「経済情報で、世界をかえる」をミッションに2008年に創業したユーザベース。投資銀行やコンサルティングファームなどが、一つのアウトプットを出すために莫大な時間をかけていた情報収集を一瞬で実現させる、SPEEDAを誕生させた。

現在、契約企業は日本3大メガバンクや5大商社などのプロフェッショナルファームを中心に、900社以上におよんでいる。BtoB領域の事業会社にも広がりを見せており、その影響力は大きい。

サービスの開始から10年が経った今、SPEEDAは次の10年に向けて大きくアップデートしようとしている。そこで求めているのが、中心的存在となって変革を牽引する、経営人材候補だ。

なぜ事業をアップデートさせようとしているのか。その背景やユーザベースで働く魅力について、グループ共同代表兼SPEEDA日本社長の稲垣裕介氏と、SPEEDA事業で実績を残したことでNewsPicks USAの立ち上げメンバーに抜擢された大山晋輔氏に話を聞いた。

目指すは、全世界で使われるSPEEDA

稲垣 SPEEDAから始まったユーザベースは、「経済」「テクノロジー」「プラットフォーム」「グローバル」の4つのキーワードを軸に、NewsPicksやentrepedia(アントレペディア)、FORCAS(フォーカス)、UB Venturesなど、次々と新しい事業を展開し、分社化してきました。
特に、初めて創業メンバー以外から事業化された新規事業「BtoBマーケティングプラットフォームのFORCAS」と、2016年にジョインしたJapan Venture Research社が提供する「日本最大級のスタートアップデータベースentrepedia」は、ある意味自分たちをディスラプトしたサービス。
メンバーがSPEEDA事業を推進する中で、「もっとこの部分に変革をもたらしたい」というリアルな実体験を得て、課題解決のために自らをディスラプトする動きが出たのは素晴らしいことです。
一方、それはSPEEDA自体をもっと進化させなければいけないという危機感につながりました。
テクノロジーの進化に合わせて、いかにSPEEDAを次のレベルに進化させていくか。意思決定が多様化している世の中で、いかに新しく斬新な提供価値を生み出すか。
現在、アジアにおいてSPEEDAは「プライベートカンパニーのデータ保有はNO.1」と言われるほどデータを拡充し、成長させてきました。次に目指さないといけないのは、全世界で「情報収集をするならSPEEDA」といわれるサービスに進化させること。
あらゆる情報が有機的につながり、世界中の産業構造が分かる。そんな次世代のSPEEDAをつくりたいと考えています。

熱のある人が意思決定する文化

ユーザベースが2008年に創業し、事業を増やしながら今の形になったのは、「熱」を持ったメンバーが集まり、諦めることなく時間をかけて作ってきたからです。僕らはスーパーマンではないけれど、誰よりも「熱」があったんですね。
だから、同じように情熱を持って「こういう事業をやりたい」と言う人には、その事業で最大限パフォーマンスを発揮できる環境を作るか、経営を任せてきました。
ユーザベースには、社歴やポジションに関係なく、誰でも手を挙げたら「意思決定」できるチャンスを得られる文化が、当たり前のように根付いています。新卒で海外事業にチャレンジしているメンバーもいますし、僕の秘書は20歳のインターン生が担当。
メンバーそれぞれがやりたいことに手を挙げ、事業を動かすための連続的な意思決定をしてきた結果、約300人の組織から、役員に昇格したメンバーや起業したメンバーなど、次世代を担うリーダーを30名以上輩出してきました。
加えて、ユーザベースは組織のトップに経営層があるという考えはありません。トップにあるのは、ミッションとバリュー。それを一番体現できる存在として経営層を位置付けているため、僕らよりも体現できる、強い思いを持って事業を動かせる人がいたら、社長も変わるべきだと考えています。
もちろん、僕が務めているSPEEDA事業の社長も、熱のある適任者がいたら、いつでもバトンタッチしていいと思っています。
それは、エンジニアでも編集者でもアナリストでも構いません。BtoCの知見がある人や、柔軟なマーケティング施策を実行できる人、クリエイティブな企画・思考ができる人など、多様な人材が集まることで、経営のダイバーシティを強くしたいと考えています。

経営人材への挑戦者を求む

ユーザベースの経営人材に必要なのは、外に出て人と会い、道を切り拓いていけること。マーケットの肌感覚を得るために、机上の空論ではなく泥臭いことは当然やるべきだと考え、“リアルな事業”を一緒に作っていけることです。
そのためにも、参画いただく方には、まずはSPEEDA事業のセールスチームでマーケットの肌感覚を得ていただき、いかにしてSPEEDAをアップデートし、新たな価値を創出できるかを考えて欲しい。
ここには、今までの10年で築いてきた土壌とリソースがあります。それらをフル活用して、国内でも海外でも市場を広げ、新たなブームを作ってください。
次の10年も、最高の布陣で事業を動かして、社会の変化やお客様のニーズに合わせて変化し続ける組織であるために。次世代SPEEDA、もしくはユーザベースグループの次の10年の旗振り役に挑戦したい方をお待ちしています。

