【求人掲載】国内初、超難関な生鮮食品の物流インフラ刷新に挑む

2018/5/25
企業の統合や合併――歴史も人材も文化も違う企業が一緒になることは、簡単なことではない。シナジーを追求するために、さまざまな課題に直面する。

2018年に、らでぃっしゅぼーやと経営統合を予定しているオイシックスドット大地もその一社だ。生鮮食品の宅配サービス事業でかつての競合関係にあったオイシックス、大地を守る会、らでぃっしゅぼーやの3社が1つの事業体に統合されたことで、売り上げ規模は約600億円に達する。

しかし、それぞれのメインターゲットの変化するニーズに応えていくため、3つのブランドは統合するのではなく残す決断をした。そして、それぞれバラバラの物流とシステムの仕組みを基盤から見直し、残すところは残す、統合できる部分は統合するという折衷案に挑む必要がでてきた。

これらは根幹から異なるうえに、“食”を扱うからこそ簡単ではない。この難しい課題「物流とシステムの刷新」に挑む、システム本部本部長の伊藤秀文氏と、プロダクトセンター本部本部長の小松敦氏に話を聞いた。

3つのブランドを残す決断
──大地を守る会との経営統合によって、有機野菜宅配業界で最大手になり、NTTドコモ傘下のらでぃっしゅぼーやを買収したことで、会員数・生産農家数は増大しました。ただ、文化や仕組みの違う3社が一緒になったことで、物流やシステムはかなり“カオス”な状況のようですね。
伊藤 そうなんです。生鮮食品を宅配するという大枠のビジネスモデルは同じですが、その物流やシステムの仕組みは違うんです。
しかも、「オイシックス」「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」は統合したものの、それぞれのブランドを残す決断をしました。一般的に経営統合をする場合、サプライヤーをえりすぐり、在庫を共通化して同じ商品を扱っていくことに最大のメリットがあります。
でも当社は、ファーストリテイリングにおけるGU、ユニクロ、Theoryや、トヨタにおけるレクサス、プリウス、カローラのようにブランドをそのまま残し、どれを選ぶかはお客様が判断できるようにした。だから、在庫も商品も違えば、システムも物流も違う。
価値観の違う会社が統合し、違いを尊重することで、多様性が生まれる側面はある一方で、経営統合した以上、可能な範囲内での効率化を図っていく必要があります。
残すところは残し、統合するところは統合していく。誰もやったことがないような難題へのチャレンジが求められています。
小松 2017年まで、物流拠点は海老名の1拠点で運用していましたが、統合によって17拠点に増大しました。ブランドごとに拠点が担う役割が異なるため、これまでのように「海老名の部分最適だけを考えればいい」というスタンスは、まったく通用しなくなったのです。
各社は配送の考え方も違っていて、「大地を守る会」と「らでぃっしゅぼーや」は自社便で配送をしていますが、「オイシックス」はヤマト運輸に全面的にお願いしています。
前者は配送日時の指定をゆるく設定している一方、後者はヤマト運輸の配送時間帯の区切りに合わせて配送曜日と日時を細かく設定でき、配送のサービスレベルは高い。これを自社便で行うのはコスト的にも体制を構築するのも厳しいのが現状です。
「大地を守る会」と「らでぃっしゅぼーや」で配送システムの統合ができても、「オイシックス」はどうするのか。今できることは何で、長期的に見たときの理想形は何か。やるべきタスクを洗い出し、一つひとつ整理しながら異なる時間軸を設定して進める必要があるのです。
生鮮食品を扱うから単純な統合ができない
──在庫を抱えられない生鮮食品を扱うからこそ、そもそも物流とシステムの構築には高度な技術が求められるように思います。
小松 まさにその通りで、生鮮食品は天候などの外的要因がダイレクトに影響するから、「いつも同じ量」の在庫を持つことができないんです。
オイシックスは「特別栽培以上の野菜」(市場に流通している農薬・肥料基準の半分で作ったもの)をお届けすることをお客様にお約束しておりますが、それは国内に流通している野菜全体の数%しかありません。
そこで、ある程度の予測を立て、数字分析に基づいて、生産者さんに「この野菜を作ってください」と作付け(作物の根付け)をお願いするのですが、天候によって「今年は不作」あるいは「豊作」というのがもちろん発生します。
在庫が増えると腐ってしまうし、足りなければほかの地域からの代品で対応しないといけない。供給量に合わせた在庫管理は非常に大変です。
伊藤 注文を受けてから作付けするわけにはいかないですからね。採れすぎてしまってもロスしないよう、「お買い得品」として販売しているのですが、これは注文確定からお届けまで最短3日という短いスパンで配送できているからこそ。自社便では難しいでしょう。
──「食」に対する消費者ニーズへの対応も、物流面では簡単ではなさそうです。
小松 そうですね。統合前から、「KitOisix(キットオイシックス)」の物流は課題でした。
「KitOisix」は、20分以内に主菜と副菜が簡単に作れるミールキットで、「ジューシーそぼろと野菜のビビンバ」など、忙しい女性に大変支持されている商品。お客様のライフスタイルが変化する中で生まれ、売上高は無視できない規模に成長しています。
