【新】さらば“興行主義“。これからの「映画」の話をしよう

2018/5/22
2018年5月19日、是枝裕和監督の「万引き家族」がカンヌ国際映画祭の最高賞、パルム・ドールを受賞した。
日本の映画が、カンヌで最高賞を受賞するのは1997年以来実に21年ぶりで、業界内外で、久方ぶりの受賞を喜ぶ声は大きい。
ただ日本映画は、長い低迷の時代を本当に抜けたと言えるのか。実は、映画業界には製作費を取り巻く構造問題が横たわっており、1つの作品の受賞をもって「映画業界復活」と宣言できないだけの事情がある。
もともと映画界は、1950年代に全盛期を迎え、観客動員数のピークを迎えている。しかし、その後はテレビの普及などにより低迷。現在までの間に、数多くの映画会社が倒産した。
その結果、映画会社が自社の資金だけで製作費をまかなう体力がなくなり、複数の企業の出資を受けて映画を製作する製作委員会方式が主流になっていった。この方式は、映画がヒットしなかった場合のリスクを分散できるというメリットがあった。
ただし、その一方で、「そもそもヒットしなさそうな映画にはお金がつかない」という副作用もある。いつしか映画界には「興行主義」がはびこり、現在は、著名な映画監督でさえ、資金調達に困るっているという。
そんな中、あるベンチャー企業が、映画界のお金の流れを変えるために動き出した。50年もの間、低迷を続ける映画業界は長いトンネルから抜けられるのか。
NewsPicksは、芸術に特化したクラウドファンディングサービスを運営するMotionGallery (モーションギャラリー)の大高健志社長と映画監督の深田晃司氏に話を聞いた。本日から3日連続で、知られざる、「映画とお金の関係」をお届けする。
大高健志(おおたか・たけし)/MotionGallery 創業者&代表取締役CEO。早稲田大学政治経済学部卒業後、外資系コンサルティングファームで戦略コンサルタントとして、主に通信・メディア業界の事業戦略立案などに携わる。 その後、映画のプロデューサーを志し、東京芸術大学大学院に進学。2011年、クラウドファンディングプラットフォーム「MotionGallery」を立ち上げる。
── 近年、新しい資金調達の形として注目を集めているクラウドファンディングですが、その波が映画界にも押し寄せているようですね。
押し寄せていますね。私たちのクラウドファンディングでは、映画や写真、演劇や舞台、現代アートなど、芸術関連で資金調達をされている方が多いです。
そのうちの4割くらいを映画が占めているのですが、近年は海外の映画祭などにノミネートされる作品が増えてきています。
例えば、2012年に公開されカンヌ国際映画祭に出品された「Like someone in love(ライク・サムワン・イン・ラブ)」という作品は、我々のプロジェクトの第1弾で資金を集めた作品です。
この映画は、カンヌ国際映画祭や、ベネチア国際映画祭などで数々の賞を受賞したアッバス・キアロスタミ氏というイラン人映画監督の巨匠が、小津安二郎監督の大ファンで、日本で映画を撮りたいと熱望して企画されたものです。