【木崎伸也】絶体絶命の日本代表。デュエル観の先にある勝機

2018/6/12
日本代表が1998年W杯に初出場して以来、これほど大会前に応援の熱が高まっていないのは初めてのことだろう。
最大の原因としてあげられるのがスター不在だ。本田圭佑や長谷部誠ら2010年W杯のヒーローは30歳をすぎ、一方チャンピオンズリーグで暴れるような若手が現れていない。これでは普段サッカーをあまり目にしない層の関心を引きつけるのは難しい。
ビデオリサーチ社によれば、前大会のアジア最終予選の突破を決めた試合(日本対オーストラリア)の関東地区の視聴率は、2013年のテレビ視聴率ランキングで3位(38.6%)だった。しかし、今大会の突破決定試合(日本対オーストラリア)の視聴率は2017年のランキングで16位(24.2%)だった。
「日本代表戦の視聴率低下について、日本サッカー協会と話しても危機感を持ってもらえない」
日本代表の放映権を扱う代理店の関係者が、今年1月にそう嘆いていた。裏を返せば、協会が代理店の干渉を受けず、独立性を保っているということでもあるが、関心の低下は数字に如実に表れている。
日常的にJリーグや欧州サッカーを見ているコアなファンの熱も高まっていない。むしろ大会直前の監督交代により、強い反発が引き起こされている。今年4月7日、協会は3年間率いてきたヴァヒド・ハリルホジッチとの契約を解除し、西野朗技術委員長を新監督に指名した。
協会の田嶋幸三会長の会見も、コアなファンの怒りに油を注いだ。契約解除にいたった経緯をほとんど語らなかったのだ。おそらくハリルからの訴訟に備えて言質を取られることを警戒したのだろうが、あまりにも情報を隠しすぎた。SNSで「今大会は日本代表を応援する気分になれない」という声が噴出するのも理解できる。
西野新監督のもと、すでに選手たちはW杯に向けて全力で走り、組織力を少しでも上げようともがいている。彼らにとっては今と未来が大事で、過去を振り返っている時期ではない。
ただしファンの中には、協会への批判精神は持ちながらも、W杯前に気持ちを切り替えたいと考えている人も多くいるはずだ。今回の原稿では、監督、選手、協会、それぞれに正義があるということを大前提にし、誰かを悪者にせず、日本代表に起こったことを冷静に整理してみたい。