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注目のコメント
「教養としての国際情勢」の第5時間目は、中東について、放送大学客員教授の高橋和夫さんへのインタビューを掲載します。中東と一口に言っても国や切り口が沢山ありますが、「超入門」をテーマに中東についてよくある誤解や疑問を中心にお話しを伺いました。
現代の中東情勢をアメリカの政策の合わせ鏡と考えるのは、私には今ひとつしっくりきません。
というのは、今の中東の混乱を招いた最大のきっかけである「アラブの春」について、アメリカの政策ということでは、説明ができないからです。
「アラブの春」とは何か、というのは学説が分かれるところですが、個人的には中東各国を支配する「世俗主義」権力に対する統治の方法としての「イスラーム主義」の挑戦だと考えるのが一番納得がいく考え方です。
アラブの春によって、民衆レベルで支持されたイスラーム主義者は、次々と世俗主義政権(特に汎アラブ主義を支配的イデオロギーとする独裁政権)を各地で倒しましたが、その後のイスラーム主義の勃興を巡って、周辺各国の利害が交錯し、それぞれの利害に従って各国が介入した結果、収拾のつかない事態になった、というのが私の現代の中東情勢に対する基本的な理解です。
その意味で、中東を突き動かしているものはやはり「イスラーム」なのです。
そしてここでいうイスラームとは、宗教というより、統治論としてのイスラームであるため、スンニ派とシーア派という単純な教義の対立ではないというのは、その通りです。
一方で、イスラームとは縁の薄いアメリカは、現代中東情勢においては、中東全体を動かす力はなく、最早干渉国家の1つでしかないとも言えるわけです。
個々の事案についてはよい纏めだと思いますが、字数の関係なのか、アラブの春と、宗教ではなく統治主義としてのイスラームいう、全体を紡ぐ横糸を省略してしまっているため、全体像が少々わかりづらくなっているのが残念なところですね。「中東の概念は伸び縮みします」というのはかなり重要なポイントで、"Near and Middle East" というのは、どこから見て「近い」のかというヨーロッパから見てのことです。20世紀より前だと基本的には「近東」と呼ばれ、主にオスマン帝国とイランの王朝のことを指しました。現在の「中東」という括りは第二次世界大戦より後のものです。
結局、ヨーロッパから近いというだけのことで、政治的にも宗教的にも一体性のない地域の括り方にとらえどころがないのはあたりまえなのですが、これが東南アジアであれば、「ASEAN加盟11カ国」という多少の実体がある国際機関を基にしています。中国は古代から政治と文化的秩序をもった勢力圏を明確にすることに非常に積極的だったし、ヨーロッパは特に近代には一つの文明圏として積極的に実体のある秩序になろうとしてきました。
中東が複雑で理解しにくい、というのは当然のことで、実際に複雑なのだから、政治や宗教や文化や経済の様々な要因を理解しないと無理なことだと思います。日本や中国だって仏教や儒教という宗教一つ(それだって壮大なテーマですが)を理解しても理解できるものではないし、どこの社会もそうだと思います。結局、まず個別の国ごとによく理解するのが間違えにくいでしょう。
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