深いコンサルティングを起点に、新規事業開発へ

2018/6/14
「いまだない価値を創り出し、人が本来の可能性を実現し合う世界をつくる」をミッションに掲げ、国内のトップ企業を中心に独自のコンサルティングを多数手がけてきたエッグフォワード。顧客に深く入り込み、事業戦略→組織戦略→人事戦略までトータルでの長期支援を強みとする同社が、新たに“プロダクト開発”という新領域に着手した。その意図を、代表取締役社長の徳谷智史氏に聞いた。
世界を変えるにはプロダクトが要る
──創業から6年、事業戦略立案から組織戦略や人財戦略まで一気通貫に行い「人と組織の成長促進」をオーダーメイド的に支援してきたエッグフォワードが、プロダクト開発というレディメイド的なアプローチに舵を切ったのは、なぜでしょうか?
徳谷 まず大前提として、エッグフォワードの「いまだない価値を創り出し、人が本来の可能性を実現し合う世界をつくる」というミッションは一貫しており、今も変わっていません。
 私たちはミッション達成のため、事業、組織、そして人財を連動させた深いコンサルティングを続けてきたわけですが、新たに挑戦するプロダクト開発も同様に、あくまでもミッションを達成するための手段のひとつとして捉えています。
 コンサルティングの基本は個々の企業に寄り添うものであり、オーダーメイドで対応したほうが成果を上げられるのは事実です。
 ただ、特定の顧客に密着するコンサルワークだけでは、世の中に存在する数限りない企業に対して、十分な支援ができない点にジレンマを感じていました。
 世の中全体を前進、あるいは飛躍させるためには、スケールにレバレッジが利き、大小さまざまな企業のニーズに応えられるプロダクト開発も手がけるべきだと判断したのです。
──コンサル会社がプロダクト開発を手がけることに、どんな競争優位性があるのでしょうか。
 これまでエッグフォワードでは、業界大手企業を中心に延べ400社以上に対して深いコンサルティングを行ってきました。そこでわかったのは、多くの企業に「共通の課題」があるということ。
 たとえば「採用した社員が十分に活躍していない」という課題は多くの企業に共通した悩みです。
 私たちは、企業のこうした課題を表面的に捉えるのではなく、潜在的、根本的な課題として捉え直すことができています。これをプロダクト開発に生かせるのは、私たちならではの強みだと考えています。
 すでにプロダクト開発を進めるための組織づくりも進めており、コンサルティング会社としては珍しいと思いますが、2018年になって、HR領域(人財開発)にTechを掛け合わせた事業開発を多く手がけている株式会社IDEAMのM&Aを進めました。
 IDEAMの代表である渡部はコンサルティングの経験に加え、ITにも強くプロダクト開発のマネジメントもできるため、今後のエッグフォワードの事業にとってキー人材になると考えています。
組織の適材適所を“科学的に”実現
──2017年から新規事業・プロダクト開発に着手されたとのことですが、どんなプロジェクトが進んでいるのでしょうか。
 お答えできる範囲では、現在、3つのプロダクト開発が進んでいます。ひとつは、新入社員の立ち上がり支援を行うものです。さきほど、採用した社員が入社後に十分に活躍できないという課題を多くの企業が抱えていると話しましたが、この点を解決したいと考えました。
 業務において活躍するには当然スキルや本人の意欲とのマッチが必要です。しかし、個人のスキルや意欲を正しく測定することは難しいため、どうしても人事部門などによる感覚的な部署配置になってしまい、ミスマッチが起こりがちです。
 ミスマッチが起きると社員が力を発揮できないだけでなく、離職率も高まる。企業にとっては採用や育成コストの損失ですし、環境があわず退職を繰り返せば、エッグフォワードが大切にする「個々人の可能性の最大化」もなし得ない。これは非常にもったいないですが、本質的には、誰もここには手をつけてこなかった。
 現在開発中のプロダクトは、個々のありたい姿の具体化・目標設定から、コンディションやメンタル面のモニタリング、さらには伸び悩む人財に対する打ち手策定までをトータルで支援するパッケージです。定量的なモニタリングを経ることで、社員個々人がより活躍できる環境を創り出せると考えています。
 2つ目として、同じく適材配置や人事評価に生かすために開発を進めているのが、人の“つながり”を可視化するというコンセプトのプロダクトです。現在プロトタイプを作り、2018年夏にβ版のローンチを目指して、社会ネットワーク分析の第一人者である大学教授と共同で実証実験を進めています。
 こちらは、社内外の人間関係を可視化し、どういった人と、どんな文脈でつながっているかを情報として活用することを目指しています。人間同士の関係性が、質も含めて可視化されることで、新規事業創造の起点としての活用や、これまで見えなかった組織コンディションの実態把握につながっていきます。
 3つ目のプロダクトとして進めているのが、メディア連動型の採用支援ツール・サービスです。採用戦略や方針を検討するところから、メディア制作や発信、その後の効果測定まで、必要なプロセスを一括して支援します。
 私は、以前から「採用を科学したい」という想いを強く持っていました。採用は、企業側からすれば、人事の入り口であり、事業や組織体制の根幹でもあります。同時に個々人からすれば、人生において極めて重要な意思決定の機会です。
 スキルやマインド、人間関係など定量化の難しい情報は、組織を活性化する上で重要であるものの、感覚的にしか扱われていなかった。また、就職・転職時に、最適な機会選択を支援するサービスはまだ十分ではなく、市場全体の「負」も大きいと思っています。
 新たなプロダクトによって、こうした情報を体系化し、科学的にアプローチできれば、人の可能性を最大化することに寄与すると考えています。あえて大きく言えば、世の中の人の意思決定や機会選択のあり方が変わる、ということだと思います。
 特定の課題解決サービスだけでなく、プロダクトと人的なサービス(コンサルや研修)の連携も、われわれの強みになっていくはずです。
 従来のHR市場では、転職希望者は「何が向いているか、何がやりたいかわからない」という悩みを抱え、一方で転職エージェントは採用数がKPIになりがちなため、残念ながら、「とにかく押し込む」という転職によるミスマッチも実態としては生まれていました。
 例えば、転職希望者の志向性と、企業側の業務特性を可視化することで、両者のマッチングをベースにしながら、最適な意思決定プラットフォームへの展望も描いています。
──コンサルティング会社がプロダクト開発を手がけるケースは珍しいと思いますが、複数のビジネスを両立させる難しさはないのでしょうか?
