【DMM亀山】「今度はヤンキー人材の企業を買いました」

2018/4/15
コンテンツ配信国内大手のDMM.comが、また驚きの買収をした。
今回、DMMが買収したのは、中卒・高卒生の就職支援をする「ハッシャダイ」(東京・渋谷区)だ。2015年5月に創業したばかりのベンチャー企業を、DMMが3月7日付けで株式100%を取得し、子会社化した。4月13日に発表した。
ハッシャダイの主な事業は、「ヤンキーインターン」の運営。中卒・高卒生を「第0新卒」と位置づけ、彼らに職業訓練をした上で大手企業に紹介、採用した企業から成果報酬を受け取る仕組みだ。同社を率いるのは、〝元ヤンキー〟の久世大亮(くせ・だいすけ)氏。1993年生まれの24歳である。
なぜDMMは〝茶髪社長〟がトップを務める会社を買ったのか──。
NewsPicks編集部は、DMMの亀山敬司会長(57)にインタビューを実施。ハッシャダイの久世氏とともに、買収の裏側に迫った。
DMMの亀山会長(左)とハッシャダイの久世大亮氏(右)がタッグを組んだ

人のネットワークに可能性

──なぜ今、「ヤンキーインターン」運営の企業を買収したのですか。
亀山 まず、収益的にはどう考えても跳ねない会社だよね(笑)。
でもハッシャダイは、カリキュラムを通じて元ヤンキーたちに仕事を教え、企業と顔合わせをさせて、営業マンやプログラマーとして就職させている。
金融とかIT系のベンチャー企業みたいに、PER(株価収益率)が右肩で上がっていくタイプの事業ではないけど、地に足をつけてやっている。ある意味で、固い会社とも言える。
──利益追求の買収ではない?
亀山 資金入れる時に業績を見たけど、はっきり言って全く儲かってない。
儲けを考えると、ビットコインとかの方がいいのは明らか。ただ、ITベンチャー企業は、プレゼンはうまくても、本当に一発当たるかどうか分からない。メルカリみたいにたまに大当たりするけど、ほとんどが言うだけ言ってつぶれる。
DMM亀山会長・独占告白。「CASH」70億円買収の真意
ハッシャダイは、IT系ベンチャーに比べると、どう見ても、業績がドーンと伸びないビジネスモデル。しかも、今までエンジェル投資家が付きにくかった業種だよね。それでも事業をコツコツ回してきた実績がある。
人のネットワークが広がっていく可能性があるし、DMMに合う人材がいれば採用することもできる。そこに面白さを感じたということかな。

亀山氏は「グレート・ティーチャー」に

ハッシャダイの主な事業である「ヤンキーインターン」は、地方(首都圏1都3県以外)に住んでいて、16~22歳の中卒・高卒者に対して、3ヶ月~6ヶ月の就職プログラムを無料で提供している。
受講する〝ヤンキー生徒〟には「職・食・住」を無料提供し、実地研修で行う営業については、給与も支払う。さらに、食費も支給し、住居はインターネット・光熱費込みで無料提供している。2018年2月からは、3ヶ月でプログラマーを育成する「ヤンキーハッカー」も始めた。
──久世さんにとって、DMM傘下に入る意味は?
久世 僕はこれまで、中卒・高卒生の就職支援をしてきましたが、DMMのバックアップで、中卒・高卒生の新卒市場を作りたいと考えています。
「ヤンキーが持て余しているエネルギーがもったいない」
これからの日本は、若い人がいかに活躍できるかが大切です。東京にいるとなかなか分からないのですが、田舎に行ってヤンキーに会うと、東京から見える世界と全然違う。みんなエネルギーを持て余していて、非常にもったいない。彼らを戦力にしたら、採用したい企業はいっぱいあるんじゃないかと思ったんです。
ハッシャダイは人材業界では認知してもらえるようになり、生徒を採用する企業も増えてきました。でも、それは景気がいいからで、不景気になったら採用が一気に冷え込みます。そこで、景気が良いうちに市場を作っておきたいと考えました。
だから、DMMの傘下に入る意味を一番シンプルに言うと、「時短(時間短縮)」です。
亀山 時短はわかりにくいな。要するに、スケール(事業規模の拡大)と勉強できるということだろ?
久世 そうです、そうです。
亀山 もともとやりたいと思っていたことが、俺が入ることで、10年かかるところが1年で実現できるかもしれない。ハッカーを育てるなら、パソコンとかも大量に買わないといけないし。
20代の経営陣3人(左)に可能性を見出した亀山氏
久世 そうですね。それを全部ひっくるめて時短と言いました(笑)。
なぜ時短が大事かといえば、リーマン・ショックの後にこれをやったら「まず大卒生をなんとかしろ」と叩かれていたかもしれません。だから、企業のみなさんが優しいうちにやらないといけないんです。
亀山 中卒・高卒生はもともと注目されていない人材だから、社会全体にとっても意味がある。
あとは、彼らにはパッションがある。俺にはそもそもパッションがないからね(笑)。
だから、資金を入れてスケールさせれば、今のように従業員数十人の規模ではできないことができるようになって、もっと面白い動きが起きると思った。もちろん事業としても可能性がある。こいつら自身の潜在性に期待して、投資したという感じかな。