(ブルームバーグ): 電気自動車(EV)メーカー、米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は身の丈以上の野心を抱いていたが、いよいよ再考せざるを得なくなった。

マスク氏が同社従業員の約9%に当たる3000人余りの人員削減に踏み切るという12日のニュースは、テスラが極めて重要な局面に差し掛かっていると多くのウォール街関係者がこの数カ月指摘していた見方を裏付けた。テスラがいかに早く「モデル3」で初のEV量産に成功するかの判断を誤った結果、マスク氏はここ数年猛スピードで続けてきた採用活動から距離を置き、ブレーキを踏むことになった。

テスラ設立後15年の歴史で最大規模となる今回の人員削減は、マスク氏がさらされている赤字解消圧力の強さを浮き彫りにしている。これまでのところ、テスラの赤字は累計で約54億ドルに達しており、最も楽観的な見方を示す向きでもここで赤字が止まるとは考えていない。ブルームバーグがまとめたアナリスト予想によれば、向こう4四半期で赤字がさらに13億ドル生じる可能性がある。

今回の発表は、マスク氏が先月初めにテスラの財務に関して質問したアナリストを激しく非難した際に示唆していたリストラを具体化したものだ。同氏はさらなる資金調達を年内に実施する必要性を断固否定してきたが、2019年の早い時期までに償還を迎える転換社債は約12億ドル相当に達する。ムーディーズ・インベスターズ・サービスが今年3月にテスラの信用格付けを引き下げた際、こうした負債に営業コストが加わり、今年は20億ドル超の調達が必要になるかもしれないと分析していた。

カウエンのアナリスト、ジェフ・オズボーン氏は電子メールで、「生産面の課題や競争上の脅威が増している点、間もなく償還を迎える債務を抱えるバランスシートの動向を踏まえると、テスラ株に対してわれわれは引き続き慎重だ」と説明。今回の人員削減はマスク氏の「黒字化に向けた突然かつ新たに発生したコミットメント」を反映しているとコメントした。

マスク氏は12日の社内メールで、「テスラは設立から約15年で年間の黒字を確保したことが一度もなく、利益がわれわれを奮い立たせるのではない。われわれを突き動かすのは世界を持続可能かつクリーンなエネルギーへの移行を加速させるという使命だ。だが、そのミッションも持続的に黒字を確保することができるということを最終的に示さなければ達成することは決してできない。それはテスラのこれまでの歴史を巡る妥当かつ公平な批判だ」と記した。

原題:Musk’s Model 3 Miscalculation Culminates in Major Tesla Job Cuts(抜粋)

--取材協力:Molly Smith、Arie Shapira、Esha Dey、Sophie Caronello、Brian Eckhouse.

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