本田圭佑も投資。スポーツベッティングで英国進出する男の野望

2018/2/27
カジノ法案に続き、プロ野球くじの導入が再検討されるなど、日本で新たな“ギャンブル”の是非が議論されている。
日本は言わずと知れたギャンブル大国だ。賭け金の市場を見ると、パチンコの24兆円を筆頭に、競馬は2.4兆円、競艇は0.9兆円、競輪は0.6兆円、オートレースは0.08兆円。宝くじは0.9兆円で、その一種と位置付けられるtotoは0.1兆円(出所:東洋経済、キャピタルイノベーション株式会社 脚注:2013年実績)。
“中毒性”というリスクが不可避のギャンブルは、日本では公的機関が監督し、社会インフラの財源として活用されている。控除率を見ると、パチンコは15%、競馬、競艇、競輪はいずれも25%で、オートレースは30%。極めて高いのが宝くじの53%、totoの50%で、購入した時点で半額以上が実質的に税金として徴収されているのだ。
そうしたギャンブルの仕組み、あるいは人間的欲求に独自の視点で可能性を見いだし、世界に新たなエコシステムを作ろうとしている男がいる。
「印象としては、まさにぶっ飛んでいる(笑)。いい意味でね」
サッカー選手の本田圭佑をしてそう言わしめるのが、英国でスポーツベッティング事業を手がけるジャングルX株式会社の直江文忠CEOだ。同社はサイバーエージェント・ベンチャーズや個人投資家から約1億円を融資されており、そのうちの一人が本田である。
「ジャングルにはスポーツ界のスポティファイのような存在になっていただきたいと思っています。いずれ世界中のアスリートに少しでも喜んでもらえるように。ただ、直江さんには『スポティファイは射程圏内だ』と言われそうですが。とにかく変わらないビジョンで旋風を巻き起こすこと間違いないので、楽しみです」
26歳で葬儀会社を設立、3年で年商30億円にして事業売却したという直江CEO。次に手がけるスポーツベッティング事業では、フィリピンでの「実証実験」を経て、賭け金が約10兆円規模の市場を誇る本場イギリスでライセンスを取得、今年3月に事業を本格スタートさせるという。
そのモデルは、「手数料なし」という点で独特だ。通常、2倍のオッズに10万円を賭けて的中した場合は20万円の勝ちだが、手数料が10%の場合、胴元に手数料2万円を引かれ、手元に来るのは18万円。しかし、ジャングルXのサービスでは手数料をとらず、代わってマイナースポーツや障害者スポーツのアスリートにドネーション(寄付)を通じて還元できる仕組みを作ろうとしている。
「一番心を動かされたのはマイナースポーツに焦点を当てていること。さらにそこで運営側だけが儲かる既存のシステムではなく、頑張っているアスリートにも還元するシステムを作ろうとしていることが出資したいと思った理由です。意外かもしれませんが、こんなことは誰もこれまでやろうとしてこなかったわけなので、投資家として以上にアスリートとして応援しています」
本田がこう語るように、ジャングルX の思想は極めてユニークだ。それだけに、すぐに理解するのは難しい。
「スポーツ産業のOSを書き換えたい」――。
そう野望を語る直江CEOに、じっくり話を聞いた。
稼ぐ国と、働く国は違っていい
――スポーツベッティングの本場として知られるイギリスで、ライセンスを取得するのはどれくらい難しいことですか。
直江 日本人で取得したのは僕らが初めてで、アジア人でもほぼ事例がないですね。UKのマーケットには二百数社あり、どれくらい大きいかと言うと、日本のパチンコ市場くらいです。
日本の場合、パチンコには警察庁が入っていて、公営競技ではそれぞれの監督官庁がありますよね。一方でUKマーケットは、言えばプレミアリーグです。国が発行しているライセンスですから。スポーツ発祥の国だけあって、ベッティング文化があります。
