【求人掲載】東京・立川発、新卒でも「自由と責任」を得る会社

2018/3/19
「働き方改革ブーム」で、企業と従業員の関係、組織のあり方を見直す動きが活発だ。パラダイムシフトへの道筋をどの企業も探しあぐねている中、「ティール組織」という考え方が日本に渡ってきた。世界で同時多発的に起きている次世代型組織の構築は、資金力のある大企業や、スピードがあるスタートアップだからできるわけではない。1976年設立で従業員123人の製造業者への取材で、その一端に触れた。
次世代組織「ティール」とは
次世代型組織の名を「ティール組織」と名付けたのは、組織変革の専門家フレデリック・ラルー。著書『Reinventing Organization(組織の再発明)』は、2014年の初めに刊行されると、12カ国語に翻訳されるなど世界で一躍注目を集めた。原著から時を置くこと4年。提唱する「ティール組織」そのものを邦題に日本でも出版された。
書籍では、組織は主に、発達心理学や進化論の観点から組織の発達段階を5つの型に分類している。
中でも、恐怖による支配、単純な因果関係による分類が成立する「衝動型」は、人間社会の複雑化とともに変遷し、現在の資本主義社会においては「達成型」が広く使われている。
達成型は、目標を設定し、それに向かって成果をあげるモデル。効率性を求めるのに適しているが、組織は複雑になり、上の階層に情報と権限が集中する特徴を持つ。実力主義が生まれるが、目標に対して成果を追い求めることに集中してしまい、人間らしさを無視してしまう弊害がある。
そして、衝動型と対照的なのが、最終形である「進化型(ティール)」。トップダウンでもボトムアップでもない「自主経営(セルフ・マネジメント)」「全体性」「存在目的」のうち1つ以上を重視する組織だと定義されている。
ティールを実践する企業
「ティール組織」で語られている次世代の組織は、上下、左右の組織の壁を取り払い、それぞれが自立・自走する組織。「言うは易し、行うは難し」の印象は強い。この著者の言うティール組織に合致するかどうかは定かではないが、それに近い組織づくり、自主性、自律を重んじる企業がある。東京都立川市に本社と工場を構える製造メーカー、メトロールである。
メトロールは1976年設立で、従業員数は123人。現社長は2代目で、創業者の実息が務めている。
開発するのは、産業機械で使われる「精密位置決めスイッチ」と呼ばれる製品。スマートフォンや自動車部品、半導体などの製造に必要不可欠で、加工不良品や品質トラブルを未然に防いでいる。
これだけ見れば、ニッチで地味な領域に特化して長年技術を蓄積してきた典型的な中小の製造業。だが、この「町工場」の雰囲気漂う企業こそが、フラットな自律組織を構築しているのだ。
年商は22億3000万円と規模は小さいものの、業績は絶好調で、世界でも他に類を見ない高性能センサを次々に開発し、世界中に販売。8年連続増収増益。営業利益率・経常利益率ともに約30%と圧倒的な高さを誇る。
また、1998年にBtoBのEC網を先んじて構築し、特定の企業や国、商社や仲介業者に頼らない海外直販売網を構築。売り上げの約半分を海外72カ国から稼ぐという超グローバルカンパニーでもある。
さらに、20代社員が53%、女性社員が62%と組織の若返りや女性の積極活用も定着している。2014年には、経済産業省「グローバルニッチトップ企業100選」「ダイバーシティ企業経営100選」にも選定されている。
この組織を作り上げたのが、2代目社長、松橋卓司。新卒で大手食品会社を経験した後、メトロールに参画。そこから、独自の視点で自律型の組織を作り上げた。そのポイントを松橋社長の声をもとに紹介する。
今の自分を基準に、何ができるかを考えていませんか? 自分でスキルを評価して、仕事の範囲を狭めないでほしい。
私は、大学卒業後に大手食品会社に就職し、カップ麺や菓子類の営業を10年ほど経験しました。問屋やスーパーへのルート営業です。自分で言うのもなんですが、会社の中で営業成績はトップクラス。
