“100年後の世界を良くする会社を増やす”というミッションを掲げ、中堅・ベンチャー企業への支援を続ける株式会社リブ・コンサルティングに、外資系戦略ファームで20年の経験を重ねてきたコンサルタントが合流した。業界の隅々を知り尽くした重鎮が、新進気鋭のコンサルティング会社で一体、何をしようとしているのか。同社戦略グループのパートナー&マネージングディレクターである佐藤 勇樹氏に話を伺った。

“コンサルティングのビジネス化”を危惧

――外資系戦略系ファームからリブ・コンサルティングへと転身された佐藤さんですが、“100年後の世界を良くする会社を増やす”というミッションを初めて耳にしたとき、どのような感想を持ちましたか。
“100年後の世界を良くするインパクト・カンパニーを増やしたい”というミッションは、あらゆるコンサルタントが、ごく当たり前に持つべき共通認識です。私たちは遺伝子をつなぐために生まれてきているにも拘わらず、自分の世を全うするためだけに生きている人が増えているのか、それをあえて言語化しなければならない時代になっていることに危惧を覚えました。
その背景には、恐らく“コンサルティングのビジネス化”という事実があり、現在、多くのコンサルティング会社が“高級人材派遣業”と化しているという現状があります。ご存知のように、人材派遣とITを収益源とするコンサルティング会社が著しく成長を遂げました。
コンサルティング会社の経営陣にとっては、羨ましい話ではありますが、私自身、そうはなりたくない、そうあってはならないという思いを抱き続けてきました。なぜなら、私は少なくとも、お金のためだけにコンサルティングを生業としてきたわけではありませんから。
佐藤 勇樹 株式会社リブ・コンサルティング 戦略グループ パートナー&マネージングディレクター
株式会社リクルートにて17年勤務した後の1998年にA.T. カーニー株式会社に入社。金融業界、IT業界を中心に、戦略コンサルティングを展開。2002年にはパートナーに就任し、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers)Member、ITコーディネータ協会運営委員、経営情報学会会員、産業構造審議会人材育成カリキュラム策定委員などを歴任する。2017年、リブ・コンサルティングにパートナーとして参画。戦略グループの創立メンバーとして、企業の将来価値の創造に注力する。
私が20年間にわたって在籍してきた前職は、業界全体を変容できる可能性がある企業を中心にコンサルティングを実施する会社でした。そこで私は大企業や業界そのものにインパクトを与え、徹底的に正しいメッセージを投げ続けていれば、世の中は変わるものと信じてやってきました。
ところが、一向に世の中は変わらないのです。大企業はすでに成功した企業であって、いわば“既得権益者”なのですね。当然のことながら、大きな力を持っている企業が、それを手放してまで変わろうとはしません。当時、私は金融業界に特化したコンサルティングを実施していましたから、銀行が変わり、お金の流れが変われば、社会の動きも変わるだろうと思っていたのですが、むしろ彼らは変わるより、変わらない努力をしたほうが良いと考え、“変わらないでいられることの手伝い”ばかりが求められました。
だからといって、そういった現状に失望して辞めたわけではありません。私自身があまりにもそこに“長くいすぎてしまった”という、ある種の後ろめたさのようなものがありました。戦略ファームのパートナーとして、これほど長く一つの組織に在籍し続けるケースは世界的に見ても大変珍しかったのです。組織の中に君臨し続けていると、コンサルタントが、クライアントではなくパートナーの顔色をうかがいながら仕事をするようになってしまいます。それはあってはならないことですから、なるべく早く次世代にシフトしなければならないと考えました。

