新着Pick
88Picks
シェアする
pick
Pick に失敗しました

人気 Picker
何年も前から書いているが、EUの根本的な問題点は、金融だけ統合して財政を統合していないことであることは誰もが知っている。不均衡を是正する手段として為替の調整メカニズムを放棄した以上、あとは労働力の自由な移動による調整しかないわけだが、実際にはそれほどうまくいかないまま、今度は移民問題からどの国も国境を閉鎖的にしてしまった。そのため、南欧諸国の苦境は常に北部諸国(ドイツほか)からの実質的な財政支援によって救われる構図となり、様々な要求を突き付けられる南部諸国の国民からも、支援を続けさせられる北部諸国の国民からも不満が出ることになる。悪いことに、そのEUの実質的な大統領だったメルケル首相の支持が国内で揺らいでおり、EU存続の危機は全く解消されていない。そんな中、フランス経済の立て直し、EUの大改革を唱える若くて聡明なマクロンが支持を集めたことは理解できる。昨年夏から秋にかけて一時的に支持率が下落したが年末から急回復し、今は既得権益層のスト等とも戦っている状態だ。ドイツがEUへのコミットメントを若干弱めざるをえない中、現実的にはフランスがサポートしていかなければならないことは知識層はわかっており、女性からの人気もあり、既得権益層・労働者階級の反発(不支持)を相殺している形だろう。独仏の戦争への反省がEUの原点でもあり、独にかわって仏が頑張る時期なのではないかと思う。ただし、メルケル氏の今後の政治的立場の方が影響力が大きいことは言うまでもない。
昨年までポピュリスト政治家が存在感を増していたヨーロッパで、自由主義的な経済改革やEU改革を訴えてフランス大統領になったマクロンは、一部から「ヨーロッパの救世主」とまで呼ばれたほどでした。しかし最近は国内の支持も低下し、ぶち上げたEU改革案も行き詰まりつつあるとあって、厳しい時期を迎えています。
現在訪米中のマクロンはトランプ大統領との関係構築に努めることで国際舞台における求心力を高めようとしていると見られていますが、これも大きなギャンブルで、前途は厳しそうです。
「強い経済力」に「強い政治力」は宿るのであり、ドイツとの彼我の差が絶望的に大きくなった今、マクロンがメルケル抜きで出来ることは多くありません。なお、EUに関する批評は直ぐに「財政統合が進んでいない」というクラシカルな論調が出てきますが、それはもちろん事実です。

しかし、もっと重要な論点があります。現在の欧州委員会/ECBが優先順位を置いているのは財政統合や財政同盟ではなく銀行同盟です。それはなぜか。銀行同盟を完成させなければドイツが財政同盟における政治交渉のテーブルに実質的にはつかないという実情があるからです。だからこそ、「新規の不良債権の引当金を100%積め」といったような過激な案が出てきているわけです。マクロン率いるフランスも当然それは承知でしょうし、受け入れ可能です(フランスの金融システムに問題は無い)。しかし、この論点になると潜在的なシステム不安を抱えるイタリアが承服しないわけです。ドイツが弱いから進まない、に加えて、イタリアが困るから進まない、という論点もあるわけです。

銀行同盟の議論はよほど専門的に見ていない限り、複雑怪奇ゆえ、日本語報道が殆どありませんが、実情はそうです。この辺りは拙著『ECB:組織、戦略から銀行監督まで』に詳述いたしました。宣伝で恐縮ですが、詳しく知りたい方はどうぞご参考まで。
マクロンが目指しているフランス国内の労働市場改革にせよ、EUの財政連合にせよ、得をする主体が出るのと同時に、損をする主体が出てきてしまいます。EU支持が強い時期なら、メリットを強調して議論を推進することも可能ですが、反EUが強くなると、どうしてもマイナス面の方が強調されがちになってしまいます。
ユーロ圏の共通予算や共通財務相の設置まで踏み込むマクロン大統領の壮大な改革案ほどではないにせよ、加盟国の構造的改革の促進や欧州安定メカニズム(ESM)を欧州通貨基金(EMF)に発展させることなどはメルケル首相の改革メニューとも整合的。EUの動揺を利して中国が経済支援で東欧諸国に手を伸ばし、ロシアの影も見え隠れするなか、民主主義、法治といった自由世界の価値観を守るにはマクロン大統領のフランスとメルケル首相のドイツの連携が欠かせません。自由で民主的な価値観の擁護を米国に頼ることも難しいなか、欧州が動揺すれば我が国にとっても苦しい状況が生まれそう。「早くもピンチ」にある感は確かに否めませんが、マクロン大統領には頑張って欲しい・・・(^.^)/~~~フレ!