ケガでない限り、人間の体の中では、ケガをしてから24時間後くらいまでが痛みのピークです。この間は、コールドスプレーや冷湿布などで、しっかりと「冷やす」ことに注力します。
痛みのピークとなるケガをしてから24時間後までは、「アイスの時間」と覚えておきましょう。
② 24時間経過後〜48時間
ケガをしてから24時間後を境に、体は自然治癒のプロセスに入ります。
人間の体はよくできていて、血液によって、回復に必要な栄養やホルモンを運んだり、傷ついた部分の老廃物をせっせと運び出したりします。36〜48時間が経過すると、痛みはかなりやわらいできます。
そこで痛みのピークを超えた24時間後を目安に、冷やすのをやめて温湿布や入浴、サポーターなどで「温め」にモードを切り替えましょう。
ケガをしてから24時間が経過したら、「ヒートの時間」の始まりです。
「アイス」から「ヒート」へ切り替える際、正確に時間を計ることを心がけてください。「直後は冷やして、24時間たったら温めてください」と言うと、なぜか人は「眠って起きた翌日から温めるんだな」と解釈してしまうようです。
しかし、ケガをした翌朝というのは、一番腫れていたり、ケガをした当日より可動域が狭まっていたり、何より一番痛みが強かったりします。
(写真:lovelyday12/iStock)
それは、眠って起きた「次の日」というだけで、実際にはケガをして半日程度しか経過していないことが多いから。それなのに「(日付上)1日たったから温めよう」と判断すると、回復が遅れてしまいます。
大学スポーツの試合は観客もかなり入るので、基本的に試合が行われるのは夜。20時半に負ったケガは、翌朝はまだ相当に痛むので、冷やしつづけます。
冷やすことのメリットには、炎症を抑えるほかに「痛みを麻痺させる」というものもあります。ひどいケガではない限り、ある程度動かしたほうが、回復が早くなるからです。
伸び縮みをくり返すのが筋肉の自然なありかたなので、動かさないとどうしても筋肉は固ま ってしまいます。
そこで、アイシングで麻痺させて、あえて少し歩いてみると回復が多少早まる、というわけです。
「冷凍グリンピース」で即回復
炎症や痛みを「アイス」で抑えて、回復を「ヒート」で促す。
このメソッドを「歩き疲れ」に応用するなら、次の要領になります。
「今日は一日中歩き回ってクタクタだ」という日は、帰宅後すぐに足をアイシング。15分ほど「アイスの時間」をとります。
15分後、氷嚢などを外しても皮膚はまだ冷えています。触ってみていつもの温かさに戻ったら、40°C前後で約10分入浴しましょう。
ケガと違って24時間待つ必要はありません。入浴が「ヒートの時間」になります。
これだけでかなり足の疲れが解消され、翌朝が楽になるはずです。
とはいえ、アイシング用の氷嚢を常備している人はあまりいないでしょう。
購入してもいいのですが、そんなにしょっちゅう使うものではありませんし、保管する場所も必要です。
そこで、氷嚢の代わりに準備しておくと便利なのが、「袋に入った冷凍のグリンピース」。
冷凍庫に常備しておき、袋のまま患部に当てて、ラップで固定しましょう。ラップは包帯代わりになりますし、慣れない人でもしっかりと固定できて便利です。
足の疲労だけでなく、捻挫や打撲傷にも使えます。
スタンフォード式「回復浴」とは?
アイス・ヒートメソッドに関連して、最近話題になっているのが、「冷水」と「温水」に交互に浸かる「交互浴」
じつはスタンフォードでは、早くからこの交互浴を回復メニューに取り入れていて、その実態を少し紹介したいと思います。
スタンフォードのトレーニングルームには、選手たちの治療のためのバスタブが2つあり、一つは「冷水」で、一つは「温水」。この2つを使って「アイス」「ヒート」の交互浴を次の要領で行い、体のダメージを解消していきます。
練習直後で疲れている選手や、調子が悪かったりする選手は、まずクールバスに入ってほてった体をクールダウンします。
運動直後は体が熱く、また開いている毛穴を閉じるためにも水温は10°Cくらいに設定しています(ホットバスの設定は約36°C)。
2、3分間クールバスに入ってから、「ホット60秒、クール60秒」の2分間1セットの交互浴を4、5回くり返し、最後にクールバスに2、3分ほど入って終了します。
(写真:BraunS/iStock)
交互浴は「血流」と「自律神経」に効果的
交互浴の効果は、主に2つあります。
第一に、血管の収縮と拡張がくり返されることで血流がよくなること。
血流がよくなれば、疲れたり傷ついたりしている筋肉により多くの栄養が運ばれて早期回復につながります。また、細胞に溜まった疲労物質も、血液によって取り除かれます。
第二に、自律神経のバランスが整うこと。
温めたり冷やしたりすると、自律神経が効果的に刺激されることが判明しています。そうやって自律神経を整えると、全身にリラックス反応が発生し、ストレスによる「脳(中枢神経)の疲れ」も軽減します。
実際に、交互浴を行った選手たちはみな「体が楽になる」と言い、交互浴にはまり出す選手もいるほどです。
交互浴に関しては研究が行われている最中で、現時点での知見を統合すると、「単に休むよりは、温冷浴には疲労軽減の効果がある」「冷水浴、温冷浴ともに効果あり。ただし、体感的な『疲労回復感』は得られるが、筋肉痛には直接的な効果はなさそうだ」「温浴と冷浴をくり返した結果、12分までなら効果あり」となっています。
実践!「スタンフォード式スーパー回復浴」
スタンフォードで行っている回復「交互浴」は、日常の疲れにも応用できます。
バスタブを2つ用意するのは難しいと思いますので、「シャワー」を利用して行いましょう。
(写真:deepblue4you/iStock)
まず、バスタブに、37〜38°Cのお湯を溜めておきます。
全身浴、半身浴、どちらでも効果は得られるようですが、エビデンスを見る限り、「心臓への負担」を考慮して「半身浴」をすすめる意見がやや多いようです。
そして、次の手順で、「アイス」から回復アプローチを始めましょう。
交互浴を実践する前に、350ミリリットルのペットボトルに水を入れ、その半量(コップ1杯分くらい)の水を飲みましょう。
交互浴は、意外と水分を消費します。脱水症状を防ぐため、あらかじめ水を摂取してください。
水を飲んだら、いよいよお風呂です。
まず、冷水シャワーを1分ほど浴びてから、「バスタブに30秒、冷水シャワー30秒」の1分間1セットの交互浴を約10回くり返し、最後に冷水シャワーを1分ほど浴びて終了します。
終了後、ペットボトルに残った水を飲み干して水分補給したら完了です。
「12分までなら効果あり」とされていたように、長風呂をすると、疲れを解消するための入浴がかえって逆効果となるので注意してください。
長すぎると、水分が多量に失われてしまうためです。
また、熱いお湯に長時間入ると、夜間でも交感神経が優位なままの状態が続きます。
これだと、「疲れたからお風呂に入って寝よう」と思っても、余計に眠れなくなってしまうのでご注意を。
※本書は『スタンフォード式 疲れない体』(サンマーク出版)より一部抜粋し、再構成をしております。
(バナーデザイン:九喜洋介)