インドネシア:中銀が「米中貿易戦争」に警戒
定例の金融政策決定会合を開催したインドネシア中銀は4月19日、7ヶ月連続で政策金利を4.25%に据え置いた。預金金利3.50%、貸出金利5.00%も現状維持とした。
同中銀は会合後の声明文において、マクロ経済、金融システムの安定性を維持し、高まりつつある対外的なプレッシャーに対して、現状の金利水準は適切との認識を示した。前回の声明文と比較すると、「対外的プレッシャー」という、一歩踏み込んだ表現を用いたことが注目される。対外プレッシャーとして具体的には、原油価格の上昇と「米中貿易戦争」が上げられた。
米国が中国に対する関税引き上げ措置とそれに対する中国による報復措置を行うという自体になれば、世界貿易の縮小しかねず、インドネシアの国内景気にもネガティブな影響を与えかねない。インドネシアにとって、中国は1位、米国は2位の貿易相手国でもあり、輸出総額の4分の1近くを占める。中銀が「米中貿易戦争」という強い表現を使った背景には、こうした事情があると解釈できるだろう。
なお、原油価格の上昇は資源輸出の多いインドネシアにとってプラスに寄与する部分がある一方、資源輸入国であるほか、国内産業のサプライチェーンがまだ不十分のため、中間財輸入も多く、輸入インフレの誘発を起こしかねないというマイナス面もある。
4月30日に発表された直接投資統計によると、1-3月期の海外からの直接投資(FDI)は185兆3,000億ルピア(約1兆4,600億円)となり、前年同期比+12.4%と順調な増加を示した。このうちFDIは108兆9,000億ルピアで同+12%、国内直接投資(DDI)は76兆4,000億ルピアで同+11%となった。直接投資が外資頼みにならず、DDIが堅調に増えている点は、経済の健全かつ安定した成長に寄与するだろう。なお、最も投資が多かった分野はFDIが住宅・工業団地・オフィスであり、DDIは建設だった。
このほか、景気動向を示唆する指標としては、3月の消費者信頼感は121.6と2月の122.5からほぼ横ばい、2月の小売売上高は前年同期比+1.5%と1月の同ー1.8%からはプラスに転じたものの、既にインドネシア小売協会が見解を示しているように厳しい状況が続いている。3月の自動車販売は、中国暦正月の長期休暇等が影響して10万1,674台と同-0.7%にとどまったが、1-3月は29万1,920台と同+3%と僅かだが前年比でプラスの伸びとなった。

タイ:景気改善続くも、高い家計債務比率に注意
景気動向に関する指標として、3月の企業景況感は53.3となり、2013年6月以降で最高値となり、11ヶ月連続で「改善」を意味する50以上の水準を維持した。また、3月の消費者信頼感指数は79.9と2月から0.6ポイント上昇した。3月の現況指数は127.7となり、2月の128.1からはほぼ横ばいだった。タイの景況感は、企業マインドが先行して改善するなか、消費者マインドは遅れて回復する傾向が継続していると言える。
3月の自動車販売台数は9万5,062台となり、前年同期比+12.1%の伸びを示して好調だった。
他方、タイ中銀は2017年10-12月期の家計債務の対GDPが77.5%となり、同年7-9月期から0.2%ポイント上昇したと発表した。2015年10-12月期の80.8%をピークとして減少が続いていたが、今回は2年ぶりの上昇に転じた。タイの家計債務比率は、アジア大洋州地域で5番目に多く、ASEANでは2番目、世界で13番目に高く、タイのマクロ経済の弱点である。新興国において景気が改善傾向にある局面では、給与の増加を見込んで家計の借入が増えることは、一般的な傾向である。他方、借入は変動金利で行われるため、なんらかの理由で金利が大幅に引き上げられると家計に大きなダメージが生じる。
現状では、タイで短期間で大幅な利上げが実施されるリスクは低い。ただ、長期的にみると、仮に経済危機が起こり、インフレが急加速したり、大幅な資金流失やバーツ安が生じれば、利上げをせざるを得ない状況に直面するリスクは念頭に入れておくべきであろう。


マレーシア:総選挙日程が発表
マレーシアでは5月9日に総選挙が実施されることが決定した。争点は与野党逆転が生じるかどうかである。
マレーシアでは、1957年にマレー半島部がマラヤとして独立して以降、13回の総選挙が行われているが、一貫して、複数政党で構成される与党連合の国民戦線(National Front/Barisan Nasional)が下院議席の7〜8割前後を獲得して政権を運営している。他方、2008年と2013年の総選挙では野党が勢いを増し、与党の議席は下院の6割程度まで減少し、野党が約4割を獲得して躍進している。
今回の総選挙の特徴は、マハティール元首相、ムヒディン前副首相らがナジブ現政権を批判して野党側に参加していることである。ナジブ首相は、政府系投資会社1MDBをめぐる不正乱脈融資疑惑がある。同首相自身は潔白を主張し、マレーシア国内での捜査は終了したことになっているが、野党やNGOは不透明だとして徹底追求の姿勢をとっている。国内世論としても、1MDB問題への不満は高い。
他方、野党は有力政党のマレーシア・イスラム党(PAS)で急進派と穏健派の間で路線対立が発生し、穏健派がAmanahという新政党を設立して分裂している。マハティールらが設立した新党マレーシア統一プリブミ党の選挙基盤はまだ整っていない。加えて、野党の求心力となってきたアンワール元副首相は、2015年に確定した異常性行為罪で服役中である。つまり、野党にはまとまりがなく、政権打倒の決定打を欠いている。
与党は豊富な資金力と全国に張り巡らせた選挙基盤を維持している。国民からの不信感が高まっているものの、依然として高齢者や農村部、地方都市では安定した支持を得ている。
勝敗について、与党優勢という見方が多いものの、野党が勝利しても不思議ではない情勢である。与党が勝利する場合は経済政策に大きな変更は予想されない。
野党が勝利する場合でも、根本的な経済政策が変更されることは想定し難いが、これまでに与党の不透明さを追求してきたこともあり、ナジブ政権が決定してきたメガプロジェクトの再検証が行われ、進捗に影響がでる可能性はありうるだろう。
経済指標では、2月の小売売上高が前年同月比+9.2%と発表され、好調な伸びが継続した。
フィリピン:鉱工業生産が好調
3月のインフレ率は前年同月比+4.3%、コアインフレ率は同+4.7%となり、どちらも2017年12月から3ヶ月連続で加速した。好景気かつ原油価格の上昇を反映している。+6%を超える経済成長が継続していることを考慮すると、まだ懸念する水準ではない。
供給サイドをみると、2月の鉱工業生産は前年同月比+23.6%と高い伸びを示した。ドゥテルテ政権が協力に推進するインフラ建設プロジェクトや、高成長に伴いフィリピンの国内市場を狙いとした内資・外資企業の生産が拡大しているとみられる。
ベトナム:外国人観光客は7ヶ月連続で100万超え
4月下旬に同月の主要なマクロ経済指標が発表された。
4月の外国人観光客数は134万人と過去第4位の水準となり、7ヶ月連続で100万人を超え、伸び率では前年同月比+25.2%と高い伸びを示した。足元で好調な背景は、2月の中国暦正月、4月のタイの水掛祭り(ソンクラーン)と周辺国の休暇シーズンの影響が考えられる。今後も高水準が維持できるかを注目すべきだろう。
4月の小売売上高は前年同月比+9.5%と好調な水準が継続し、4月の貿易収支は+7億ドルと4ヶ月連続で黒字が続いた。インフレ率は前年同月比+2.8%と3月の同+2.7%と若干加速したが、低水準で落ち着いている。