でも、今振り返ってみると、大企業の名刺の力がほとんどで、テレビCMで宣伝されたブランド品の販売を、ルート営業で補助していたにすぎなかった。誰がやっても、そこそこ同じ結果が出る仕組みの中で、自分で稼ぐ能力を発揮する機会は、ほとんどありませんでした。
それに比べ、メトロールでは、新卒2年目からゼロベースで1カ国の販売を任されます。製品戦略から販売チャネルの構築、販売促進を考え、交渉の場では、商売上手な華僑・印僑と飲食を共にし、人間関係を構築。ビジネスチャンスを見いだしていきます。自分のアイデアで、新製品や新しい販売チャネルが生まれ、その成果を実感できるのです。
現在、ASEANの販売責任者の20代の女性社員は、一人で海外に駐在し、部下2人を遠隔で指揮しながら、新市場の開拓に邁進している。また、新卒入社した社員は1年目からASEAN営業を担当。4年目ながら、自らの判断で海外出張を決めASEAN市場を飛び回っている。
AIがリアルな世界に浸透し始め、戦いのルールは変わり始めています。今後、最も必要とされる「自分の頭で考え、稼ぐ力」を身につける訓練の場として、大企業はふさわしいでしょうか?
賞味期限が来つつあるとしても、大企業には、強い既存事業があり、誰がやっても同じ成果が出るような仕組みが、既にできあがっています。失敗の可能性の高い新規事業など、よほどの変わり者でなければ、手を挙げないのが実情ではないでしょうか?
大手企業で胃カメラの初期開発に携わった私の父も、新規事業を経験した私も、大組織の不条理を経験し、その呪縛を逃れるための組織の在り方を模索し続けてきました。
メトロールには、管理部門がありません。開発・製造・販売の直接部門の一人ひとりの社員が、間接業務をシェアリングし、ホスピタリティをもって吸収してしまう文化が根付いています。
メトロールでは、重要な仕事は、製品開発だけでなく、新卒採用や社内レクリエーションに至るまで、プロジェクトチームを結成し、リーダーがメンバーを募って進めていきます。
リーダーは、役職や経験、所属する部署に一切拘束されません。プロジェクトに対するミッション意識が高い人が、おのずと選ばれる文化になっています。
私たちには、会社のトータル利益を最優先するルールが定着しています。優先度が高いプロジェクトに部下の時間がとられても、部門の上司は文句を言いません。
なぜそれができるかというと、メトロールには、部分最適であるところの組織単位のノルマ追求(数字目標設定)がないからです。
厳しいノルマ追求があると、部門の責任者は保身のために、部下に「余計な仕事をするな!」と圧力をかけるでしょう。そうなると組織は、コンクリートでできたサイロに細分化され、社員は孤立してしまうのです。
私はメトロールの組織をオーケストラに例えています。社員は、自分の得意な楽器を見つけ腕を磨いてほしい。専門家としての強い個人が集まって、誰に命令されるでもなく、全体最適を考えて行動する。
新しいプロジェクトが常に提案され、イノベーションが湧き出てくる。そんな、素晴らしいハーモニーが奏でられるような会社にしたいのです。
3年前、「東京都ベンチャー技術大賞」で優秀賞を受賞しました。開発の中心にあたった2人は、当時82歳の超ベテラン技術者と、新卒3年目の25歳。
年齢・キャリアに関係なく、技術を通じて共創し認め合うのがメトロールです。82歳の方が入社したのは75歳の時です。そんな高齢技術者のアナログ技術と、入社数年の若手技術者のデジタル技術が融合し、世界初、従来製品の10倍の性能をもった「空圧式センサ」が生まれ、ベンチャー技術大賞の栄誉をいただきました。
社内には60歳以上の、大企業出身の優秀なエンジニアが何人かいますが、入社数年の若手社員と対等にディスカッションをするなかで「よく考えているね」と年の差に関係なくお互いの存在を認めています。メトロールでは「考える」ことに価値の重きを置いているので、この言葉は最高の褒め言葉なのです。
