【激論】2人の異端編集長が考える、新しいメディアのカタチ

2018/5/13
「どちらが新時代の記者・編集者にとって魅力あるメディアか、公開トークバトルでもやりませんか?」
2018年4月。NewsPicks編集部は、オリジナルコンテンツを取材・執筆できる記者・編集者について、初めて公募を開始した。それに伴い、4月25日に開催されたNewsPicks × BUSINESS INSIDER JAPANの合同採用イベント「ジャーナリスト2.0」。
前回に続き、現場レポートをお届けする。
今回お送りするのは、対バン3本勝負の1本目、「編集長トークバトル」だ。
*前回記事
記者採用対決。強敵ビジネス・インサイダーを知る7つのルール

NP金泉の「お蔵入り事件」

大室Pro ということで、ここから第1セッションです。
本日、司会を務める大室です。普段は産業医をしています。NewsPicksさんには、プロピッカーとしてコメントを書いたりしています。
一方で、BUSINESS INSIDER JAPAN(BI)さんからは、よく取材を受けているんです。そういう両者との経緯もあって、のこのこついてきちゃいました。よろしくお願いします。
大室正志(おおむろ・まさし)産業医
医療法人社団同友会・産業保健部門 産業医。産業医科大学医学部医学科卒業。専門は産業医学実務。ジョンソン・エンド・ジョンソン統括産業医を経て現職。現在日系大手企業、約30社の産業医業務に従事 。NewsPicksでは第一期よりプロピッカーを務める
大室 さて、ここから先は、「NewsPicks 対 BI」の、高度なプロレスバトル。フリースタイルのタイマン勝負ですから、いろんな発言が予想されます。皆さん、すぐにツイートとかしないでくださいね。大丈夫ですか。
浜田 でもこれ、後でNewsPicksさんに載るんですよね?
大室 ……そうでした。でも、せっかくなので、ここは僕の部外者特権で、ちょっとビシビシ質問していこうかなと。
金泉さんは、「SPA!」の編集長時代に、「SPA!を黒字に転換した男」という記事がありましたね。
僕も読みましたが、SPA!の部数を激増させたかと思いきや、実は雑誌は微増。ネットや書籍など、SPA!というビジネスのポートフォリオを組み替えて、何とか黒字に持って行ったわけです。
同じように、自分のキャリアのポートフォリオを組み替えようと思い始めたのは、何年くらい前から。
BuzzFeedに履歴書を出したとか、そういうことはあるんですか?
金泉 ないです(笑)。
真面目に言うと、私自身は、ライブドアの前身である「オン・ザ・エッヂ」の頃から、ライブドアをずっと取材していました。
金泉俊輔(かないずみ・しゅんすけ)NewsPicks編集長
1996年、扶桑社入社。2001年からSPA!編集部。IT分野、投資関連、事件などを担当する。2008年より副編集長。ウェブメディア『日刊SPA!』『女子SPA!』『HARBOR BUSINESS Online』の創刊などを担当。2013年よりSPA!編集長。2018年4月より現職。
金泉 ライブドアショックのときに、私自身は堀江貴文さんと対立関係にあったフジサンケイグループに所属していたのですが、心情的にはライブドア派でした。
SPA!編集部は面白いのですが、フジサンケイブループは自分に合ってないと感じていて、いつか辞めようと思っていました。
大室 ライブドア事件のときの秘話は、話していいんですか。堀江さんの本がお蔵入りしたという事件。
金泉 そうですね。堀江さんの本を担当して作っていて、フジサンケイグループ傘下の扶桑社で出そうとしたら、ライブドア事件が起きて、出版中止。見本分、数百冊がお蔵入りしました。
浜田 出せなかったんだ。
金泉 ええ。タイトルは「嫌われ者」と書いて、「キラワレモン」と読む。「ホリエモン」にちなんで、堀江さんとこれは面白いねと出版の準備を進めていたんですよ。
大室 そしたら、自分が会社中から「嫌われ者」になっちゃった。
金泉 そういうことです(笑)。

BI浜田は「紙を見切った」か?

