朝型でなくても成功できる

「早起きは成功のカギ」と、よく言われる。充実した1日を送って生産性を最大限に高めるためには、夜明けとともに起きることが、身につけなければならない習慣とされているのだ。
だが、文句を言わずに早起きする気があったとしても、私たちの多くは目覚まし時計のスヌーズボタンを押し続ける。そして、朝型人間になれない自分を責めるのだ。朝の日課で1日が変わると言われるなかで、起きるのが遅い人は絶対に成功できないものなのだろうか。
成功しているクリエイティブな人たち数百人に対して、日常生活と課題について筆者がインタビューしてみた結果、特定の分野では朝型かどうかが成功を左右するとは限らないことがわかった。
自分にハッパをかけるために朝行なうことより、1日をスタートする時間を重視しすぎるのは間違いだ。朝5時に起きると調子がいい人もいるだろうが、創造性やエネルギー、自然なバイオリズムの妨げになってしまう人もいる。
成功を目指そうとするなら、個人の日課を固定する必要はない。その代わりにいろいろ試してみて、最適なかたちで1日をスタートできる方法を見つけよう。
以下では、あなた自身の仕事の習慣を身につけるのに役立つような、早朝の日課に関するいくつかの提案をご紹介しよう。クリエイティブな起業家やフリーランサーからのアドバイスと筆者自身の試みに基づいている。

1. ゆったりとした朝

就業時間が9時から5時までに限られているわけではない、多くのクリエイティブな起業家やフリーランサーは「早起きは三文の得」という考えを捨てている。その代わりに自分の自然な睡眠傾向を大切にし、朝寝坊してゆったりとした朝を楽しんでいる。
オーストラリアのメルボルンに住むイラストレーター、ジェフリー・フィリップスは毎日が1枚のスケッチであるかのように毎日の習慣を決めては見直し、最適な起床時間を見つけようと定期的に実験している。数カ月間、朝6時に起きてみた結果、ゆったりと朝を過ごすのがいちばんだとわかったという。
「面白半分に、あらゆる起床時間を試してきた。目覚まし時計をセットせず、10~12時まで眠った時もあった」
フィリップスは現在、前夜のうちに片づけた仕事量に応じて、朝8時から9時の間に目覚ましをセットしている。そのおかげで、ゆっくり寝て、ポッドキャストを聴いたり読書したりしてくつろぎながら朝食を取り、ピアノの練習をした後、昼前にスタジオに向かうことができる。
「こうしたちょっとしたことすべてが、毎日の生活をコントロールし、自分の人生の主人公は自分だと感じられることに役立っている」とフィリップスは言う。

2. 「カエルを食べる」方式の日課

作家のマーク・トウェインはかつて、朝いちばんの仕事を「生きたカエルを食べること」にすれば、その日の残りの時間にそれ以上悪いことは何も起こらないと言った。
億万長者で著述家のブライアン・トレーシーは『カエルを食べてしまえ!』(邦訳:ダイヤモンド社)という書籍でこの考え方を広めた。つまり、嫌なことにまず取り組む。とくに気が散りにくい朝いちばんに、もっとも嫌なことに取り組むよう勧めるテクニックだ。
筆者自身、このテクニックを1週間試してみた。毎晩寝る前に、翌朝の「カエル」(したくないけれど、する必要があること)を決めたのだ。毎朝自然に目覚め、紅茶を飲んでから、カエルを食べるためにノートパソコンを開いた。
この日課のおかげで、1日なのに2日あるような感覚になれた。もっとも大変な仕事が片づいたら、シャワーを浴びてリセットする。そのあと、通常は目覚まし時計のスヌーズ機能のせいでできないこと(エクササイズ、十分な朝食を取る、毎日の瞑想)に取りかかるのだ。
「カエルを食べる」テクニックは、筆者のように先延ばしにしがちな人に合っているかもしれない。もっとも困難な仕事を最初にやり遂げると達成感を覚え、その日の残りの時間に勢いがつくのだ。