ライセンスの審査では財務基盤から経営陣を含めて、トータルチェックがあります。2014年にライセンスの規定が変わり、取得のハードルが上がりました。僕らの強みは、非常にハードルの高い部分をクリアしたこと。それをどう使うのかというと、社会のためです。
――イギリスにはウィリアムヒルやラドブロークスという大手ブックメーカーを筆頭に、すでに二百数社あります。競争をどう勝っていくんですか。
僕は、この業界は7、8手で詰めると思っています。そういう意味での一手においては、業界の人たちが収益としているところを、僕らはアスリートたちに還元する。
7、8手の全部が業界初ではあるのですが、1手目としてサブスクリプション型とし、そして胴元手数料を僕らはとりません。胴元手数料は一番のうまみと言われていますが、大手が儲かっているところで僕らは儲けるつもりもないので。
――平昌五輪のアイススケート女子500メートルで金メダルを獲得した小平奈緒選手は、所属先の相澤病院に活動資金を支えられたと話題になりました。御社のスポーツベッティングでは配当金をドネーションできるということですが、小平選手のような話を聞いたとき、視聴者がアスリートのストーリーを応援できるシステムを作りたいということですか。
アスリートの方たちのストーリーがもっとフォーカスされるべきだと思うんですよ。24時間テレビみたいな形で取り上げられるのではなく。そこを支えるプラットフォームがなかったことが問題で。かつ、どこかでお金が止まっていて、アスリートやクリエイターたちにお金が回っていないという現状が問題で。そこを一度きれいにしたモデルを僕らは作りたいというのがあります。
――クラウドファンディング的な支え方なら、多くの人が賛同すると思います。一方、ベッティングという言葉に嫌悪感を示す人もいると思いますが、御社の場合、胴元の手数料をとらないから他社とは違うということですか。
それは大義ですね。
あと、日本の常識が海外では非常識、その逆もあるように、僕らは日本をマーケットにせず、外貨を獲得しにいきましょうという考えがあります。ライブだってイギリスで行われても、本田選手のメキシコで行われても、ストリーミングで見ることができますよね。つまり、お金を稼ぐ国、暮らす国、働く国、遊ぶ国、それぞれ違っていいわけですよね。これがテクノロジーの進歩です。
日本全体を“一つのスタジアム”とした場合、新しい世界の提言ができると思っています。僕らはUKの次にオーストラリア、アメリカのライセンスをとりにいきますけど、日本で最高のコンテンツを作り、そういう国の人たちに向けてライブで進出することによって、(外国から)インカム(収入)が生まれます。
一方で既存のバイアスで言うと、そのエリアにスタジアムがあるからチケット収入、グッズ収入がそのエリアに生まれます。そういうことを突き詰めていくと、(スポーツで)本当に身があって残るものって、アスリートのストーリー、クリエイターのストーリーであって。そこに付随するベットが生じて、というところを僕らは見ています。
イギリスや海外の人たちは非常に合理的で、ベッティングは一つのカルチャーとして受け入れられているんですね。日本は(カルチャーが)ないように見えますよね。それはただのむっつりの日本人の性格であって、パチンコ、公営競技、みんな好きなんですよね。今回の暗号通貨騒動にしても、みんな(ベッティングが)好きなわけです。好きだけど、言わない。その違いですよね。人間の根源的欲求で言えば、世界の誰もが好き。
ただしそこに大義がないと、ただ単にお金儲けの権化というか、目先の金銭に走りがちですが、我々はそうではなく、この先のロードプランを見たときに、いまからクリエイターの方たちに還元することによって素晴らしいものを作れる。そこが僕にとっては重要な部分です。
――ブックメーカーにとっては胴元手数料がうまみです。そこを取らないと、収益部分では減りますよね?
