[東京 9日 ロイター] - トヨタ自動車<7203.T>の豊田章男社長は9日の会見で、2018年3月期(前期)は「さらに新しい勝負ができる筋肉質な体質に変わる体制ができた」とし、19年3月期(今期)からは中国など伸びる市場には機動的に経営資源を投入する意向を明らかにした。

豊田社長は、前期実績について「たゆまぬ改善というトヨタらしさが表れ始めた決算」と総括した。同日発表した前期連結決算(米国会計基準)では、営業利益が前の期に比べ20%増の2兆3998億円だった。期初には減益を想定していたが、原価低減が奏功して四半期ごとに上方修正を重ね、増益で着地した。

豊田社長はこれまで為替の逆風を受ける中、収益力を高める体質改善を進めてきた。社長就任以降の8年間を振り返り、「最初の4年間の『ダイエット』は単に体重が下がっただけで、筋肉になっていない脂肪が残っただけだったのではないか」と分析。一方、次の4年間を経た前期の経営状況については「さらに新しい勝負ができる筋肉質な体質に変わる体制ができた」と述べた。

同社はこれまでは販売台数の急拡大を志向するよりも持続的な成長を求め、年輪のように収益を重ねる「年輪経営」にこだわってきた。しかし、同社長は「中国をはじめ、私のこだわりよりももっと急激に伸びている市場があることを今は重要視している」とも語り、8年間で培った体力で「伸びる市場には伸びるなりのタイミングでリソーセス(経営資源)を投入し、市場(の成長)に遅れないようにシフトを変えていきたい」と話した。

さらには「トヨタの真骨頂はトヨタ生産方式(TPS)と原価低減」だが、事務職を中心にまだ深く理解されていないとしてTPSと原価低減を一段と徹底する意向を示し、「これからが本当にトヨタらしさを取り戻す戦いになっていく」と強調した。

トヨタは今回の会見に報道機関だけでなく、一部の投資家も招待し、保険・金融機関トップらが出席した。東京海上ホールディングス<8766.T>の永野毅社長が株主の立場で「これからトヨタの文化の何を守り、何を変えないといけないのか」と質問する場面もあった。これに対して豊田社長は、自動車産業が100年に1度の大変革期にある中、「過去の成功体験がものすごく抵抗している」とし、「企業文化を変えていくことは大変で、悩みに悩んでいる」と答えた。

豊田社長は冒頭のスピーチでは、「自動車をつくる会社から『モビリティ・カンパニー』にフルモデルチェンジすることを決断した」と語った。「モビリティ・カンパニー」とは移動に関わるあらゆるサービスを提供する会社で、「従来の延長線上にある成り行きの未来と決別し、自分たちの手で切り拓く未来を選択した」ことを意味すると話した。

(白木真紀)