(Bloomberg) -- ミドリムシなど微細藻類の研究や製品開発を手掛けるユーグレナは、2025年に日本企業で初となるバイオジェット燃料の大型商用プラントの稼働を目指している。既に候補地の選定を始めており、国内のほか海外も視野に入れて絞り込みを進めている。

同社の永田暁彦取締役はインタビューで、微細藻類などを原料にジェット燃料を製造する実証プラントが10月末に横浜市鶴見区に完成する予定で、より規模の大きな商用プラントの建設に向け「土地探しやパートナー交渉を既に開始している」と語った。国内大手石油会社数社にも接触。現時点の候補地として「横浜市鶴見区、鹿島市、四日市市」の3カ所を挙げた。

最低でも日量2000バレルの製造能力を目指し、建設費は「さら地から作ると350億円程度。既存の石油プラントなどを転用すれば約180億円」と見積もる。国内で適した用地が見つからない場合、納入先として想定しているANAや日本航空の路線が充実していれば「ウルトラCとして海外の可能性もある」とした。

世界の航空業界の市場規模は年々拡大しており排出する二酸化炭素(CO2)の量も増えている。国際民間航空機関(ICAO)の16年総会では、日本を含む主要国の航空機のCO2排出量を20年の水準に維持することで合意した。CO2排出量抑制に向け、新型機導入や運航方式改善などに加えバイオジェット燃料の活用に期待がかかる。

エネルギー業界のテスラ

ユーグレナは20年に開催される東京五輪での官民共同のバイオジェット燃料導入の取り組みの一環として、年間売上高の約半分に相当する約58億円を投じ微細藻類や廃棄物などからバイオ燃料を生産する小型の実証プラント(製造能力は日量5バレル)を横浜市鶴見区に建設中。政府は、五輪期間中にユーグレナなど4つのメーカーが製造したバイオジェット燃料を航空機に使用することで、環境問題への取り組みを世界にアピールする計画だ。

永田取締役は、同社のようなベンチャー企業が当面利益を生まない設備にこれだけの資金を投入するのは「命懸け」と強調。ユーグレナはエネルギー業界で「テスラのような存在」との認識を示し、米電気自動車メーカーのテスラがリスクをとりながら電気自動車(EV)の分野に投資し、成熟業界で新しい取り組みに挑戦する姿を自社と重ねていると説明した。

永田取締役によると、この五輪プロジェクトは日本としては実用化の可能性を証明することが目的。その上で、25年の商用プラントの稼働で収益化を狙うとした。現時点での製造コストは非公開だが、商用プラントが稼働すれば製造コストは「1バレル当たり60ドルから80ドル」となり事業化が可能との見通しを示した。ジェット燃料が一部でも国内で製造・精製可能になると為替変動の影響が抑制されるため、航空会社の収益安定化に寄与するとみている。

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