大室 一方で、浜田さん。朝日新聞という保守本流のメディアから、華麗なる転身ですね。ずばり「紙は見切った」ということでいいですか?
浜田 いやいや(笑)。私がいた「AERA」は40代が主力の読者で、金泉さんがいた「SPA!」も、読者層は似ているんですよね。
ちなみにSPA!とAERAは、同い年なんですよ。
浜田敬子(はまだ・けいこ)Business Insider Japan統括編集長
1989年、朝日新聞社入社。前橋支局、仙台支局、「週刊朝日」編集部を経て、99年から「AERA」編集部。2004年より副編集長。その後、編集長代理を経て、AERA初の女性編集長に就任。2017年4月よりBUSINESS INSIDER JAPAN統括編集長に就任。
金泉 ちょうど30年前の1988年に、同じタイミングで創刊しているんですよね。
浜田 そうそう。それで、40代の人はまだ紙を買ってくれるんですけど、やっぱり若い人たちにも読んでほしくて、何度も挑戦をしました。
ネタも30代の人たちが悩んでいるであろうテーマを特集したりと、本当にいろいろ試行錯誤したけれども、それでもなかなか難しかった。
読者に届ける手法としての「紙」というツールの限界を、AERAの編集長時代に、ものすごく感じていました。
大室 まあ、「紙は見切った」という話を、丁寧に説明したということですね。
浜田 見切ったというより、読者に届かない。金泉さん、そう感じませんでした?
金泉 そうですね。ただ、僕が移籍したのはむしろ、読者に届かないというより、何をやるにしても「コストが高すぎる」という理由です。
出版社には、コンテンツはものすごく豊富なんですよ。でも、これは新聞社も放送局もそうなんですけど、現場より上層部の人たちの、チェック機能とか、コストが高過ぎて、僕は見切りを付けました。
大室 見切っちゃった。そして、今年4月にNewsPicks編集長に就任しましたね。
金泉 正直、NewsPicksに来て思ったことは、「出版社を含め、既存メディアはやっぱり人材やコンテンツはリッチだな」「でも、NPだと意思決定も速くて、これもできるし、あれもできるじゃん」という気持ちが、すごくあった。
大室 でも、逆にネットメディアって、既存の出版社がやっていたような、絶対に怪我をしないような「校正・校閲機能」が弱い。かつてNewsPicksに寄稿したら、まるっと一節、抜けていたことがありました。
金泉 徐々に校正機能は改善してきていますね。「走りながら考える」という言葉がありますが、NewsPicksは、本当に文字通り、みんな走りながら考えているんですよね。
大室 ずっと走っていますよね。
金泉 僕は8年前から「日刊SPA!」というオンラインメディアの運営をしていたので、配信型メディアのスピード感も、まあまあ備わっているほうなんです。それでも、NewsPicksの意思決定の速さと、記事が外に出るスピードは、すごいと感じますね。
浜田 速いですよね。月曜発売のAERAだと、月曜にホットなことが起きても、1週間待たないといけない。今でいうと、財務省のセクハラ問題とか、局面が日々変わっていくわけですよ。
紙の頃は、そういうテーマに対応ができなくて、悔しくなかったですか?
金泉 いやあ、もう本当に悔しかった。

BIは、課金を目指すのか?

大室 NewsPicksは、ご存じのように課金制ですね。月に1,500円。
金泉 そうですね。
大室 広告もあるんですけど、課金で行くというのは明快で分かりやすい。一方で、BIは?
浜田 今は無料です。
大室 無料。今後は、どういう展開を考えているんですか?
浜田 やっぱり、広告だけに頼っているのは、非常に不安定ではあります。もちろん、広告収入も欲しいんですけど。
ただ、例えば東洋経済オンラインさんのように、圧倒的なガリバーのようなPV(ページビュー)があれば、広告だけでもやっていけるんだろうな、と。
でも、われわれは後発なので、これから規模を追うのは難しいと思います。
浜田 それに、そもそもメディアの価値とは何なのか。規模が価値なのかな、という疑問も感じていて。NewsPicksも同じだと思いますけど、どういう読者がいるか、どういう読者に支えられているかが価値だと思っているんですね。
デジタルメディアの中で、コンテンツを全て無料だけでずっとやると考えているところは、いないと思います。
やっぱり「タダ・ネイティブ」はよくなくて、情報には価値があると思っているし、ずっと良質なコンテンツを作っていきたいので、コンテンツにはお金を払ってほしいという立場です。
ただし、立ち上げたばかりのメディアが、いきなり有料というのは、非常にハードルが高い。それに、私たちは基本的に、ニュースは無料で幅広く読んでほしいと思っているので、今後、課金をやるなら、別の新しい軸を作っていきたい。
そういう意味では、そんなに規模は追わないけれども、支えてくれる読者の人たちと、何かをやることに価値を付けていこうかなと。
ちょっと今、考えていることがあるんですが、まだ言えないんです。今年の秋ぐらいから、新しいことをやろうと思っています。
NewsPicksさんの真似をするわけではありませんが、一連の仮想通貨の連載を書籍化するのも1つです。やっぱり、NewsPicksのビジネスモデルは、すごく参考にはしています。
金泉 書籍化は、その一歩ですよね。
浜田 そうですね。紙をやっているときにも、同じことを考えていました。つまり、広告や販売以外で、いかに収益のポートフォリオを組むか。それは、ネットメディアも同じですよね。
金泉 ええ。全く同じだと思います。

NPは「六本木に魂を売った」?

