秋元康「吉本は野生動物の集まり」、吉本坂46の誕生

2018/8/11

吉本はエリートの会社じゃない 

僕は講演をときどき頼まれますが、苦手なので受けません。しかし何かのはずみで福岡で自分の話をしたことがあります。
たとえばこの連載の始めのほうで話したような、「白痴美」と言われ、2年も浪人していたというような話。
すると講演が終わってから、小学生くらいの男の子を連れたお母さんが駆け寄ってきました。
「うちの息子もまったく同じです。この子、この先、大丈夫でしょうか」
「いやいや、僕もそうでしたから、大丈夫ちゃいますか。好きなようにさせてあげたらええです。男の子って女の子よりも子どもっぽいところがあるでしょう。僕は30歳になったとき、今年が成人式やと思って、それから仕事もだんだん頑張れるようになってきましたから。息子さんのペースで自由にさしてあげたらええん違いますか」
と言ったら僕の手を握らんばかりに喜んで帰っていきました。
だから僕のような子も、世の中にはたくさんでいることは間違いないと思います。
吉本という会社は、エリートの会社を目指すのではなくて、そういう子が集まって社員をしたりスタッフをしたり、芸人さんをやったりしていったらいいんちゃうかなと思います。
劇場公開を前提とせずレンタルビデオ専用につくられる映画作品の「Vシネマ」ってあるでしょう。
なかには名作もあるけれど、一部のVシネは見てみると編集がグチャグチャで、喧嘩のシーンがあったと思ったらブツッと切れて、突然エッチなシーンになったりする。
「これ、ドラマとして成立してへんやん」というようなレベルのものも多かった。
でも小難しい芸術映画よりそういうのが好きな人たち、それを娯楽として楽しみにしているような層は、いつの時代も人口の何パーセントかいるでしょう。
失礼な言い方かもしれませんが、そういう人たちは、あまりきちんとした組織よりも吉本みたいなところで過ごしたいと思っていると思います。