心理学的特徴と経済的行動の関連性

ビジネスを成功させるためには、まず自分自身を知る必要がある。どう考えるか、どう決断するか、どのように問題を解くか。その人が何を得意とするかによって、起業における難しい問題への取り組み方や力を注ぐべき方向が決まってくる。
世論調査や経営コンサルティングを手掛けるギャラップ社のジム・クリフトン会長兼CEOは、新刊『生まれながらの起業家(Born to Build):スタートアップの成功、チームの勝利、新規顧客、想像しうる最高の人生を築く方法』(共著者サンギータ・バダル)で、ベンチャー立ち上げのためのユニークな心理学的アプローチを紹介している。その中身を簡単に紹介しよう。
経済活動と心理学を結びつける研究は1930年代にさかのぼる。アービング・フィッシャーやジョン・メイナード・ケインズといった経済学者は当時から、個人の特性と経済行動の関係を研究していた。
その結果、人間の心理学的特徴と経済的な行動には、かなりの関連性があることがわかっている。つまり起業家の心理学的特徴は、売上の増加や従業員の数、新製品の数、利益の伸びといった事業の業績と関係しているのだ。
ここでギャラップが注目しているのは、生まれつきの性質や才能をあらわす「天分」という概念だ。それは、さまざまな状況のもとで繰り返される思考や感情、行動のパターンであり、ある役割において優れた成果を上げる天性の能力を意味している。
起業家の「天分」を評価し、それを大成功した企業の創業者と比較すれば、会社の立ち上げにおいて、優れた結果につながる行動をとるかどうかを予測することができる。
起業家の中には、生まれながらに創造的な人もいれば、リスク管理に熟達している人、自分に非常に自信を持っている人もいる。天分は本人の行動を左右し、それによって事業の存続や成長といった結果に影響する。以下に例をあげよう。

1. 創造性豊かな人は特許で稼ぐ

定義 創造性とは、斬新な方法を思いつく生来の能力を意味する。これに関連する能力としては、多くの異なるアイデアを生み出す力、視点を次々に変えていく力、複数のアイデアを意外な形で結びつける力などがある。
結果 創造力に恵まれた人は、斬新なソリューションや製品、サービス、プロセスを既存の市場にもたらす可能性が高い。普通より特許を保有する可能性が3倍高い。

2. リスクをとる人は大企業を作る

定義 リスクをとる才能とは、成功の確率が低い時でもアイデアを追求する傾向のことだ。あえてリスクを負って冒険するタイプは、失敗を恐れず、なにもかもが不確実な状況でも意思決定を行い、リスクを軽減するために分析的なアプローチをとる。あらゆる選択肢を比較し、万一の事態が起きたときのシナリオを作り、行動する前に成功の確率を計算する。
結果 リスクを恐れない人は、新しいプロジェクトへの投資や新しい市場の開拓をする可能性が高く、それは収益性のいいビジネスにつながりやすい。立ち上げる企業が100万ドル以上の収益をあげる可能性は普通の人より5倍高く、ビジネスを大きくしたいと思っている可能性も高い。

3. 自信家は雇用を創出する

定義 自信とは、自分が仕事をうまくやることができると信じる能力だ。生まれながらに自信のある人は、主導権を握る傾向が強く、抵抗にあっても耐えることができ、成功するという期待を持ち続け、新しいことを試す。
結果 自分に自信のある人は、ベンチャー企業を立ち上げ、ビジネスの動きを刷新し、上手に舵をとる。自信家は従業員を雇うようになる可能性が普通の人の3倍高く、したがって雇用を創り出すことになる。
*   *   *
このように、それぞれの「天分」はビジネスの具体的な成果に影響を及ぼす。新しいビジネスチャンスを察知することがうまい人もいれば、リスク管理が上手な人もいる。生来の自信に満ちあふれている人もいれば、今ある問題に革新的な解決策を見つけるのがうまい人もいるだろう。
起業家はすべてそうだが、自分の天性の才能を発揮すれば、成功する可能性は最も高くなる。あなたはどのような起業家だろうか。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Leigh Buchanan/Editor-at-large, Inc. magazine、翻訳:栗原紀子、写真:Buhuhu/iStock)
©2018 Mansueto Ventures LLC; Distributed by Tribune Content Agency, LLC
This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with Cartier.