その先があるから、僕らは堂々とそこを押し切りますね。
アマゾンを一つとっても出版を見れば取次がなくなるように、そこを一度きれいにしたら、その先に見える世界があるので。まずはアスリートが儲けることができて喜んでくださって、プロダクトとして最大化できるコンテンツを僕らと一緒に作りましょう、と。それがあれば、目先の胴元手数料なんてさほど重要ではない。普通はライセンスをとったらその強みを最大限に生かしますが、僕らには手段でしかありません。
いま、目の前の打ち手が悪手に見えたとしても、それが囲碁と同じように後々の数手目では正しい打ち手になる。UKのブッキー(ブックメーカー)でも僕らと同じような打ち手は一切ないですし、スポーツ関係でも一切ありません。それはディスクロージャーしていない部分もあるのですが。
選手に敬意を示すエコシステム
――スポーツのメジャーやマイナーは、周囲が勝手に区切っているものです。日本では野球やサッカーを多くの人が見るから選手にお金が回ってきやすいけれど、マイナースポーツはそうではないからお金が落ちてこず、収入を得られにくいという現状があります。それは既存のシステムや、運みたいな話ですよね。そういうことをテクノロジーやベッティングで変えたいわけですか。
僕もスポーツをしていました。小さい頃で言うと、サッカーをずっとやれるなんていう恵まれた環境ではなくて、言うのがはばかられるくらいの、家庭のバックグラウンドでした。
高校のときにアメフトで全国優勝もしました。ただし自分はNFLで一番になれないと思ったら、僕はNFLのチームが欲しいという思考です。自分の体験したマイナースポーツだと食べていけない、じゃあ何かしたい、と。でも、いままでマイナースポーツの環境は変わってこなかったですよね。なぜか。それはスポーツというものの定義に縛られているからであって、発想が出ないんです。
僕らはスポーツ産業のOSを書き換えたいんですけど、みんながいま使っているのはウィンドウズなんですよ。僕らはマックだよね、と。ウィンドウズだからみんなはビジネスとして見ていて、そうするとチケット収入、グッズを売ると行き着く。自分の体験談だけで行くので。でも、その先にある世界があるわけで。リアル・ワールド・プロブレムを考えていくと、(スポーツベッティングでマイナースポーツの課題を解決しようと)行き着いたのは僕ら、という答えしかないですね。
もちろん五輪も素晴らしいんですけど、基本的に(スポーツの)大きな大会はみんなサーカス思想から出ていないと思います。サーカスというのは、移動して、転々としてという。物理的な制約がある地球において、いくら回って来てもどこかでピークを迎えますよね。
もう一つ、アスリートの扱われ方が、宮廷ピエロの時代から変わっていないと思うんです。今回のオリンピックでも、みんなすごい感動をくださっているわけです。でも、なぜかああいう大会になるとナショナルが出て、シチズンが出て、日本だとか、アメリカだととらわれますよね。でも、それって本当に21世紀の考え方なのか。
例えば羽生(結弦)選手にしても支えているのはカナダ人コーチであって、全員で金メダルをとったわけですよね。でもなぜ、「日本が金メダル」と強調されるのか。
ものには実質的価値と心理価値があるなかで、あまりにも心理価値が強調され、またはサーカス団的な部分における宮廷ピエロとしての位置づけがまだまだされている。そういう問題意識もひっくるめると、一度ガラガラポンをする。(OSで言う)マックが出てきてもいいよね、と。僕らのプラットフォームでやると、生計を立てられるという一軸があってもいいと思っています。
オリンピックを見ていてみんな感動を受けますけれども、そこに何かお金を投じるといえば、チケットとか、見に行くとか、間接的にはなりますが放映権とか、それ以上はないですよね。アスリートに分配されているのかと言えば、スポンサーを募るとか。
21世紀のモデルとして新しいエコシステムを考えると、行き着いたのが、僕らがスポーツベッティングを通じてやろうとしていることです。なので、他者がまねできない。
スポーツは非言語ですから、イギリスの人であったとしても日本人選手を応援する人たちがいますし。僕らは新しいスポーツを作っていく。6人制のサッカーも2人制のサッカーもありますよね。そういうのをもっとフォーカスして、スポーツへの出会いを作っていく。
音楽ではスポティファイってありますよね? 最初の問題意識は海賊版に対するものと、アーティストへの還元でした。彼らは設立してから今日までに、5000億円以上還元してきているんですよね。それを考えたら、僕らが今後5年、または6年で、アスリートに、またはクリエイターにそれだけの還元をできたら、僕は面白いなと思っています。
――直江さんの言う世界を実現させるには、猛烈なお金が必要になりますよね?