3. 思索の朝

カメラマンのマーク・ロボは、毎朝じっくり考える時間を十分に取るよう意識的に取り組んできた。「もともと早起きなほうではない。起きたら、その日1日の心の準備をするのに最低1時間は必要だ」
ロボは朝起きるとまずコーヒーを飲んで朝食をとり、その後、思索にふけってリラックスできる活動を行う。
「朝の時間を大切にしている。ガイド付きの瞑想を聴きながら、リラックスしてストレッチするのに、たっぷり時間を費やしている。コーヒーをお代わりしたり、インターネットを閲覧したりすることもある。
この時に、仕事モードに入らないように最善を尽くしている。そうなってしまうと、1日を台無しにしかねないからだ。気持ちが落ち着いたら、その日する必要があることについて考え始める」

4. モーニングメソッド

ベストセラー作家ハル・エルロッドが広めた『モーニングメソッド』(邦訳:大和書房)は瞑想、アファメーション、イメージング、エクササイズ、読書、日記という一連の儀式だ。この日課を行う順番は、どんなものでもいい。また、短時間の6分間でも長時間の1時間でもいい。
エルロッドのアドバイスに従って、筆者が個人的にこの日課をテストした時には、瞑想に20分、肯定的な主張を読んでイメージングするのに5分、自由な形式で書くのに5分、読書に10分、ジョギングや激しい運動に20分掛けられるように、いつもより1時間早く起きた。
筆者としてはこの日課はちょっと大変で、後でぶらぶら過ごすことになる傾向もあった。だが、すばやく新しい習慣作りができるタイプで1日を満足して過ごしたい人には、モーニングメソッドがうってつけかもしれない。

5. オフィス時間があるつもりになる

オフィスで決まった就業時間で働いていない場合、始業時間を決めないのは善し悪しだ。自分で自分のスケジュールを決められることについては解放感を感じるが、その一方で、方向性を見失って混乱してしまう日も生じかねない。
筆者は在宅勤務をしているフリーランス・ライターなのだが、時おり9時から5時まで働く習慣に戻ると役に立った。急いでオフィスに向かう必要はなくても、午前9時までにはカフェや図書館にいるようにしたのだ。
このシステムは、午前中の遅くまでインスタグラムをスクロールし続けることなくベッドから起き上がるのに良い方法であることがわかった。この日課を「カエルを食べる」テクニックと組み合わせると、1日を始めるのに非常に効果的な場合も多かった。

6. ベッドで仕事をするという日課

英国首相ウィンストン・チャーチルは現役時代にずっと、一定の朝の日課を続けていたとされている。午前7時半に目を覚ますが、朝食はベッドで食べる。さらにベッドの中で郵便物やニュース、仕事に目を通し、秘書に口述して書き取らせた後、ようやく午前11時に起き上がって入浴したという。
ナチュラルなコスメ製品を扱うケスター・ブラック社の創業者で「テスルトラ・ビジネス・ウーマン・アワード」も受賞したアンナ・ロスは、この日課を現代風にアレンジしている。
「目が覚めたら、まずはスマートフォンを手にとって『Sleep Cycle』アプリをチェックする。続いて、ベッドに入ったまま、ノートパソコンですべてのメールをチェックし、会計処理や請求書の作成を行い始める。
没頭するが、1時間後にはヨガに行く。こうした習慣のおかげで、実際に仕事を始める時には、何もかもが極力やりやすくなっていると思う」
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朝の日課については、夜型だからといって自分を責めないでほしい。ミックスしたり組み合わせたりして試してみて、自分にとってうまくいく方法を見つけよう。
だが、何より大事なのは「朝型でないと成功しない」という思いこみをやめることだ。ここで紹介したような、クリエイティブな人たちや模範となる人たちが証明しているように、自分流に1日をスタートできる。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Madeleine Dore、翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、写真:Wavetop/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.