【鈴木大輔】スペインサッカーの神髄。「本気で楽しむ」強み

2018/6/8
先日、スペインに来て3シーズン目が終了しました。
スペインの2部リーグで2年半プレーし、スペインで生活するようになって、日本でプレーしている時と何が変わったのかを自分なりに考えてみました。
サッカーの本質を理解している選手や指導者に触れて、サッカーの見方が変わったと思います。「サッカーというスポーツではこのような現象が起こる」という原理原則があり、それを元に戦術や選手の駆け引きが行われているのだとわかってきました。
しかし、ボールを止める・蹴るという技術が飛躍的に上達したわけではないので、まだまだプレーとして表現しきれていないのが現実です。
より大きな変化をいうと、やはりメンタル面の成長なのではないかと思います。
ヨーロッパでプレーする「海外組」の多くが、メンタル面の成長を語られています。やはり壁にぶつかる経験が多く、悩み、考えて解決する過程で、自分のことを分析する時間があるからではないかと思います。
自分も同じように感じていて、日本でプレーしていた頃より自分を分析する機会が増えたことが、メンタル面の成長を促進させたのではないかと思っています。
悩みを解決するサイクル
具体的にどのような成長を感じているかというと、悩みやストレスを解決するまでの時間が早くなったことです。サッカーだけではなく、日常の中で起こる様々な問題やストレスから抜け出すスピードが上がったなと感じています。
現在、壁を乗り越える上での自分の感情の流れは、“悩む→なぜ悩んでいるのか考える→考えないようにする→心が軽くなるまで耐える→心が軽くなる→開き直る”というサイクルです。
このサイクルは、日々自分と向き合っていく中で築いていったものです。
悩んだり、ストレスを感じたりしている時に大事にしていることがあります。「原因は自分の中にある」と自分自身に言い聞かせることです。
これは上のサイクルでいう2つ目の「なぜ悩んでいるのか」を考える時に行っているものです。
例えば練習でミスが多くて自分の納得するプレーができない時には、「完璧なプレーをして、周りに評価されたいと強く思うエゴを持っている自分が原因だ」というふうに考えます。
そういう自分がいることがわかったら、それ以上考えないようにします。それでも何か心に引っかかるものがある時は、しょうがないと受け入れてじっと耐えます。すると心が軽くなる瞬間が必ず来て、その時には開き直った状態になって、「もういいや」と感じている自分がいるのです。
スペインに来てからの2年半で、この感情のサイクルが非常に早くなったと実感しています。
以前の自分は、悩みをすぐに解決しようと近道を探すようなところがありました。自分が納得するような答えを作り出そうとして、余計にストレスを増やしてしまっていたのだと思います。
しかし、「原因は自分の中にある」ことを自覚することで、なぜ悩んでいるのかがすぐにわかるようになりました。
またストレスから無理に抜け出そうとするよりも、心のモヤモヤを受け入れてじっと耐えていた方が、悩みを解決するのが早いとわかりました。
そして何より感情の流れを把握することによって、流れに身を任せることができるようになったのが良かったと感じています。
このように、スペインに来てから自分と向き合うことによって、メンタル面の成長を感じることができています。
スペイン2部リーグのレベルの高さや選手の質の高さも痛感しており、自分の実力のなさもこれでもかというほど思い知らされました。
しかしメンタル面での成長がプレーに影響していて、基本技術は上がっていなくてもミスに動じることが少なくなってきていると思っていますし、レベルが高い中でも堂々とプレーできるようになったと実感しています。
自分流の「本気で楽しむ」形
もう1つ、スペインに来て感じたことに「本気で楽しむ」ことの重要性があります。
チームメートには、いつでもサッカーを楽しそうにプレーしている選手が多くいるなと感じます。サッカー少年タイプの選手といえばいいでしょうか。
彼らは調子が良い・悪いに関係なく、楽しそうに練習して楽しそうに帰っていきます。練習でいくらミスが多くても“自分勝手と紙一重のようなプレー”をしていて、消極的になったところをあまり見たことがありません。一緒にプレーしていて、「サッカーを始めた頃の、純粋にサッカーを楽しんでいる時期そのままだな」と感じます。
一方、自分は考えすぎるところがあり、1回消極的になる時期を経てから自分と向き合い、自己を成長させていくタイプです。
ひたすら楽しいと思ってプレーしていた方が、消極的になることや自信を失う時間も少なく、いつでも自分の実力を発揮できると思います。正直、「本気でサッカーを楽しんでいるヤツにはかなわないな」とさえ感じさせられました。
ですが、考えすぎてしまうことを強みに換えて、自己を成長させることに楽しみを見いだせるのであれば、最短距離ではなくとも最終的には戦っていけると体感しました。
好きなことが仕事になった時に、やり始めた頃の楽しさがないことに違和感を覚え苦しむケースがあると思いますが、好きなこと自体が楽しくなくなってきたとしても、自己を成長させることを楽しむことはできるはずです。好きで続けてきたものだからこそ、そうできるのではないでしょうか。
このような「本気で楽しむ」という形もあると思っています。
どんな形であれトップレベルで戦い続けるためには、「本気で楽しむ」ことが重要だと教えてもらいました。
これも自分のメンタル面での成長の1つであると捉えています。
(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)