大室 逆に課金メディアのNewsPicksさんは、今、拡大路線のように見えますが。
浜田 NewsPicksさん、超バブルだなと思うんですよ。
大室 そもそも、恵比寿から、ここ六本木に、移転しますからね。
金泉 まあ、そうですね(笑)。
浜田 私たちの中では、「とうとう渋谷区の人たちじゃなくなったんだ」「六本木に、魂売ったな」と思いましたよ。
大室 きた、ジャブが入りましたよ。
浜田 東京には、「東海岸文化」と「西海岸文化」があると思うんです。東海岸がエスタブリッシュメントであり、西海岸がスタートアップ。
NewsPicksさんも西側にいたのに、なんで六本木に移ったんですか?
金泉 そもそもうちの佐々木(紀彦)CCOが、「西海岸」「東海岸」という表現を使い始めたんでしたっけ。
浜田 いやいや、AERAが先です!
金泉 あ、そうでしたか(笑)。AERAが先だそうです。
浜田 ちなみに西海岸は、ズボンの丈が短い。ヒゲを生やしている率が高い。Mac率も高い。
金泉 私はズボンは短めです。
本拠地というのは非常に大事だと思いますが、要は、真ん中を取ったんですね。西側のスタートアップに始まり、東側のエスタブリッシュも攻めていく。そして、西も、東も取ったのが、六本木だと。
浜田 エスタブリッシュなゴールドマンサックスもあるし、スタートアップのメルカリもあると。
金泉 そういうことです。でも、Googleが、六本木から渋谷に行っちゃったので、ちょっと寂しいですけどね。
浜田 そうですね。渋谷は今、改めて熱い。
金泉 どんどん熱くなっていますね。
大室 要するに、Yシャツとか、ジャケットじゃない西海岸と、いわゆるスーツ族の東海岸。六本木はその中間で、「Tシャツにジャケットくらいの世界」ということで。
金泉編集長の今日の服装がまさにそれですが、NewsPicksは、どちらかというとやはり西寄りですよね。

「女性読者層の厚さ」はBI勝利

大室 ちなみに浜田さんは、NewsPicksの第1期のプロピッカーでしたよね。
浜田 そうなんです。
大室 そこでお聞きしたいのですが、NewsPicksって「進学校の男子校の部室」みたいな空気があるじゃないですか。
そこに、女性プロピッカーとして中に入ってみて、どうでしたか。
浜田 女子として、ものが言いにくいのは確か。
今はだいぶ、女子ピッカーも増えましたけど、最初の頃は、ちょっとジェンダーっぽいコメントを書くと、袋叩きに遭う、みたいな感じでした。
昨今のセクハラ問題とか、正直コメントしづらい。
金泉 「実名2ちゃんねる」みたいになっちゃうときがありますよね。
浜田 NewsPicksを作っている人たちは、みんなすごくリベラルなのに。
大室 あの男子校な雰囲気は、今後、どうしていこうと思っているんですか? もっと、より「男塾」みたいな路線でいくんですか。
金泉 前回、BIさんが「多様性」の話を挙げていましたけど、僕も何とか、NewsPicksを「男子校」から「共学校」にしたいという気持ちは強いですね。
浜田 今、うちは女性読者が3割。経済メディアとしては、高いですよ。
金泉 それは確かにすごい。うちは、女性読者は2割弱。やっぱり少ない。
浜田 でも、AERA時代には、実はそんなNewsPicksにとてもお世話になっていて、収益源の1つにさせてもらっている時期もありました。
金泉 コラボ特集とか、やっていましたよね。
浜田 同じテーマで特集をして一緒に取材をしたり、コンテンツを買ってもらったりもしていたんですよ。
当時、Yahoo!ともコラボしていたんです。AERAのコンテンツがデジタル上に乗れば、爆発的に読まれるということも感じていました。
そういう意味でも、やっぱり紙だけでは、もう存在感が出せないということを感じました。ネットに出ていかないと、コンテンツ自体が世の中に「流通しない」。それは痛感しましたよね。

日経新聞は「敵」なのか?