 先ほどもお話ししましたが、私は、これまで深くコンサルティングを続けてきたエッグフォワードだからこそ優位性があると考えており、私たちがやる意義を見いだしています。
 というのも、私たちが支援している企業は国内有数の大企業、および先進的なベンチャー企業が多いため、課題にも先進性があるからです。いずれ多くの企業が直面するであろう、いわば“スジの良い”課題をすでに把握しているということなんです。
 これまでのコンサルティングの経験から、こうした課題を解決に導く道筋も見えているので、的を射たプロダクトに転用することができると考えています。
 また、すでにクライアントとの信頼関係ができているため、プロダクトが完全に固まりきる前から、プロトタイプで実証実験的に支援させていただくことも多いです。こうした開発環境も、プロダクト開発を主とする企業にはないメリットではないでしょうか。
 クライアントに深く関わって本質的課題を捉え、コンサルティングによるソリューションを考える。そして、拡大可能な要素をプロダクト化に向け展開する。
 この3つのステップを繰り返しながら、クライアントとともに共創しながらPDCAを高速で回すことで、エッグフォワードだからこそできる、世の中の多くの企業や人の課題を解決するプロダクトを生み出せると信じています。
“人の可能性”に着目した課題解決
──プロダクト開発にシフトするに当たり、エッグフォワードが必要とする人材も変化しているのでしょうか?
 今後、プロダクト開発に力を入れていくのは確かですが、コンサルティングは仕事のベースになるため、相変わらず戦略立案などのスキルは前提として必要です。その上で、プロダクト開発をマネジメントできる人材を求めています。
 ただ、現状は採用市場においても、コンサルティングと事業・プロダクト開発を両方こなせる人というのは、ほとんどいないため、エッグフォワードの仕事を通して両面からアプローチできる視点やスキルを身につけてほしいと考えています。
 加えて、エッグフォワードのミッションに共感してくれる方であれば理想的です。私たちは、社内の議論の中でも必ずミッションの話をした上で顧客の課題解決を議論しており、「私たちにしか提供できない価値は何か」「人の可能性をどのように広げるか」「将来的にどうやって世界を変えるか」といった点を追求しています。
 顧客の課題を整理するだけでなく、人の可能性に目を向けた解決を常に考えていますので、他のコンサルティング会社とは全く違う達成感を得られると思いますね。
──エッグフォワードはこれからどんな企業になっていくのでしょうか。
 プロダクト開発については、まだ始まったばかりです。今後は、クライアントの課題に合わせてプロダクトを作り、改善を繰り返していきますが、もちろん、うまくいくものもあれば、そうでないものもあるでしょう。個別の企業に役立つプロダクトを作れても、それを社会に広めるには至らない場合もあるかもしれません。
 でも、私はそれでいいと思っています。たとえ多産多死であっても、経験は蓄積されていきますし、それがいずれ世の中を変えるプロダクトを生むことにつながると考えているからです。挑戦しないことには何も生まれない。
 こうした試行錯誤を繰り返し、ひとまず3年後までに、新たなデファクトスタンダードを作ることを目指しています。かつてAppleがiPhoneを生み出しスマートフォンで世の中を変え、メルカリが個人間売買のスタイルを変えたように、世の中にとっての新しい当たり前を創っていくつもりです。
 エッグフォワードの社名に「エッグ」を含めているのは、ミッションのとおり、いまだない価値(エッグ)を創り出し、人が本来の可能性(エッグ)を実現し合う世界をつくりたいという気持ちを込めてのことです。私たちは、これからも大きな可能性に向けてチャレンジし続けていきます。
(編集:呉琢磨、構成:小林義崇、撮影:Atsuko Tanaka)
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