脳に電気を流せば記憶力がアップする──人間での実証実験に米研究チームが成功
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今回の実験の被験者となったのは、てんかん発作を予知し抑制をする為の電極を海馬に挿入している22人。この治療器具は、米シリコンバレーのNeuropace社が2013年にFDA認可を得たRNS®︎システムというもので、恐らく世界で唯一と思われる。
Neuropace
http://www.neuropace.com/
この研究が人間で行えたのも、RNSが実用化されたからこそ。
とは言え、脳波や一定精度の心拍変動(HRV)でも事前感知がある程度可能なてんかん発作を、手術のリスクをおかしてまで直接電極を刺す手法が認可されていることはなかなか驚いた。
冒頭で、
"すでに動物実験により効果は実証されていたが、人間にも大きな効果を発揮することが多くの研究者に衝撃を与えている。"
とあるが、後に、
"「改善されたことに驚いたのではありません。すでに予備的な動物実験で成功していましたから。わたしたちが驚いたのは、改善された度合いです」"
と書かれているように、サルによる予備実験がなされているのだから結果が出ていること自体は衝撃ではない。
ハンプソン等は、従来から海馬のCA1野とCA3野の部位の電流パターンのモデリングを行なっている。モニタリングされたデータを解析し、適切な電気刺激を海馬に返すことで短期記憶形成の増強が観測されたということなのだろう。
その意味において、記憶が強化されることは当然のことだが、そこまでして覚えていたいことなどあるのだろうか。忘れたくても忘れられないものの方が多い。
元論文
http://iopscience.iop.org/article/10.1088/1741-2552/aaaed7/pdf
ちなみに、文中で、
"「海馬」は記憶が形成されるうえで重要な役割を果たす脳の部位で、タツノオトシゴの形に似ている。"
とあるが、これは間違い。脳の部位の海馬とタツノオトシゴは共に"Hippocampus"と呼ばれているが、それぞれ別由来。ギリシャ神話の海神ポセイドンが乗る海馬Hippocampus(後ろ足はイルカの様になっている架空の怪物)の"前脚"に似ていることから、1587年にイタリアの解剖学者Arantioが命名。一方のタツノオトシゴは、それとは別に海馬に因んでつけられた学名。