なぜ、英語にコンサルティングが必要なのか?

2018/6/18
毎日の勉強を継続して英語が身につく人と、そうではない人は何が違うのか。GRIT代表取締役社長・岡田祥吾氏は、もっとも大きな違いは「人生のなかでの優先順位」だという(「なぜオンライン英会話は続かないのか。三日坊主のメカニズム」参照)。
言われてみればその通りなのだが、そうすると世の中のほんの一握りの人しか英語学習をやり遂げられないのではないだろうか。なぜPROGRIT(プログリット)では、97.8%もの人が2カ月の猛勉強をやり遂げられるのか。岡田氏と、2人の同社コンサルタントに聞いた。

その人のなかにある重要性を掘り起こす

── 岡田さんは英語学習をやり遂げるには「人生のなかで英語の優先順位が高いこと」が必要だとおっしゃっていました。
岡田 そうですね。優先順位のポイントには緊急度と重要度があり、多くの方は今日しかできない緊急度の高いことを優先順位が高いと錯覚しています。
でも、緊急だけど重要じゃないことや、緊急ではないけれども長期的に見ると重要なこともある。そこをちゃんと見据えてやっていくことが大事だと思います。英語の伸びは「質×量」で決まります。正しい勉強法を用いて、時間をかければ絶対に上達しますから。
── たとえば外資系に勤めて日常的に英語を使わなければならない人は、英語の重要度も緊急度も高い。では、仕事で英語を使わない方には、どんな重要性が考えられますか。
岡田 それは本当に人それぞれですね。PROGRIT(プログリット)のカウンセリングを受けに来るお客様には、「2年後に転職したいから英語を勉強したい」という方もいらっしゃいますし、「今の仕事では英語を使っていないけれど、海外支局に異動したいから勉強する」という方もいらっしゃいます。
もちろん、最初から目的が明確なお客様ばかりではありません。むしろ、多くの方は「なぜかはうまく説明できないけれど、英語を身につけたい」と思ってPROGRIT(プログリット)にいらっしゃいます。
僕らは、お客様が英語を身につけるとどうなるかを提示するのではなく、お客様が潜在的に持っている動機や課題、つまり重要性をちゃんと表面化させるお手伝いをするんです。
なぜ英語をやりたいのか? 勉強したら何が変わるのか? そういう質問を重ねていくと、英語を身につけた先に思い描くビジョンの解像度が高まります。
その結果、「やっぱり英語は大事じゃなかった」と気づく方もなかにはいらっしゃいますが、漠然とでも「英語を学びたい」と思っている方には、何かしらの動機や目的が浮かび上がってきます。
会話を重ね、その人にとって「なぜ英語が重要なのか」を浮き彫りにすること。英会話スクールや教材は、英語を学ぶための手段に過ぎません。PROGRIT(プログリット)が提供するのは、もっと包括的なコンサルティングサービスです。
また、我々はイシューベースで物事を考えることを大事にしています。いい教材があるからそれをやるというソリューションベースで考えても英語は身につきません。
なぜ今英語ができないのかというイシューを明確にし、ロジカルに整理して必要な手段を選んでいく。これはコンサルティングでなければできないことだと考えています。

ペースメーカーとしてのコンサルタント

── 英語を教えるのではなく、英語学習をコンサルティングする。これはPROGRIT(プログリット)の特徴ですが、コンサルタントとはどんな仕事なのでしょうか。
奥田 我々がやっていることは継続支援であり、ティーチングよりもコーチングに近いと思います。どんなレベルの方でも、その人の目標に向けてもっとも効率的な学習法を選び、持続できる環境を整えること。
ただ頑張ろうと励ましたりお尻をたたいたりということではなく、その人の目的を実現するにはどうすればいいか。モチベーションを保ち続けるためには、どうすればいいか。それを考えて実行することです。
吉永 コンサルタントをやってきて特に大事だと思うのは、相手に寄り添いつつも、一歩先を見ながら引っ張っていくこと。ペースメーカーのような役割です。
怠けてしまっている人には、その原因を分析したうえで、目標に向けて踏み出せるように背中を押します。逆に、最初に気負いすぎている生徒さんの場合は、途中で疲れ果ててしまわないようにペースを抑えることもあります。
マラソンのペースメーカーは、ランナーがゴールする前にいなくなります。コンサルタントも同じで、私たちがいなくなっても、生徒さんがそのペースを継続できるようにすることを目指しています。
── 具体的には、どうやって継続をサポートするんですか。
奥田 毎日のやりとりのなかで重要なのは、自分だけで勉強しているのではなく、コンサルタントが併走していると感じていただくことです。
ひとりで頑張るのは、誰にとっても難しい。でも、誰かが自分の日々の学習を見ていると思えると、つらいときに踏ん張る力が得られます。
具体的には、チャットツールで勉強の開始と終了を報告してもらい、最初に決めた予定を決まった時間に実行できているかを確認します。また、短期間で変化が表れやすいシャドーイング(英語の音声を聞きながら復唱する勉強法)は、日々音声データを送ってもらって添削やアドバイスを行います。
そのうえで、週に一度の面談で学習を振り返り、課題のチェックとテストを行っています。その場でも英語を教えるというよりは、それぞれのやり方でモチベーションを維持できているかを確認するところが大きいです。
総じて言えるのは、成長しているという実感や生活のなかでの成功体験があると、人はモチベーションが上がるということ。
たとえば、以前は聞き取れなかったミーティングの内容が、通訳を介さなくてもわかるようになった。前はうまく表現できなかった自分の意見を英語で言えるようになった。
学習に慣れるほど変化が乏しく思えてくるものですが、ちょっとしたきっかけで自分が成長していると感じられれば、人はもっと頑張れます。
日々の学習成果を定量化し見える化することで、こうした成長実感をうまく学習プロセスのなかにデザインしていく。これも、コンサルタントの重要な役割です。
面談の直後は目に見えてやる気が出て、学習時間が増えたり、当初よりも高いレベルにコースを設定しなおしたりすることもあります。やっぱり、顔を合わせることの影響は大きいと思います。

