「おっさん社会」が日本を滅ぼす

2018/6/25
権力を握る者、意思決定層が “おっさん”により独占されており、おっさんのおっさんによるおっさんのための社会が作られている──。
昨今、「日本型タテ社会」の限界を示唆する問題や事件が続々と表面化している。

“おっさん”は年や性別と関係ない

もっともNewsPicksがいう“おっさん”とは、中年以上の男性を指すのではない。
古い価値観に凝り固まって新しい価値観に適応できない、 過去の成功体験に執着し既得権益をふりかざす、序列意識が強くて自己保身的、よそ者や序列が下の人間に対して非礼など、一言で言えば「新しいことを学ばない(アップデートしていない)」存在を“おっさん”と定義する。
したがって、これら条件を満たす人は、年齢も性別も関係なく、“おっさん”だ。
たとえば、あなたの周りにもこんな人がいないだろうか? 
若手がプロデュースして成功したキャンペーンの話を「ネットでは話題になったけれど、商品の購入にイマイチつながってないよ」などとやんわりと否定して、結果としてその人の評判を下げる。
(写真:GCShutter/iStock)
あるいは、日頃から「責任は俺が取る」などといいながら、不祥事が発覚したり部下が仕事に失敗したりすると頬かむりを決め込む。
「プレゼンの前は、二徹くらい当たり前だった」などと過去の苦労話や武勇伝を喧伝し、部下にもその手法を押し付ける……。こんな“おっさん”の行動に苦しめられた人は多くいるはずだ。

タテ型組織という構造問題

ただし、いわゆる“おっさん”も元々おっさんだったわけではない。
終身雇用、年功序列、新卒採用という「日本型雇用」の中で、新しいことに挑戦するより、上司に忖度するほうが評価されるなどといった“タテ社会の掟”に過剰適応したあまり、気づけば自分が既得権益を手放さない“おっさん”に仕上がっていたというケースが大半ではなかろうか。
つまり、“おっさん”が意思決定者をほぼ独占し、それゆえおっさんに最適化したルールが作られる日本の問題は、構造問題なのではないか。
では、どうすれば日本の組織は“脱・おっさん”できるのか──。
本特集では、今、修正を余儀なくされている日本型タテ社会の問題について、そして個人が“おっさん化”しない方法などについて考察してゆく。
具体的なラインナップは以下の通りだ。
特集1回目は、レオス・キャピタルワークス社長の藤野英人氏、リンクアンドモチベーション取締役の麻野耕司氏など一線の論客たちを取材することで浮かび上がってきた、“おっさん”たちを育んだ日本型組織の構造をインフォグラフィックスで解説。
それとともに、“おっさん社会”がもたらす弊害について、マクロとミクロの両面で分析する。また、“おっさん社会”をどう打破するか?という問題にも斬り込む。
2回目は、6月24日よりRIZAP GROUPのCOOに就任し、瀬戸健社長を「一流の経営者にする」「世界の瀬戸にする」と意気込む、元カルビー会長の松本晃氏のインタビューを掲載する。70歳の松本氏が40歳の瀬戸社長をサポートする側に回った理由とは? 
3回目は、ブロガーで作家のはあちゅう氏のインタビューを配信する。2017年末、電通勤務時代に受けたセクハラ被害を告発したが、あれから半年たって、今思うこととは? また、自分のなかにも「おじさんはいる」と語るはあちゅう氏が定義する“おっさん”とは。
4回目は、「全日本おばちゃん党」の代表代行で、大阪国際大の谷口真由美・准教授が語る「おっさんがすべて決める国」の本当の害悪について、掘り下げる。
5回目では、“おっさん”を生み出すタテ社会の中のタテ社会、「体育会」という組織について、400mハードル日本記録保持者という「体育会」出身でスポーツコメンテーターの為末大氏と長きに渡りスポーツの現場を取材し続ける作家の小松成美氏が激論を交わす。
6回目は、ベストセラー『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の著者でコーン・フェリー・ヘイグループのシニア・パートナーである山口周氏が「なぜ今、おっさんの劣化が進んでいるのか」について寄稿。
そして特集の最後には経団連の会長で、日立製作所取締役会長の中西宏明氏のインタビューを掲載。
新卒一括採用や、年功序列に懐疑的な発言をする中西氏は、日本型雇用システムをどのように変えようとしているのか。そのシナリオについて聞く。
(デザイン:九喜洋介)