「Want思考」でリーダーシップを磨いていこう

2018/3/22
リーダーシップは、チームや組織を束ねるポジションにいるかどうかに関係なく、組織に所属するすべての人たちが発揮できます。もちろん、あなたも。
ではどうやってリーダーシップを磨くのかと言うと、方法は至ってシンプル。
「~したい(Want)」という自分の意志を、周囲に発信することです。
たとえば会議中に、1人の男性が「ちょっと休憩にしませんか?」と、提案したとします。
このとき、彼はこの場におけるリーダーの役割を果たしています。さらに、別のメンバーが「だったら私、コーヒーを買ってきたいな」「では、15分ほど休憩にしましょうか」などと提案すれば、その人たちもまたリーダーになるのです。メンバーそれぞれが「~したい」という意志を発信することによって、チームの合意形成や意思決定が成されるので、これらすべてが、立派なリーダーシップと呼べるのです。
従来の「リーダーは常に固定された人物」という考え方ではなく、チーム全員がリーダーであり、状況に応じて誰かがリーダーシップを発揮する。リーダーというバトンを、メンバーのあいだでクルクルと回している状況をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。
この「Want思考」で語るという習慣は、リーダーシップを磨く最高のトレーニングになります。しかし、実際の世の中はと言うと、「Should(~しなければならない)」で溢れています。
・勉強しなければならない。
・その仕事をやらなければならない。
・◯日までに、結果を出さなければならない。
など、僕たちは物心ついたときから「~しなければならない」と言われ続け、それを疑うこともなく受け入れ、あらゆる課題に追われています。結果、「Want思考」が麻痺状態に陥っています。
まずは日常生活の中で、「私は、◯◯したい」という感情を掘り起こしましょう。
自分の「Want」をノートに書き出してみてもいいですし、すでにハッキリしているのなら、さっそく発信してみましょう。同じ行為でも、言葉の使い方を変えるだけで成果が大きく変わります。
私はリーダーシップを磨かなければならない。
私はリーダーシップを磨きたい。
後者のほうが、明らかに前向きな気持ちになり、成果も出ると思いませんか?
「Want」がクリアになれば、そのためにはどう動けばよいのかも明確になります。『宇宙兄弟』の六太も、この「Want」を自覚することによって人生が大きく動き出しています。
六太は当初、心の奥底に「自分も宇宙飛行士が夢だった」という気持ちがありながら、それを自ら打ち消してしまっています。自らの「Want」を忠実に実行し、宇宙飛行士となった日々人を応援したいと思う反面、「〝兄〟とは常に、弟の先を行っていなければならない」という、自分で勝手に作り上げてしまった「Should」的コンプレックスに苦しんでいました。就職活動も難航し、実家では自分のデザートだけイチゴの数が少なくなり、そこまで追い詰められてやっと、「自分は本当は何がしたかったのか?」と、自らに「Want」を問いかけたのです。
そして、忘れたふりを続けていた本当の気持ちを再び掘り起こしました。
「俺は宇宙へ行きたい」
この思いを取り戻した瞬間から、六太は自分の生き方・人生そのものに対して、リーダーシップを発揮していくことになります。六太や日々人の「Want」は宇宙飛行士という大きなものですが、日常生活でも、小さな「Want」はたくさん存在します。
自分は今、目の前にある案件をどうしたいのか——?いきなり生活のすべてを「Want」で満たすことが難しいのなら、まずは、しなければならない仕事や課題の中から、「Want」を見つけてみましょう。大事なのは、日頃から「Want思考」を意識しておくことと、「Want」で語る習慣をつけることです。
アップル社を設立したスティーブ・ジョブズは、「Want」の連続で世界中の人々を魅了しました。経営者としての評価はまた別のものかもしれませんが、そのくらい、「Want」には強烈なパワーが込められているのです。
ただ、1つ注意しておきたいのは、自分に「Want」があるのと同様に、相手にも「Want」があるということ。
「Want」で語ることは大切ですが、その主張内容を周囲に強制したり、無理やり承諾させて実行したりするのは、リーダーシップではなく、イニシアティブ(主導権)になってしまいます。
「私はこうしたいんだけど、あなたはどうしたい?」
そこで意見が分かれることも、当然あるでしょう。だからこそ、
「じゃあ、どうすればいいか、一緒に解決策を考えよう」
と、発展的なコミュニケーションが生まれていくのだと思います。
自分をリードしてくれるのは、 いつだって「~したい」という思い。「~したい」がある人は、 それだけでもう「リーダー」なのです。
*続きは明日掲載します。
(画像:小山宙哉/講談社)