大室 経済系のメディアをやっている以上、これは聞かなきゃいけないのは、「日本経済新聞」の存在ですね。
もはや日経新聞は、気にしていないんですか?
浜田 いやいや、していますよ。
大室 日経って、完全にガリバーですよね。日経とは、戦おうとしているのかどうか。
浜田 戦わないです。でも、日経に書かれたのとは違う目線で書くという意味で、日経はすごく見ています。
大室 ある種のベンチマークとして。
浜田 そうです。
大室 NewsPicksはどうですか?
金泉 規模感でいえば、日経のようにオセロの全てを埋めていくことは目指していないけれど、角を取っていく戦略というイメージですね。
ただ、そもそも、日経とはニーズが違うと思います。
金泉 たとえばNewsPicksは今、学生には学割を提供しています。10代〜20代の、これからニュースに触れていく人たちに向けた、経済情報のキュレーションサービスとしての機能もある。
日経新聞とは違う、新しい形の経済メディアを目指そうという考え方です。
浜田 悩みとしては、日経と同じように専門性の高い記者が、うちにも多いんですが、専門性が高ければ高いほど、記事が難しくなっちゃうんですよ。
金泉さん、その辺はどうですか。NewsPicksにも、手練の経済記者がいっぱいいるでしょう。
金泉 そうですね。今後、ニュースを「分かりやすく」「もっと面白く」伝えるということにも、より注力していこうかなと思っています。
*NewsPicksニュース関連記事
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金泉 実際、コンテンツを見ていただくと分かるんですけども、「スライドストーリー」といった新たな表現に、より注力しているんです。
大室 旧来型の社会人には、「日経ぐらい読んでおけ」という価値観がありますよね。
要するに、分からない単語があったら、「分からないやつがバカなんだ」という考え方。でも、今日は「ジャーナリスト2.0」と言っていますけども、2.0の時代は、そういうマウンティングは、もうやめておこうと。

読み方を「読者が選ぶ」時代

浜田 どういう形でニュースを読むかは、読者が選ぶ時代だなと思っているんですよ。BIに来て、より一層、そう感じましたね。
AERAの場合は、AERAというパッケージがまずあって、読者はAERAが好きで、わざわざお店に買いにいく。だから、読者がより能動的に手に取っている。
NewsPicksさんはそれに近くて、自社のプラットフォーム上で、特集という「パッケージ型」で記事を売っていますよね。
ところがBIは、他社プラットフォームにも拡散していく「分散型」のメディアです。
つまり、記事を一度出してしまってからは、読者がどういうツールで、どういうシチュエーションで、何と組み合わせて読んでいるか、われわれにはもう分からないわけです。
浜田 今、「朝カフェ」と言って読者と一緒に朝ごはんを食べているんです。そのときに、何のツールで、どう読んでいるかを聞くんですが、とにかくみんなバラバラ。
NewsPicks上で読んでいる人もいれば、Twitterの人もいるし、Facebook経由の人もいる。そこが、逆に面白いと思っています。
雑誌の場合は、「パッケージの妙」で売っていましたよね。この企画をパッケージして、このラインナップだから面白いでしょ、というのが編集者の腕の見せ所だった。
金泉 そうですね。
浜田 ところが、それが通用しない。記事の一本一本が、際立っていないと、商品になっていないと、売れない。それをすごく感じたんです。
金泉 NewsPicksの場合も、ユーザーの滞在時間を見ていると、確かに、記事1本1本が商品として成立していないといけないという現状が見えてくる。
ただNewsPicksの面白さは、週刊誌のように、「看板特集」が7日間続くこと。しかも、特集をパッケージしてアーカイブした「ライブラリ」という機能があって、それを電子書籍のように読めるようになっています。
つまり、ちゃんと「月〜日」で特集全体を読んでくれる人もいるし、ある記事を読んで、同じ特集の別記事を見る人もいる。
これは実は、単発の「記事」ではなく、パッケージの「特集」を作っていたときの紙のノウハウが生きるし、その面白さがある。そこは魅力的で、僕がずっと分散型の「日刊SPA!」をやっていたときに、NewsPicksが羨ましかったことでもあるんです。
浜田 私も最初、BIに入った時、AERAのパッケージ化の手法が生かせないなと悔しかった。例えば、連載をやっても、連載として読んでもらえない。10回までやっても、1回目と10回目が、それぞれバラバラに読まれてしまう。
私の得意なところが生かせないと思って、もうNewsPicksに行こうかなと(笑)。
金泉 浜田さん、是非。
浜田 NewsPicksの特集を見て、「私だったら、こうやるな」とか、特集ラインナップを考えることもありました。
だけど今は、自分たちの想像を超えて分散していく方が、面白さを味わっています。

