【塩野×木村】上に立つ者が持つべき「嫌われる勇気」

2018/5/5

有名企業が社員に冷たくなっている

木村 先の改善型、改革型の話に戻ると、調整型のリーダーは基本的に改善局面に向いています。
ところが今後、調整では答えが見つからないケースがほとんどになると見られる中で、リーダーはどちらの方向に進むのかを自ら決めなければいけません。
塩野 極端な話をすると、企業再生を率いるリーダーや企業再生のために入ってきた経営者は、人員削減や部署の統廃合、事業売却を行うと、一時的にではあっても非常に恨まれます。
木村 だから僕も「部下におもねらないでください」とよく言っているのです。やはり人間は、他人に嫌われるのが嫌ですからね。
その意味で、企業再生を進める中で「部下たちに、ものすごくむかつくと思われるような人が出てきてもいいじゃないか」と開き直れるような「割り切り感」が重要になってきています。
塩野 時代はそういう方向に行っていますよね。最近、とても面白いなあと思うのですが、われわれが昔から知っているような日本の有名企業が、どんどん社員に冷たくなっていく一方で、ベンチャー企業のほうが家族的になっています。
実際、家族主義が日本型経営の大きな特徴だと言われていますが、大企業が最後まで社員一人ひとりの面倒を見てくれることはほとんどなくなりました。
「この人はできるから、次のチャレンジを与え、それをクリアしたらここに抜擢(ばってき)しよう」というキャリアプランが、早い段階から決まっているんです。
木村 でも、そこまで割り切っているのは、大きな会社でも割と一部の景気がいいところですよね。
むしろマジョリティを占めている、昔からある大きな会社は、終身雇用を始めとする日本的経営をいかに守るかという考え方と、そこからいかに変わらなければならないのかというはざまで揺れています。
そうした中で、変わり切れないままでいる会社のほうが多いような気がします。

人員削減は最高益のタイミングで