[東京 17日 ロイター] - 日銀は26、27日の金融政策決定会合で、物価上昇率が目標の2%程度に達する時期について、現在の「2019年度ごろ」との見通しを据え置く公算が大きい。引き続き、好調な景気にもかかわらず、物価は弱めの状況にあるが、日本経済の需給引き締まりを背景に、物価2%目標に向けたモメンタム(勢い)は維持されているとみている。

金融政策は、現行の短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する緩和策を継続する可能性が大きい。

日銀は同日の会合で、経済・物価の見通し期間を20年度まで延長した新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を議論し、27日に公表される。

前回1月の同リポートの公表以降、米国の金融政策や通商政策などを巡って金融市場では株安・円高が進行する局面もみられたが、現段階で内外の実体経済に大きな影響はみられておらず、日本経済は引き続き緩やかな拡大を続けていると日銀ではみている。

2日発表された3月調査の日銀短観では、改善を続けてきた企業の景況感が一服したものの、景気拡大を背景に雇用や設備の不足感が一段と強まっていることが明らかになった。4日に公表した昨年10─12月期の需給ギャップはプラス1.50%となり、07年以来、10年ぶりの水準にまで需要超過幅が拡大。今春闘における賃上げも前年実績を上回る回答が相次いでおり、経済・物価のサポート要因とみられる。

こうした需給の改善もあり、足元の消費者物価(生鮮食品除く、コアCPI)の前年比は1.0%まで上昇率を高めている。目標の2%には「なお距離がある」(黒田東彦総裁)ものの、日銀内では経済・物価ともに「おおむね1月展望リポートで示したシナリオに沿って推移している」(幹部)との見方が多い。

1月はコアCPI見通し(政策委員見通しの中央値)を18年度1.4%上昇、19年度は消費増税の影響を除いて1.8%上昇としたが、4月の同リポートで大きな変更はなさそうだ。

新たに示す20年度は19年10月の消費税率引き上げの影響や、20年の東京五輪・パラリンピック需要の減退などを背景に、市場では経済成長が減速するとの見方も少なくない。成長率は現在、ゼロ%台後半とみられている潜在成長率を下回る可能性があるが、今後のさらなる需給ギャップ改善や期待インフレ率の上昇などに支えられ、物価上昇率は1%後半から2%近辺の上昇率を確保する可能性が大きい。

もっとも、日銀内では需給改善が継続しているにもかかわらず、中長期のインフレ期待の鈍さを指摘する声もある。日銀の見通しは、需給改善に伴う実際の物価の上昇を受け、期待インフレ率が上昇していくメカニズムを前提としており、会合では期待インフレ率の先行きや、強まる人手不足が日本経済に与える影響などについて議論が展開されそうだ。

*内容を追加しました。

(伊藤純夫 木原麗花 編集:田巻一彦)