【伊藤穰一】ブロックチェーンの「現在地」を教えよう

2018/4/24
MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボの伊藤穰一所長といえば、インターネットの黎明期からそのテクノロジーを体験してきた人物だ。その伊藤氏は近年、仮想通貨、ブロックチェーンにも大きな期待を示している。インターネットの歴史を知り尽くすビジョナリーは、ブロックチェーンに何を見るのか。本人に直撃した。

「このままではまずいな」

──近著「教養としてのテクノロジー」では、シリコンバレーの巨大テックのあり方に一石を投じられていますね。
長年シリコンバレーのベンチャーに携わってきたのですが、それだけではいけないと感じることが増えたんです。
例えば、自分が関わっていたTwitterでも、初期は「絶対利益のためにお客さんのエクスペリエンスを圧迫することはしない」とか、すごい夢を語っていたんですが、だんだんズレていったんですよ。
ベンチャーも重要なんですけど、ベンチャーのレイヤーとベンチャーのレイヤーの間には、非営利目的なきちっとしたガバナンスにはあったんですよね、インターネットには。それが忘れられている気がするんです。
そのうちに、インターネットがモバイルでクローズドになったり、プラットフォームものっぺり巨大化してしまって。そんなタイミングでMITからオファーが来たから、より国や社会のことを真剣に考えるようになったんですよね。
やっぱり、コンテキストが変わると自分の考え方も変わっていって、ボストンで、国や社会のことを異なる視点で考えてる人たちと一緒に過ごすと、だんだん遠くからシリコンバレーのことが見えるようになったんですよね。
ちょうど、「このままではまずいな」と考えていたときに、フェイクニュースや、トランプの問題も出てきたので、「やっぱそうなっちゃうよね」と感じているわけです。
──一方で、そういうシリコンバレーへの違和感と並行して、仮想通貨やブロックチェーンへの関心も強めていますね。
仮想通貨については、僕は1990年代からずっと①デジタル通貨を提唱していたんです。
当時、着々とやっていた頃も、いろいろ波があったんですけど、今の仮想通貨でも、昨年からの短期的なバブルで、長期的のいろんな可能性が実現されなくなってしまうことが心配なんです。
インターネットも一時期そういう時代があったので、大丈夫だと思っているんですが。
──ビットコインを支えるブロックチェーンの非中央集権化という思想についても、かなり期待されていますよね。