【森岡毅】USJを蘇らせた、数学マーケティングという「必勝法」

2018/5/5
日本のテーマパーク業界第2位のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)。その業績をV字回復させたマーケターとして知られているのが、森岡毅氏だ。
2010年にUSJを運営するユー・エス・ジェイに入社した森岡氏は、毎年入場料を値上げしながらも、年間800万人前後で停滞していた入場者数を、1460万人(2016年度)まで引き上げた実績を持つ。
なぜ、人々はUSJというテーマパークに吸い込まれるようになったのか。今回はその森岡氏に、マーケティングの「極意」を聞く。
「僕が言うのもおこがましいですが」と前置きしながらも明かしてくれた、森岡氏の「ディズニーをもっと伸ばすための戦略」も紹介しよう。
森岡毅(もりおか・つよし)株式会社刀 代表取締役CEO
1972年生まれ。1996年P&G入社。ヴィダルサスーンやパンテーン、ウエラなどのヘアケアブランドを手がけたのち、2010年にUSJ入社。2012年、同社CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)、執行役員、マーケティング本部長に就任。2017年、マーケティング精鋭集団「株式会社刀」を設立。

値下げで客数を増やすのは「敗北」

──テーマパークのマーケティングについて、まずは基本的な考え方を教えてください。
業界を問わず、マーケターの最重要任務は、「ブランドの強化」です。これがひいては「売上の最大化」につながるからです。
テーマパークの売上は「客数」✕「客単価」で決まります。
そのうち「客単価」は、主に「入場料」「パーク内の飲食費」「お土産代」の3つで決まります。
この「入場料」を高くしたら、「客数」は落ちる方向に動きます。逆に入場料を値下げすれば、客数が増えるのは当然です。しかし、値下げに手を出すのは、マーケターとしては「敗北」に等しいと思います。
一流のマーケターの仕事は、入場チケットの値上げと、客数のアップを両立させることです。消費者がブランドにより高い「価値」を感じていれば、「客単価」と「客数」の両方を伸ばすことは可能です。

ディズニーには取りづらい「作戦」

──USJの場合は、どんな作戦を取ったのですか。
私がいつも心がけているのは、「競合がなかなか真似できない戦略を取る」ということです。