広く探り、深く分析する

── 面談では、どんなことをお話しされるんですか。
吉永 英語学習のために必要であれば、何でも話します。たとえば一口に「やる気が落ちてきた」といっても、いろいろな原因があります。
ただ体力的に疲れているのか、成長実感がないのか。教材に納得がいかないのかもしれないし、ゴールを見失っていることもあります。それを面談で話し合い、生徒さんと一緒に探るんです。
奥田 話を聞いていくと、英語とは関係ない私生活が原因になっていることもよくあります。そこまで深掘りして本当の課題を引き出すためには、学習意欲が下降線をたどるケースや、一人ひとりの答えを抽出する方法まで知っておく必要があります。
生徒さんの英語学習を取り巻く環境自体がコンサルティングの対象なので、人によってはかなり深くプライベートに踏み込むケースも出てきます。
吉永 あるメーカーに勤める生徒さんは、上司との関係がうまくいっていませんでした。上司からは英語が必要だと言われるけれど、自分が評価されておらず、英語を使う機会は与えられない。
そういう葛藤のなかで勉強しているものの、将来像が見えていないから打ち込みきれなかったんです。
その方は、「今の環境は自分自身にとってプラスになっているのか」と話を重ねた結果、やっぱり違うという結論に至ってPROGRIT(プログリット)の期間中に会社を辞めました。
その後の面談では、どういうところに転職したら今やりたいことをできるのかを話し合って目標設定をやり直し、転職の面接の練習もお手伝いしました。
英語以外のところでかなり回り道しましたが、それをやることによって最終的には計画していた学習方法に戻り、集中して勉強できるようになったんです。
── なるほど。英語学習の課題を探るということは、突き詰めれば仕事や生活全般にかかわることにもなりえるんですね。
奥田 PROGRIT(プログリット)を卒業した方からの満足度が高い理由も、そこにあると思います。コンサルタントは本当にいろんなことをするけれど、そのすべてがお客様の本質的な課題解決に向いています。
猛烈に英語を勉強することで今抱えている問題が解決されるならそれをサポートしますし、問題が生活環境にあるのなら、まずそちらからアプローチします。
卒業生からのアンケートで「英語だけではなく、人生のなかで私自身が抱えていた課題をどう解決すればよいかが見えてきた」というものがありました。英語を伸ばすこともできたけれど、それ以上に大きなものを得たと感じていただけたのかなと思います。
吉永 コンサルタントとしては、自分ひとりでやりきることは困難でも、「○○さんがいるから頑張れる」みたいな、そういう存在でありたいと思っています。
苦しい勉強をやり遂げたうえで、目標としていた英語力を身につけていただけたら、こんなにうれしいことはありません。
── コンサルティングの手法だけでなく、もっとパーソナルな部分が大事だということですか。
吉永 そうですね。それだけの価値があると思って、私はやっています。コンサルタントの覚悟と責任って、それほど大きいんです。
ある意味、生徒さんのためにどれだけ時間を割くかは自由なので、コンサルタントはみんな、自分の時間を全部使ってでも、生徒さんの課題や解決方法を考えています。
勉強法のカスタマイズだけでなく、日々のやりとりや面談を通して全力でその人に向き合うから、生徒さんの心のなかにコンサルタントの存在が残っていく。
そうなると、卒業後にちょっと勉強が嫌になりかけたときにも、コンサルタントやPROGRIT(プログリット)のことを思い出して、踏ん張る支えになれるんじゃないかなって思います。
(取材・文:宇野浩志 編集:大高志帆 撮影:後藤渉 デザイン:星野美緒)