私は、「経費節減」はおかしな言葉だと思っています。そんな言葉を、経営陣や管理部門がまき散らすから、社員は萎縮して新しいことに挑戦しようとしなくなると確信しています。
メトロールでは、会社で使う金(経費)は、すべて「投資」だと考えます。将来性のある新しいこと、社員のモチベーションの上がることを、どんどん社員に提案してもらう。前向きな投資の提案ができる社員が、リーダーとなっていきます。
営業社員には入社1年目から、コーポレートカードを持たせ、自分の判断で経費を使わせることで、費用対効果を考えさせる。多くの企業では、経費は事前に申請書類を書き、何人もの上司の決裁をもらい、経理課を通して現金をもらう。もしくは個人で立て替える。
もう、面倒でしょ? 金を生まない申請や後処理に時間と労力を使うのは無駄でしかない。そんな時間があったら、営業には、大事なお客さんとの商談に集中してもらいたい。
「不正があったらどうする」っていう人もいますが、カードや電子マネーは、上限設定でき、履歴も残り、現金より管理がしやすい。
さらに最新のクラウドシステムでは、経費を使った本人が、自動仕分けのサポートを受けて、上司の承認から経理ソフトにダウンロードするまでを、リアルタイムにクラウド上で行える。多少のミスがあったとしても、現金の管理コストを考えたら、損害のうちに入りません。このようにして、精算業務を分離し、社員がシェアリングして無くしてしまいました。
きっかけは「こんな仕事つまらない」という、経理を担当していた若い女性社員のひと言です。
現在20代の彼女は、経理の仕事をクラウドに任せ、財務・経理・人事の仕事を絡ませて、資金需要を予測し、銀行との交渉など、経営に関わるCFOの仕事を、楽しそうにやっています。
こうしたことができるのは、会社の財布の中身が、お小遣い帳みたいにわかりやすくなっているから。
一般的に製造業は、お金を借りて土地を買い、工場を建設。多額の投資を行い、資金を固定化します。メトロールは工場も事務所もすべて賃貸、購入設備は加速度償却か即時償却(全額経費化)。結果として有形・無形・固定資産は6%、流動資産は85%。キャッシュフロー経営だからこそ、ケチることなく、社員のアイデアに積極的に投資できるのです。
メトロールには、「気づきメモ」を書いて箱に入れる提案制度があり、年間1300件の改善提案が寄せられます。提案は、翌朝のリーダー会で95%以上の確率で決裁され、直ちに投資が実行されます。
クラウド活用や「気づき提案制度」の話から、スピード偏重主義の会社か?と思われるかもしれませんが違います。
スピードよりも、自分の頭で「考えて」仕事が進められているかどうかを重視しています。考えるのは苦しいこと。それに立ち向かえるか。採用面接では、スラスラしゃべる必要はない。うなっても、絶句してもOK。
グループワーク選考で、自ら考えることから逃避して、司会役に回り、器用にまとめ役になることがリーダーシップだと勘違いしている学生が多いのは、大変残念です。
新卒採用は、いい人がいたら採る。いなければ採らないという方針なので、人数は決めていません。
人は育てようとして育つものではない。ひたすらに、当社の企業文化に合う人を探すことにしています。自律型、他人におもねることなく自然体で生きている人と一緒に働きたいですね。
社内で行われる「教育」「研修」なんて、しょせん限界があります。いつまで学校みたいに与えられた教育の場が必要だと考えているのでしょうか?
自律した社員は、若くても厳しい実戦環境の中で、小さな失敗を繰り返しながらも、先輩から助言をもらい、自分で勉強し、勝手に育っていきます。
私の仕事は、社員が好奇心や挑戦心を満足させるような、仕事のチャンスを創ることだと思っています。
発明が、ノルマや命令でできるはずもなく、社員一人ひとりの才能を、のびやかに解放することができれば、自然と会社は社員の成長とともに、緩やかかもしれませんが、質を伴った成長をしていきます。それが、本当の会社の実力ではないでしょうか。
(取材:木村剛士、文:加藤学宏、写真:風間仁一郎)