紙よりウェブが「クレームの対象」

金泉 それにしても、本当に、紙とウェブの影響力が逆転しましたね。
僕が8年前に、オンラインの日刊SPA!を始めたときは、まだウェブで書くより、紙で書いたときのほうがクレームや「内容証明」が届いていました。ところが、今はそれが逆転していますから。
浜田 Webで書いたほうが、クレームがくる。
金泉 Webのほうが、反響があるということですよね。
大室 ちなみにSPA!時代は、何件ぐらい訴訟を抱えていたんですか。
金泉 年に1本くらいですかね。内容証明だけなら、多いときは月に何本か。波があるんですよ、春先はちょっとみんな怒りやすくなるので多い、とか。
浜田 AERAも、内容証明は半年に1本、それ未満の抗議は月1くらい。
金泉 「週刊文春」とか、「週刊新潮」の話を聞くと、頭が下がりますよね。
浜田 文春ほどのことをやるには、今のうちの体力、体制では難しい。
朝日新聞なら、出版専門のコンプライアンス担当や、法務や広報もいるから、何かあったときのサポート、対応が手厚い。これをウェブメディアでやるとなると、なかなか難しい。
だから、誰かと本気で「ケンカ」する記事を出すには、相当な覚悟が必要です。
金泉 ただNewsPicksは、法務的なトラブルは意外と少ないんですよ。
浜田 でも、取材先からは、いろいろクレームもくるでしょう?
金泉 取材先からは、きますね。
浜田 「それは書かないで」とか。
金泉 ただそれは、対応している記者の個々のスキルが非常に高いので、担当ベースで解決しているというのが、僕の実感ですね。
浜田 うちもたまにクレームが来たりするんですが、逆に、ちゃんと読まれれているという実感も得られて、ちょっと嬉しい(笑)。
金泉 どんだけポジティブなんですか。

BIとNPが、ズバリ「欲しい人材」

大室 改めて、今回の対談テーマは「ジャーナリスト2.0」です。お二人は編集長ですから是非お聞きしたいんですが、これからどんな記者・編集者を採用していきたいですか。
浜田 やっぱり、「スピードに乗れる人」。
やってみようというときに、一瞬止まっちゃう人だと、ちょっとスピード感についていけないかもしれない。あとは、「変化をポジティブに楽しめる人」。
大室 とりあえず、やっちゃえと。NewsPicksはどうですか?
金泉 「ひらめきと勇気のある越境者」。と、僕は思っています。
金泉 記者や編集者の人って、あるジャンルに入って、そのジャンルを深掘りするし、そこに注力する我慢強さがあると思う。
でも、NewsPicksで記者をやる人というのは、自分の専門ジャンルと、そうじゃないジャンルを、面白がって越えられる人だと思うんですよ。
縦割りではなく「越境者」として、ボーダーをクロスして越えられる人。これが求められているかなと。
今、トヨタですら「脱・車会社」ですよね、言っていることが。で、ライバルはGoogleやAppleだって、あのトヨタが言っているわけです。
そんな時代に、既存メディアは、クロスボーダーできていない、だからタコ壺化しちゃう。そうした一線を面白がって越えられる「勇気」がある人。そして、「ひらめき」も絶対必要です。そういう人に、来てほしいなと思いますね。
浜田 うちも緩く担当を決めてはいるんですけど、「自分が書きたい」「面白い」と言ったもん勝ちですね。みんな、ゆるい担当の領域を越えて取材していますね。
浜田 もう1つ、これもBIにきて新しいなと思ったのは、組織がフラットなこと。
新聞社って、すごくヒエラルキーがきちっとした組織ですよね。編集長がいて、副編がいて、記者がいる。
でも、例えばうちの新人記者は、私にもため口です(笑)。
大室 次の「新人記者」対バンで出てくる、西山里緒さんですね。
浜田 そう。私よりも彼女のほうがテクノロジーに詳しいし、彼女はまさにミレニアルなので、読者の感覚に近い。
議論のときは、とにかくフラット。そこがやっぱり違っていて、魅力ですよね。
金泉 それは確かにそうですね。
大室 では、そんな「新人対決」に、そろそろ行きましょうか。
浜田 ということで、里緒ちゃん頑張ってね。
*明日の「NewsPicks ✕ BUSINESS INSIDER JAPAN」新人記者トークバトルに続きます。
(執筆:池田光史、撮影:加藤昌人)