[東京 14日 ロイター] - 日本政府は、米朝首脳会談の開催と北朝鮮の非核化へのコミットメントを踏まえ、日朝首脳会談開催を模索し始めた。複数の関係筋が明らかにした。同時に北朝鮮に対する経済支援の可能性を探る動きも見せ始めたが、現時点で核・ミサイル・拉致問題の進展がどうなるのか不透明で手探りの状況を脱していない。

関係筋によると、外務省関係者は14日からモンゴル・ウランバートルで開かれる国際会議に合わせ、北朝鮮側当局者との接触を図る予定だ。もっとも現時点では、北朝鮮側と接触できる確約が取れているわけではないという。

また、早期の日朝首脳会談の開催を目指すべきとの意見も、政府内で出ている。9月中旬にロシア・ウラジオストクで開かれる「東方経済フォーラム」への参加の合間に、日朝首脳が会談することも選択肢の一つとして浮上しているが、9月は自民党総裁選も予定され、2つの日程をどのように調整するのかなどは未定という。

もっとも政府・与党関係者の間では「拙速」な首脳会談の実現に慎重論もある。北朝鮮の非核化に向けたプロセスは具体案がみえてない上、拉致被害者の帰還など明確な成果が期待できるのを待つべきとの意見もある。

政府内でハードルが低いとみられいているのが、ミサイル除去への支援。特に中距離弾道ミサイルについては、仮想敵国は日本のみとされており「除去を日本が支援するのに理解が得られやすい」(政府関係者)ためだ。

トランプ大統領は12日の米朝会談後の記者会見で、非核化の必要経費などさまざまな費用を日韓が支払うと受け取れる表現で発言した。

政府・与党内では、非核化は国際社会と連携して実現するとの立場から、非核化コストの負担に前向きな声がある一方、現時点で検証可能な非核化の実現には不透明要素が多く、今後の米朝交渉の行方を見守るべきだとの慎重論もある。

一方、最もハードルが高いとみられているのが経済支援。これまで安倍晋三政権は、核・ミサイル・拉致問題の解決が、経済支援を開始する必要条件としてきた。

政府・与党内の一部には、米朝間で非核化に向けた工程表が作成されれば、中期的な経済支援策を議論できるとの意見も浮上してきた。

ただ、核とミサイルだけでなく、日本政府にとって最重要である拉致問題で北朝鮮がどのような対応を示すのか、現時点では確定的なことはまったく分からないという。

そうした状況の下で、具体的な経済支援の中身を議論することは「世論の動向も意識すると難しい」(与党関係者)との声が多く、経済支援の検討は相当先になるとの観測も出ている。

政府・与党内の一部には、経済制裁が継続されている間は「人道支援」の名目で支援を行うという案もある。

また、経済支援の規模はまったく未定だが、2002年に小泉純一郎元首相が訪朝した際に「国交回復が実現すれば、1兆円規模の支援が議論された経緯がある」(関係筋)とされ、今後の経済支援も「経済・物価情勢を勘案すると、3─4兆円規模との試算もある」(関係筋)という。別の関係筋は「5兆円との観測もある」としている。

経済官庁関係者によると、小泉政権時代に戦前の日本支配下で設置したダムや鉄道の近代化などの経済支援パッケージの検討が進められたという。

ただ、拉致被害者の死亡が確認され国交回復が棚上げになったため、具体的な支援に至らなかった経緯があった。

(竹本能文 編集:田巻一彦)