それはやっぱり、胴元っていう話なんですよね。クラウドファンディングの話が出ましたけど、クラウドファンディングには中毒性がないんです。先ほどのスポンサーの話も、エンドースメント(企業が選手と肖像権利用や商品化権の独占契約を結び、それを商品販売に生かすこと)もそうなんですが、この10年でナイキの背中にタッチできる存在まで上がっていきたいんですけれども、同じ切り口では当然いけないわけで。新しい、社会的な共通価値が必要です。
クリエイターに対する問題意識はみなさんがお持ちで、独特の角度から切り込めるという部分においては、ナイキ、アディダスはアパレルから入り、オークリーはサングラスから入っていきました。僕らはブッキーから入るんです。史上初ですよね。ブッキーという胴元が、利をみなさんで分けていこうと。
そして、お客様も感動したらドネーションできる仕組みを作ります。感動できなかったら、別に(ドネーションしなくて)いいです。それができると、僕らにとってはこの一手だけでも大きい。その次はいよいよコンテンツに行く。世間を毒で正す。いい意味での毒ですね。そうなれば、(社会がいまより)もっと良くなると思います。
次のオリンピックに関しても、宝くじの売り上げが大きく(運営面に)貢献していますよね。(既存のギャンブルに)そういう使い道があったとしても、僕らはプロセスがもっときれいにアスリートに行くようにする。今までのようなサーカスを演じる人という位置づけではなくて、もっと彼らの社会的存在に敬意を示すエコシステムを作りたい。そのために、胴元の強みを生かそうということです。
オリンピックがあるから、カジノ法案があるからというのは一切抜きです。僕らは詰め切った結果としてここにたどり着いて、やっとスタートというところです。
魅力的コンテンツで外需獲得へ
――現状、スポーツベッティングに日本人が賭けることはできるんですか。
できないです。どこのブッキーも、いま日本からアクセスできないです。なぜかと言うと、アクセスを仮に通ったとしても、決済機能で本人確認が義務付けられていますから。
――日本人アスリートを応援したい人は、現状ではおそらく日本人が多いですよね。その壁をどう乗り越えていくイメージですか。
突破します。いまは打ち手の部分を開示できないんですけれども、方法はあります。そのためにも、こういうスポーツがあるんだよという発見と、こういう楽しみ方があるんだと、僕らが企業努力として喚起していく必要があるんですね。
そうすることによって、少しずつ「アジアにもこんなに面白いスポーツがあったんだ」「こんなパフォーマンスをするんだ」と知らせていく。例えばエクストリームスポーツで、日本には優れたアスリートがいっぱいいます。
僕らはネットフリックスを見ているし、スポティファイを使っていますよね。同じ考え方で、垣根はないわけですから。日本で最高のコンテンツを作って、UKの大きな市場に対して切り込んで、感動してもらって、利があれば最高じゃないですか。これは日本のアスリートにも非常に大きく貢献するんです。
一つ参考になるのが、日本のパチンコは大きなマーケットです。イギリスにも(ギャンブルの)大きなマーケットがあり、僕らがどれくらいとっていけるか。人口比率を考えると、大きいんですよね。
2025年に向けたスポーツ市場で中国は100兆円を目指しています。アメリカは130兆円。日本は15兆円です。この差は何か。ダゾーンが日本でコンテンツを先にとっていますが、東南アジアへの効果がこれからある中で、そこまで見据えないとその(投資分の)価値は見えてこない。
一方、みなさんが行っている(国内スポーツ総生産における)施設(18.5%)、小売り(14.6%)とかはこういう比率なんです。だからスタジアムを造って、チケット収入と行ってしまうんです。
でも、実は問題が違うというのが僕らの意識です。世界的に見ても、アメリカ、中国がこれだけ伸びていきます。アリババはスポーツと医療にしか投資しないと言っているし、マカオのスマートシティの権利をアリババは得ました。そうすると、中国のスポーツが全体に底上げされるんですよ。だって(観客が)一流のプレーを見たら、(お金が回って)一流選手が来るわけで。
かたや、日本は何をしているのか。来年ラグビーW杯、次がオリンピック、その先にマスターズゲームとたくさん外国の方が来るチャンスがあるのに、なぜここで仕掛けないのか。それは内需にこだわるからなんです。
日本で最高のコンテンツが生まれれば、インカムを他の国から得られるわけですよね。日本国そのものをスタジアムと見たら、新しいエコシステムって作れるんです。内需にこだわるのは、僕は角度が違うんじゃないかと。
それと人口比率です。世代の比率を見ると、高齢者が大半のこの国でスポーツマーケットを上げようと思ったら、打ち手は限られますよね。でも、外国には若い人がたくさんいる。ということは、発想を根本的に変えないと。それがスポーツにおけるOSを作るということです。みんながウィンドウズなので、マックに切り替えるタイミングじゃないかと。その一番手として、僕らのプラットフォームと一緒に利を享受し合いましょうというのが僕らのエコシステムです。
――御社のサービスは定額制ということですが、いくらですか。
1カ月500円から600円でスタートします。もちろんプランは増やしていきます。いっぱいベットする人、またはライトユーザーにしても魅力があると思います。みんな胴元手数料で争っているけど、僕らはそこをしない。
――賭け金は?
