リクルート競争率100倍のアルバイト

2018/8/18

早く社会に出たかった

僕はごく普通の大学生でした。
「大学時代に何をしたか」と聞かれたら、胸を張って答えられることは何もない。しいて言えばアルバイトとスキー、海外旅行、自動車免許、学園祭イベントくらいでしょうか。全身全霊をかけて打ち込む「何か」は見つかりませんでした。
もともと現役合格が狙えるから受験しただけ。経済学部には在籍していたけれど、経済を学びたいという志があったわけではないのです。あまりに暇な大学生活だったので、大学3年までに卒業に必要な単位を取り終えてしまいました。
そこで3年の秋に就職活動をして、大学4年の4月から1年繰り上げで入社できる会社を本気で探しました。早く社会に出て自分の力を試してみたかった。何でもいいから戦える対象を欲していたのかもしれません。
「マルクス経済学」にも「近代経済学」にも、いまいちリアリティを感じられなかった。経済学部全体で360人中30人程度しか選択しない経営学科に進み、なかでも最も企業経営に近い分野だと思われた「組織論」のゼミに入りました。それしか興味が湧かなかったのです。
組織論のゼミである先輩と知り合いました。その人は、学生ながらスーツに身を包み、大企業の経営コンサルティングをしていた。とにかくめちゃめちゃかっこよくて、憧れた。僕はまだまだ子供でしたからね。
彼の影響もあって、僕は外資系のコンサルティング会社に就職しようと考えました。
僕は、新卒採用の門戸を開いたばかりのマッキンゼーやボストンコンサルティンググループに電話をかけ、会社訪問をしました。マッキンゼーは大前研一さんが活躍し始め、『企業参謀』が話題になっていました。
とはいえ、今のように有名ではなく、まだまだ小さな会社でした。僕は「そういう(会社に入る)のがかっこいい」と思っていたのです。
ただ、やはり繰り上げ入社は認められず、いくつか回った会社のすべてから「応募するなら来年来なさい」と言われました。
ぽっかり時間ができたので、僕はバイトをしてお金を貯め、海外に行こうと考えました。語学留学でもして、どこに入社しても英語で困らないようにしようと思ったのです。

リクルートとの出会い

そんなとき、1枚のアルバイト募集のハガキが自宅に届きました。それが、僕とリクルートとの出会いです。1977年2月のことでした。