[東京 9日 ロイター] - 麻生太郎財務相は9日夜、同省内で臨時の記者会見を開き、佐川宣寿国税庁長官が同日付で辞任したと発表した。森友学園への国有地売却を巡り、佐川氏から辞任の申し出があり、これを認めた形式を取った。

麻生財務相は、国有財産行政に関する信頼を損なったとして、佐川氏に対し減給20%、3カ月の懲戒処分を行ったことも発表。麻生財務相自身の進退については「特に考えていることはない」と述べた。

佐川氏は、1)理財局長時代の国会対応に丁寧さを欠いて、国会審議の混乱を招いた、2)行政文書の管理状況について、様々な指摘を受けている、3)今回取りざたされている決裁文書の国会提出の担当局長だった──点を挙げ、麻生財務相に辞任を申し出た。

森友学園への国有地売却で、財務省が決裁文書を書き換えたとの疑惑が浮上している問題について、麻生財務相は「この週末を通じて作業するよう指示した。週明け早々にも(国会に)お示しできるようにさせたい」と語った。

ただ、同省内の調査がどの程度、進んでいるかは報告を受けていないとし、週明けの調査報告が「最終的なものであってほしいと思う」と述べた。

麻生財務相は、これまで佐川氏の国税庁長官起用について「適材適所」と説明してきた。この日の会見でも「(佐川氏が)国税庁長官として不適任だったかという認識はない」と述べ、従来の考えに変わりがないことを強調した。

また、麻生財務相は、佐川氏とこれまで「辞める辞めないという話はしたことがない」と述べるとともに、佐川氏に対し「国会で説明するよう求めることはないと考えている」と言明。

さらに文書書き換え疑惑について「私が佐川氏に直接確認したことはない」とも語った。

その一方、一連の混乱を「佐川氏1人の責任にするのはいかがかと思う」と述べた。自身の任命責任については否定した。

一方、森友学園との交渉部署に所属していた財務省近畿財務局の男性職員が自殺していたことについて、佐川氏の辞任と直接関連があるかどうかは「私のところでは分からない」と語った。

国税庁長官の職務は、藤井健志国税庁次長が代行する。

安倍晋三政権は、佐川氏を事実上更迭したことで問題の幕引きを図りたい考えだが、野党の反発は続いており、週明け12日の国会正常化のメドは立っていない。

週明けに行われる財務省の調査報告の内容次第では、野党側の反発がさらに強まり、国会の紛糾が長期化する懸念も浮上。安倍政権の求心力低下が危ぶまれる事態になりつつある。

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(梅川崇 編集:田巻一彦)