賭け金はまた別です。つまりプラットフォーム使用料として、また他のブッキーが扱っていないコンテンツがあるというところにおける月額ですが、ベットの額は自由です。
――ラドブロークスやウィリアムヒルでは1カ月いくらという利用料はかかるのですか。
かからないです。だから皆さん、いまの FXや証券に近い形で、手数料が安いところがあれば移るので、たくさんアカウントを作っているのが現状です。
でも、僕らは僕らにさえ登録すれば定額で、それ以外の細かい部分は僕らがやります。いずれは僕ら独自のコンテンツを作ったときに、もしかしたらそこに価値があれば、その価値をみなさんが判断してくださいというのが僕らのスタンスです。スポーツの民主化とも言っているんですが、スポーツをする人が中毒性のあるパフォーマンスをして、応援する人は中毒性のある応援をする。そういうサイクルを作ろうとしています。
ところで、カール君ってご存じですか?
――テレビ番組「ビートたけしのスポーツ大将」で、陸上選手のカール・ルイスをモチーフに作られたキャラクターのことですか。参加者と競争して、面白かったですよね。
そうです。あれがベットの対象になってもいいわけですよ。イギリスだと、「風雲たけし城」が大人気なんですね。「SASUKE」も同じように、「American Ninja Warrior」として人気です。そういうコンテンツを日本がどう作れるか。ベットとして、どう成立させるか。僕らがいう、スポーツの編集、スポーツを作るというのはそこにあるんです。ルールを変えましょうということなんです。
いまのメジャーのスポーツは誰かが作ったルールであり、そういう中で勝ち負けが出てきますが、例えばサッカーならシュート率、FKならこの人が一番とか、スタッツの角度で様々な(新しい)競技が生まれると思います。2人制サッカーもそういうことです。
アメリカがスポーツで強いのは、なんだかんだいってスポーツでは多様性がある。アメリカンフットボールはラグビーとの融合ですけど、その後、アメフトから防具をつけない7人制のアメフト、今度は女性のやるアメフト、そして100ヤードから50ヤードに短くしたものも生まれています。
これって僕らの社名(ジャングルX)にもあるように、多様性であり、それからさらに新しいスポーツが生まれる。僕はこういう世界こそ、多様性があり、(みんなが)応援し合えると思います。
僕らはもうマネタイズはできているわけですから、強みを持って入る。だいたい皆さん、マネタイズで困りますよね? メディアで広告収入にするのか、どこかの傘下に入るのか。でも、僕らは初めから胴元としてのマネタイズがあるので、それをどう使うか。そうするとコンテンツだけにフォーカスできる環境になるというのが、我々の立ち位置ではあります。
中毒性がうまく回る設計思想
――カジノ法案でも中毒性が議題に上がります。スポーツベッティングをする胴元側は中毒性を考慮するものか、個人の問題なのか、どう考えていますか。
イギリスはさすがによくできていまして、きちんとそういう団体(ギャンブル中毒者のための団体)に対して、一定の金額を定期的に寄付するという仕組みができています。それってすごく重要で。日本がいまどう議論しているかは申し上げませんが、回数制限をするのは本質的な解決ではなくて、僕らの場合、最終的には中毒性がいいように回ればという設計思想になります。
イギリスにそういう制度があるように、僕らには免許事業者としての責任があります。なので、そこからさらに突き抜けたところでいまのモデルに行って、誰かを応援する中毒になれば誰かがハッピーになるということです。最後は運営元ですよね。どういう人が運営するか。ガリガリ亡者で、本当にビジネス前提であれば、ヘッジファンド的な運営の形になっていくんでしょうし。