これは、商品開発部が開発したメニューに合わせて、生産者さんには必要な野菜を1年前から計画的に栽培してもらうのですが、売れ行き好調になっても栽培量は増やせません。会社としてはうれしい悲鳴ですが、肝心の野菜がないとデリバリーできない。
伊藤 「お客様が求めるものを届ける」企業姿勢と、生鮮食品を扱う事業モデル。その間で調整する大変さがありますね。「不人気メニュー」はすぐにやめて違うメニューを販売したいけれど、メニューが変われば調達する野菜も変わります。
すぐに栽培できないし、どれだけ作れるかは天候などの外的要因で確実には把握できない。さまざまなボトルネックが発生する中で、いかにそれらを事前に防ぐ仕組みを作れるかが肝なのです。
小松 昔売れていた商品が売れなくなったり、想定外の野菜が売れるようになったり。ニーズやライフスタイルに合わせてシステムも物流も柔軟に対応できる仕組みが必要です。
数字を読みにくいビジネスかつ、5年後にはどんなニーズが生まれているか分からない変化の激しい時代で、ITインフラ、物流をどう設計していくか。サプライチェーンをどうマネジメントするのか、難しいチャレンジです。
3社のニーズや仕組みを再定義する
──これから、物流とシステムの最適な統合に向けてどのようなチャレンジを進めるのでしょうか。
伊藤 まさにこれからアクションプランを考えていく段階です。システム面では、AIやIoTの活用を積極的に進めたいですね。ここ2~3年で販売にはAIを導入してきましたが、物流システムの改善にはまだ及んでいません。
たとえば、在庫管理システム内でAIが天候予測や生産者情報などの細かな数字を作って食材のロスを極力減らすように精緻な予測を立てる。ビニールハウスに温度センサーとカメラを設置し、各生産者の生産状況を把握できるようにして、より精度の高い調達システムを構築するなど、やるべきことはたくさんあります。
ただ、今のシステムはそれらの活用を想定していないので、根本から作り直す必要があるのです。
3つのブランドを残して市場にインパクトを与えたいと決めた経営陣の思いを受けて、今後半年で物流・システムのどの部分を統合していくか方向性を決めていきます。
小松 統合によって、システムを基盤から作り直す「基盤刷新チーム」が新設されたのですが、まずやるべきは、5年後にどんな状態を目指すのかを明確にすること。
売り上げ1000億円超えを目指して、どんな配送センターを作るのか、自社便での配送を全体の何%にすべきかなどを逆算しなければならない。システム統合にどれくらい投資すべきかのロジックを作る作業を、今まさに行っているところです。
伊藤 ほかにも、複雑な部分はたくさんあります。たとえば、オイシックスはセンター運営をほぼ自社でやっているので、数字も可視化され、どういうアクションプランをとるべきかが明確です。
一方、「大地を守る会」と「らでぃっしゅぼーや」は、運営を外注しています。自社でやるのがいいのか外注したほうが効率的なのかは、見えている数字だけでは判断できないので、3社の配送拠点、お客様ニーズを再定義した上で、インフラをどう統合するべきか考えていかなければいけません。
社会の変化から生まれる課題を“食”で解決
──新たな仕組みづくりに挑戦するために、どのような人に仲間になってほしいですか?
伊藤 オイシックスドット大地は、まさに第二創業期。3社それぞれが既存の物流や販売の仕組みを回しながらも、ゼロから事業体制をつくる必要があり、いわばスタートアップに近いフェーズにあります。
システム面もカオスなところがたくさんありますが、むしろその状況を楽しみながら、営業やマーケティング、商品企画などチームを横断して新しい仕組みを作りたい人に来てほしいですね。
今回の大規模な基盤刷新は、他で経験できるものではありません。
生鮮食品という難しい領域で、かつそれぞれに歴史あるサービスを運営しながら、基盤を最適なものに刷新していく。どれだけ時間がかかるかわかりませんが、やり遂げた後のキャリア価値は、非常に高いのではないでしょうか。
小松 人のライフスタイルの変化とともに、食に求めるニーズもビジネスチャンスもどんどん変化していくので、数字ベースでロジカルに考えられる人、粘り強く課題解決に向かえる人、基盤から作りたい人に仲間になってほしい。データサイエンティストのニーズも今後は増えていくと思います。
伊藤 それから、「お客様の求めるものから始める」という価値観を大事にしている会社なので、ニーズから社会課題や世の中の変化が見えるのも面白い。たとえば、「KitOisix」が生まれた背景には、女性の社会進出がありました。
「買い物に行き、メニューを考えて夕ご飯を作る時間がほとんど取れない」けれど、「手抜きをした食事を出すのは嫌」という思いに応えたのがKitOisix。だから、調理時間が20分という時間設定にも意味があるのです。
10分では手抜き感が拭えない、30分では時間がかかりすぎる。その間に応えたからこそ成長があります。
社会の変化から発生するさまざまな課題を、“食”から解決していく。その思いに共感していただける人と一緒に「超難関サプライチェーン」の基盤をつくっていきたいです。
(編集・取材:田村朋美、文:田中瑠子、写真:岡村大輔、イラスト:星野美緒)