(ブルームバーグ): 東京放送(TBS)ホールディングスが28日に開催する定時株主総会に関連し、議決権行使助言会社の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、英アクティビスト(物言う株主)のアセット・バリュー・インベスターズが提案している政策保有株を株主に還元するよう求める議案に賛成するべきだと助言した。

アセット・バリューはTBSに対し、同社が過大な政策保有株式を抱えることの説明義務を果たしていないなどとして、現在4.68%の議決権を保有する東京エレクトロン株式の40%を株主に還元するよう求める株主提案を行っている。これは東エレク株の13日終値で計算すると約625億円の価値。TBS側は議案に従った場合は180億円の課税を受けるため、その負担が同社と株主の共同の利益を損なうと主張。株式は同社にとって「最適なタイミングで随時活用したい」と議案に反対を表明している。

アセット・バリューの提案について、ISSはTBSの保有株は本業と関連のないものがほとんどだとした上で「TBSに税金などの追加負担を生じさせるかもしれないが、これまで犠牲を強いられてきた株主に報いる意味で政策保有株を再配分した方がよいかもしれない」と述べ、賛成を推奨した。一方、別の助言会社である米グラスルイスは、「提案者はTBSの企業統治構造や資本の活用という点で多くの正当な問題提起をしている」と認めつつ、その解決策としての今回の提案は「財務に重大な影響を及ぼす可能性がある」とし、反対を推奨している。

ブルームバーグのデータによると、TBSは直近で自らの時価総額とほぼ同じ約4300億円の株式を保有。うち東エレク株の資産価値は時価総額ベースで最大となっている。TBSの18年3月期の連結純利益は172億円だった一方、株式などの配当金収入は81億円に上った。アセット・バリューはTBSの実態は投資ファンドだとし、特に半導体製造装置メーカーの東エレクの間には何の業務上のシナジーもなく大株主でいる必要はないと批判している。

武田氏選任に反対

また、両助言会社は武田信二社長(28日付で退任、会長に就任予定)の取締役選任に反対を推奨した。グラスルイスは過度な持ち合い株、買収防衛策の延長、取締役の独立性が不十分などの事実は「経営陣が株主の利益を犠牲にし、自らの利益を守ろうとしている」ことを示唆していると理由を述べている。ISSは低い株主資本利益率(ROE)はトップの経営責任だとした。TBSの3月時点のROEは3.16%と、TOPIX構成銘柄平均(8.98%)から見劣りする。

アセット・バリューは毎日新聞社、電通、MBSメディアホールディングスと持ち合い先企業のトップ経験者3人を独立した社外取締役候補とすることを問題視しているが、グラスルイスは取締役候補18人のうち、武田社長とこの3候補を含む5人に反対票を推奨している。ISSは武田社長と社長に内定している佐々木卓専務の2人の選任反対を助言している。

TBSの広報担当に書面でコメントを求めたが、回答はまだ届いていない。

アセット・バリュー代理人の弁護士、スティーブン・ギブンス氏は5月末、会見で提案の可決見通しを問われ、ISSとグラスルイスの助言について「海外投資家への影響が大きい」とし、その内容が鍵となるとの見方を示していた。ブルームバーグのデータによると、アセット・バリューのTBS株式保有比率は2.09%。

(第4、5、6、7段落を加筆しました.)

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