イギリスのブッキーではどんな人が株主になっているかというと、銀行か、証券会社か、保険会社です。ちゃんと市場で売却するセカンダリー(マーケット=二次市場)もできていて、非常に固い形なんです。誰でも株主になれるわけではなくて。そういうところがきちんとできている産業です。しかも参入ハードルがあります。(ベッティングは)社会のためにあるんです。
――ベッティングが社会で認知されているから、イギリスではそういう仕組みになっているんですか。
認知されているからこそ、よりルールを自分たちで厳しくして、社会的批判もないようにする。社会的批判はないんです。あるとしたら、カジノのほうがあります。僕らはカジノをやりません。なぜなら、カジノはどこまで行っても対胴元なので。
僕らはそうではなくて、人がいる限りはスポーツというものがなくならないように、あくまでも人なんです。人と人が感動し合える、誰かが誰かに気軽にベットできて、という社会を見ているので、僕ら(のスポーツベッティングで)は必然的に人にフォーカスしていくのがあります。
――ドネーションもイギリスの文化ですよね。個人的にはスコットランドに4年住んで、人々がこんなに気軽に寄付するのかと驚きました。一方、日本には寄付という文化がほとんどなく、思想としてなじまないように感じます。
それはクラウドファンディングの限界点です。ピークアウトを迎えるのもそこです。
カルチャーの部分であるのは、一神教と多神教の背景です。アメリカでは税制的なメリットを得られますけど、キリスト教の「自分で得たものを他者にも」というところが働いているからです。
遺伝子を見たら明確で、日本人は保守的だというのがあります。一方で日本の場合、いい意味でそういうカルチャーがマイルドになっていて、お上の作った仕組みに乗っかっていれば医療も何も成立するので、税金さえ納めていればきれいに使ってくれるだろう、根底に誰かがやってくれるだろうというのがあるので、自らが(ドネーション)しないというのがあります。その代わり、正月になると数百円のおさい銭で夢がかなう、みたいなことがあります。
根底はそこですよね。どっちもいい面と負の一面がある中で、ドネーションのカルチャーが遺伝子としてある国であれば、それをブッキーが積極的に活用し、そしてアスリートの価値をもっと高めることによって、もっといいパフォーマンスがそこの仕組みから生まれたら、誰かが誰かを支え合うというシェイクハンドの世界が生まれると思っています。
僕は(台湾との)ミックスですけど、日本が母国であり、育ててくれた国なので、そういう国から提言していく。いままでは西洋の文化を明治から受けてきましたが、これからは東洋的な良さ、日本的な良さを押し込んでいくステージだと思っていて。2050年のGDPの比率を見ても、東南アジアが(世界の)主たるエリアになるのであって、そういう良さはいまのうちに伝えていく。
だからメジャースポーツが一神教であれば、マイナースポーツは多神教であり、多神教には一人一人のストーリーがあるわけですよね? ヒンズー教で見ても、仏教で見てもそれぞれの神に意味合いがあって、慈愛の神があるように、それぞれのアスリートにはそれぞれのストーリーがあるので、そこをベッティングとして、コンテンツとして光を当てていきたいという思いがあります。
寄付という文化や体験知がある国だからこそ、僕らの得意の角度で切り込んでいこうと思っています。
(バナー写真:iStrock/serpeblu、文中写真:中島大輔)