経験と知識のダウンロード先として選んだ理由

――次の職場にリブ・コンサルティングを選んだ理由は、どのようなものだったのでしょうか。
どうなるにせよ、次の職場で自分が成功したいとは、一切考えてはいませんでした。ザッカーバーグの例を挙げるまでもなく、すでに20代あるいはそれよりも若い人が世の中を進化させる時代に入ってきました。自分の未来を作りたいという若い人たちに、自分の経験と知恵をダウンロードしたいと思っていました。そこから新たな価値を生み出せるかもしれないという期待があったのです。それは想像を超えるものになるに違いないと。どこにダウンロードすべきかを考えていた時期に、関社長とお会いして意気投合しました。
話を聞くと、中堅・ベンチャー企業のコンサルティングをやっているといいます。そこは、これまで大企業や金融機関ばかりを見てきた自分の想像がつかない領域でした。これまでの20年の間に、それなりに社会に対して何らかの影響を与えてきたつもりでしたが、この自分の問題意識や考え方をどこに伝えていったらいいか考えたときに、自分一人ではたどり着くことができない“月の裏側”のような場所に連れて行ってもらえるような気がしました。
また、関社長をはじめとする経営陣の意欲も強く感じられました。普通だったら、私のような年齢のコンサルタントの考えよりも、自分たちの考えが正しいと言い切ってしまうような、鼻息の荒い世代のメンバーなのに、“使えるものだったらなんでも使ってしまおう”くらいの勢いで、私からどんどん盗み取りたいという姿勢が感じられました。
ありがたい話で、他にもいくつかのお誘いがあったのですが、関社長は、“前職の成功を再現してほしい”なんて要望を持ち出さなかったのです。「当時の影響力を駆使してほしい」とか、「もうひとつ儲かるチームを作ってほしい」というリクエストも一切ありませんでした。ダウンロードしたいと考えていた私と、何でも吸収してやろうという学習意欲が高い関社長の思惑が完全に合致したのです。
――実際に合流してみて、どのような印象を持たれましたか。
リブ・コンサルティングに合流して、すぐに感じたのは、独自のビジネスモデルを持っているということです。例えば、一般的な外資系戦略コンサルティング会社は、ドライに、手段を選ぶことなく最短距離でゴールに到達するスマートさを持っていますが、リブ・コンサルティングの場合、お客様が現状、抱えていらっしゃる人、金、地域、サービスをすべて大事にして、それらに寄り添いながら一緒に走るというスタイルでコンサルを実施しています。そこは大きな違いですね。
そして、何よりもユニークなのが、寄り添いながら走れるタイプのコンサルタントを育成する仕組みを持っているということです。そして“戦力化”した後、お客様に価値貢献し続ける仕組みも持っています。もちろん、教育システムや評価制度などが整っているという理由もありますが、メンバー全員が他のメンバー全員に注目しているというカルチャーの影響が大きいように感じています。それは前職ではなかった感覚です。
誰がいつ、どんなことをやっているのかが全員で見ることができるし、それについて「自分は何かできるか?」「あれは良い施策だった」「あれってまずいよね」と意見しあったり、何か問題があったらすぐにカバーできる仕組みができています。
お客様とともにコンサルタント自身が成長できる環境にある点も魅力的に映りました。入社2年目にはプロジェクトリーダーとなって、お客様のアカウントを持ち、中堅企業のオーナーと対峙しながら、プロダクトやソリューションを提供し、そしてきちんとゴールまで伴走します。まるでパートナーに近い役割が与えられています。それらの経験を通じて、お客様が何に困っているかを傾聴する力や共感力が高まっていきます。
大手の戦略ファームの特徴でもある、“考えのスマートさ”や“問題整理のエレガントさ”では勝負していません。なぜならリブ・コンサルティングのお客様である中堅企業のオーナーは、単なる“カッコよさ”にお金は払いません。欲しいのは成果であって、決してエレガントなペーパーではないのです。
寄り添いながら成果を出していくスタイルは、リブ・コンサルティングの最大の特徴であり、強みでもあります。しかし、それだけでは不十分だと思います。だから私がここに来ているのだと自覚しています。現在の事業を成功に導く、すなわちお客様の現在価値を生み出しているのが今のリブ・コンサルティングであり、今後加えていくべきは将来価値の創造です。
現在、私は戦略チームのパートナーとして、いくつかのプロジェクトを進めながら、そういったメッセージを発信し続けています。その会社だけを伸ばすことだけを考えるのではなく、そこに産業、社会、時代という目線を入れて、新規事業への参入、異業種への転換、あるいはM&Aなど、非連続な提案を実施しながら、その可能性を広げていく必要があります。
盲目的に勝たせるだけでは、逆にその会社の将来価値を下げることになるかもしれません。リブ・コンサルティングと一緒に歩んだから、業界が正しい方向に行って、その産業が大きくなって、そこにいるお客様も幸せになるサイクルを作るための準備を進めています。
私のメッセージと、従来のリブ・コンサルティングのスタイルが組み合わさった結果として、未知のケミカルアクションが生まれることに期待していますし、とにかく変化を与え続けたいと思っています。
多くのお客様の将来価値を拡大し続けていけば、間違いなくリブ・コンサルティング自身が創出したいと考えている“100年後も輝き続ける企業”がひとつでも多く存在する、“明るい未来を作る”ビジョンをより現実的なものにできるかと思っています。

“本当のコンサルタントって何?”と問う

――これまでは大手企業を相手にしてこられたかと思いますが、クライアントの規模の大小による違いを感じることはありませんか。
それは、確かにあります。まず出発点が違います。大手であれば、まず“新規事業の立ち上げ“とか、“どうやったらこの事業を成長させることができるか?”という“お題”から始まります。一方の中堅企業は、もっと漠然とした不安の共感からスタートするので、どうしても議論の展開が違ってきます。
もちろん、目指すゴールも大きく違います。大手はプランニングが目的であって、実現がゴールではありません。「実際のアクションは次の部長が…」なんて話は往々にしてあります。ところがリブ・コンサルティングにはオーナーの切実な悲鳴があがってくるので、リアリティと本気度がまったく違います。目の前の相談者の人生まで背負ったコンサルティングとなりますから、相手も前のめりに来ます、当然、こちらも前のめりになります。このやりがいや仕事の醍醐味は、大手企業相手のコンサルティングではなかなか味わえない貴重な体験であり、コンサルタントの成長機会だと思います。
――最後に、求職者へのメッセージをいただけますでしょうか。
本物のコンサルタントになりたければ、リブ・コンサルティングほどの近道はないと思っています。では、“本当のコンサルタントって何?”という話ですが、求職者の方が、どういうことを実現したいのか?どういう力を身に着けたいのかなどの、なりたいコンサルタント像をぜひ、私に聞かせていただければと思います。でも、ひとつだけ言えることは、皆さんがイメージする理想のコンサルタント像のすべてが、ここリブ・コンサルティングにあるのは間違いありません。
ステレオタイプのコンサルロボットを輩出するのではなく、性格や思い、志などのバリエーションがあってこそのダイバーシティだし、様々なケースや、未知なる世界に順応できると思います。ステレオタイプの社会を作ったところで、おそらくそれは持続しないでしょう。だからリブ・コンサルティングは人に寄り添いながら仕事をしているのです。それは、この会社が今、成長過程にあるからこそ可能な、稀有な体験なのかもしれません。
(インタビュー・文:伊藤秋廣[エーアイプロダクション]、写真:岡部敏明)