リアルな声を受けて事業を推進したい

(写真:Satoshi Tsuchiyama)
大山 僕は2014年にユーザベースに入社し、SPEEDAの事業開発責任者として、プロダクト開発を担当しました。開発に際してユーザーへのヒアリングを行うのですが、ユーザー自身は困っている事象の根本的要因に気づけないことが多くあります。
それを見つけ出して、どんな機能やUIなら解決できるかを考え、形にしていくことは、非常にクリエイティブで得難い経験でした。
一方で、SPEEDAはBtoBサービスなので、新しくリリースする機能やUI/UXの改善が、本当にユーザーの役に立っているのかが分かりにくい。さらに、結果としてユーザベースの業績につながっているのかどうかも、直接見えないことに課題を感じ始めました。
たとえば、NewsPicksのようなBtoCサービスは、日常的に使ってもらうことが重要なので、滞在時間やDAU、MAUを指標にできます。しかしSPEEDAには、逆の発想が必要になる。
というのも、SPEEDAは圧倒的な仕事効率化を実現するプロダクトなので、機能やコンテンツを追加しても欲しい情報にたどりつけずにSPEEDAを使う時間が増えていたら本末転倒ですし、翌日からユーザーの行動が爆発的に変わることもないからです。
自分たちのプロダクトが本当にユーザーの役に立っているかを実感し、事業を推進していくためにも、ユーザーの声が直接届く現場の最前線に出たい。売上や利益という直接的な指標にも責任を持てる状態になりたいと思うようになりました。
それからほどなくして、僕はセールスチームに異動しました。ユーザベースには、自身の責任領域の役割を果たしながら、同時に前向きな挑戦をする人を応援してくれる文化があるからこそ、実現した異動だと実感しましたね。
(写真:Kiyoaki Sasahara)

現場で知ったニーズをプロダクトに反映

異動後は、営業活動に加えてチームの組織づくりや、プロダクト開発と連携した新機能の開発など、あらゆることを任せてもらいました。
営業の現場に出ると、プロダクト開発時代にリリースした機能が全く使われていないことに気付かされることもあり、本質的なニーズに応えるべく、プロダクト開発と一緒に新機能のリリースを繰り返しました。
たとえば、「ターゲットリスト」という機能を追加したときのことです。もともとSPEEDAには「売上高1000億円以上」等の特定条件で企業リストを作成する機能はありましたが、営業・マーケティング部門のユーザーには使われていませんでした。
というのも、もともとあった機能では、営業・マーケティング部門がこれまで数日をかけて作成していたような「営業リスト」を作れなかったんですね。
これをプロダクトチームに共有し、「海外進出している企業」等のシナリオを選択するだけで、海外に子会社・関係会社を持つ企業のリスト作成ができる「ターゲットリスト」を開発。
リリース後は、「これまで大変な思いをして作っていたリスト作成が数分で完成し、より営業活動に時間を割けるようになった」という嬉しい声を、多くのユーザーからいただきました。
これは、プロダクト開発で「課題抽出から解決方法を具体的に形にする」ことを経験し、それを踏まえてセールスチームで「そのプロダクトをユーザーに正しく伝える・届ける」経験したからこそ、実現できたのだと思っています。

SPEEDAでの経験を経て、アメリカへ

SPEEDAのセールスチームを牽引して約1年が経ったころ、NewsPicks USAを立ち上げることになり、僕は立ち上げメンバーに抜擢されました。
代表の梅田から「一緒にニューヨークで米国版NewsPicksを立ち上げないか」と話をもらったとき、アメリカで新規事業を立ち上げられること、かつインターナショナルでダイバーシティのあるチームをマネジメントできるチャンスを得られることに、「ぜひやりたい」と即答。
約1年の準備期間を経て、2017年の7月に渡米しました。
以来、アメリカでまったく知られていなかったNewsPicksを認知してもらうため、プロダクトのローカライズやユーザー獲得のためのマーケティング、プロピッカーの獲得などにコミットし、事業の立ち上げに邁進しています。
とにかくたくさんの人に会って、NewsPicksのビジョンや目指す世界観を話し、共感してくれる人を見つける中で気づいたのは、日本でNewsPicksを立ち上げたときと、反応がまったく同じだということ。
そもそも、ニュースにコメントをするようなソーシャルメディアはなかったので、無いことで困ってもいないし欲しいとも思っていない。さらに、「1500円も払わないよ」「Twitterでいいよ」と、日本で言われていたのと同じことをアメリカでも言われています。
だけど、アメリカでも他のサブスクリプションサービスに1500円払うような人はごまんといますし、すでにコメントが面白くてハマってくれているユーザーもいる。
「ニュースについた多様な視点のコメントからインスピレーションをもらえる」「欲しい情報が見つかりやすくなる」など、NewsPicksの価値をどのように提示していくかが、これからの勝負です。
目指すのは、「ニュースを読むならNewsPicksだよね」と言われるサービスにすること。僕と梅田を含めて、現地採用をした15人のメンバーと一緒に、真っ当なチャレンジを続けることで、必ず成功させたいと思っています。
僕がNewsPicks USAの立ち上げに抜擢されたのは、SPEEDAのセールスチームで実績を残してきたからです。そして今、ニューヨークで愚直に泥臭く取り組めているのも、セールスチームでの経験があったからこそ。
ぜひ今回応募される方も、セールスチームで実績を残し、大きな挑戦への切符を手に入れて欲しいと思っています。
(取材・文:田村朋美、写真:岡村大輔)