【水野祐】柔軟性なき「日本の法律」をクリエイティブに使う方法

2018/5/13

経営層は法務を上手く使いこなせ

今年の1月から3月まで経済産業省において、「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」という委員会が開催され、私も委員の1人として議論を重ねてきて、その報告書が先日公開されました。
報告書の内容は多岐にわたりますが、この報告書の要点は「法を含むルールメイキングによる新市場創出の重要性と、そのような経営戦略において経営層は法務をもっと上手に使いこなすべき」という点にあると思っています。
これまで法務は企業において、リスクを犯さないためのブレーキ役や最後の砦として守りの機能が重視されてきました。報告書ではこの機能を「ガーディアンとしての機能」という整理をしています。
そのような守りの法務機能の重要性については今後も変わりませんが、その一方で、これからの法務はもっとビジネスに寄り添ったパートナー、もっと言えば「共創者」にならなければいけないと私は思います。
「法制度がこうなっているから駄目だ」というだけでなく、「法制度がこうなっていても、こういう工夫をすれば乗り越えられる」という提案までを必ずしも法的対応だけに留まらず大局的な視点からアドバイスし、遂行していく能力が、今企業の法務関連部署に求められてきています。
実際、法務担当者は、ある事業を行うことで生じるリスクの計算はできますが、リスク回避のためにその事業をやらなかったことで生じる機会損失には目がいきづらい。
「法務はそれでいいんだ」という考えもあろうかと思いますが、これでは上記のような戦略法務を担当する人材としては足りません。
さきほど申し上げたそのサービスによって社会に提供できる新しい価値とビジョン、そしてやらなかった場合の機会損失を、そのサービスをやることで発生するリスクとフラットに天秤にかけて、事業部や経営層と議論できる法務人材はそこまで多くないという印象があります。