【佐々木紀彦】NewsPicks Studioでやりたいこと

2018/5/25

ポストテキストに挑む3つの理由

本日、電通との合弁会社「NewsPicks Studio」の設立を発表しました。新会社が担うのは、動画を中心としたポストテキストコンテンツの企画制作・プロデュースです。
今なぜ、ポストテキストに挑戦するのか?
その理由は主に3つあります。
1)映像コンテンツ黄金時代の到来
2020年以降の5G時代到来に伴い、映像のニーズがコンテンツ面でも広告面でも爆発すると予測しています。これまでテキストや写真が中心だったウェブ空間において、映像のシェアが一気に高まるはずです。
映像は言語の壁を越えやすいため、世界のマーケットを狙いやすいのも魅力です。この「映像コンテンツ黄金時代」の波に乗って、新時代の経済コンテンツづくりに挑んでいきます。
ようこそ、ポストテキストの世界へ
2)コンテンツ融合時代の到来
これから、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、ウェブなどのメディアの壁が溶け、多様なメディアが縦横無尽につながる「コンテンツ融合時代」が到来すると見ています。
そうした変化の中で、NewsPicksに映像という柱が加わることで「テキスト×映像」「イベント×映像」など、さまざまな組み合わせが創りやすくなります。
NewsPicks Studioでは、メディアの壁にこだわらず、テーマに応じた、ベストな表現の形を模索していきます。
3)経済コンテンツ黄金時代
世界的に見ても、ポストテキストコンテンツの成功例はまだ少なく、とくに経済分野では、ブルーオーシャンが広がっています。
活字分野でも、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)、フィナンシャル・タイムズ(FT)などの経済メディアが課金モデルをリードしたように、映像分野でも、経済メディアが新しいビジネスモデルを切り開くはずです。
昨年末、BloombergがTwitterと始めたライブ動画ニュース「TIC TOC」は、新時代のモデルとして大きな注目を浴びています。

3つの「ファースト」

私は、23歳のときにメディア界に足を踏み入れて以来、雑誌、本、ウェブなどの文字メディアを生業としてきました。活字なしで生きられない”活字大好き人間”です。
ただ、ここ数年、テレビや動画など映像メディアに携わるにつれ、映像コンテンツのダイナミズム、奥の深さにひかれるようになりました。元来の映画好きも相まって、最近では”映像大好き人間”になりつつあります。
NewsPicks Studioは映像の世界では完全な新参者です。映像コンテンツの先輩から学ぶことばかりの、ひよっこです。
しかし、新参者だからこそできるチャレンジもあるはずです。合弁パートナーである電通、プラットフォーム企業、制作会社の方々と力を合わせて、ポストコンテンツのモデル創出に挑みます。
そのために、貫きたいのが「3つのファースト」です。
一つ目は、スマホファーストです。
映画やテレビなど大画面に適したコンテンツと、スマホに適したコンテンツは、必ずしも同じではありません。
NewsPicks Studioが目指すのは、スマホファーストかつ、大画面で見ても違和感なく楽しめる映像コンテンツです。ニュース、ドキュメンタリー、リアリティショー、教育、ドラマなどあらゆるカテゴリーで、スマホファーストのコンテンツを提供していきます。
「メイクマネー」に込めた3つの想い
2つ目は、クリエーターファーストです。
その根底には、「日本ではクリエーターが正当な扱いを受けていないのではないか」という問題意識があります。今後は、メディア企業のみならず、あらゆる企業において、「クリエイティブが競争力の源泉になる」と確信していますが、日本ではそうした認識が希薄です。
先日のWEEKLY OCHIAIでも、落合陽一さんと映画監督の大友啓史さんが「日本は顔の見えないクリエーターに対する評価が低い」と話していましたが、その指摘に深くうなずきました。
映像コンテンツはチームプレーでつくられる集団クリエーションです。作家や歌手のように個人名が出ないだけに、個人として高い評価を得るのは難しい。
しかも、上下関係が厳しい村社会になっているため、下克上を起こして、若手がスターダムにのし上がるのは容易ではありません。
こうした構造に少しでも風穴を開けられるよう、クリエーターが、年齢に関係なく自由に才能を発揮し、正当なチャンスと対価を得られるような場づくりに励みます。
3つ目は、ビジネスモデルファーストです。
こういうと、「クリエーターファーストと矛盾するのではないか」と思われるかもしれませんが、両者は対立するものではなく、むしろ補完するものです。
強固なビジネスモデル、稼ぎがあればあるほど、コンテンツ製作や宣伝にお金を注ぐことができて、クリエーターが才能を発揮しやすくなります。
その実践例が、ネットフリックスです。
月額課金という強力なビジネスモデルを土台として、年間約8000億円をオリジナルコンテンツに投資。世界の会員数は1.25億人を超え、昨日ついに時価総額でディズニーを抜きました。
ネットフリックスは偉大になれるのか
強固なビジネスモデル→コンテンツ投資拡大→コンテンツ力アップ→ユーザー増加→より高い収益
この「黄金のサイクル」が回るようになれば、存分にコンテンツに予算と情熱を注ぐことができます。
NewsPicks Studioでも、一日でも早く「黄金のサイクル」を産み出せるよう、新時代のコンテンツモデル、新時代のビジネスモデルの確立に邁進します。
NewsPicksは記事も面白いけれども、映像コンテンツもそれに劣らず面白い――そうユーザーの方々に感じていただけるよう、メンバー一同、楽しく、真摯にコンテンツ作りに打ち込んでいきたいと思います。