「ポケモンだけ」だから面白い。ポケモンにすべてを懸けるふたり

2018/2/23
ゲーム、アニメ、玩具などの商品を展開し、世界的な人気を誇る『ポケットモンスター』。そのポケモンを専門にプロデュースするのが、株式会社ポケモンだ。世界で7億超の累計ダウンロード数を記録したアプリ「Pokémon GO」を世に送り出したのも同社。ここでは、意外な経歴を持つプロフェッショナルが多数活躍している。
最高執行責任者(COO)の宇都宮崇人氏と執行役員の河本拓氏も、入社以前はポケモンをほとんど知らなかった、異業種からの転職組だ。なぜ二人が株式会社ポケモンを選んだのか。対談から、ポケモンのプロデュースの裏側をひもといていこう。

「ポケモンというビジネス」に挑戦したい

──お二人は、コンサルと外資という、一見「ポケモン」とは無縁の経歴ですが、転職のきっかけは何だったのでしょうか。
宇都宮:コンサル時代、同期が転職活動をしていた際に偶然、株式会社ポケモンを知りました。ゲームも映画も数字はすごいのに、実態がよくわからない。
「なんなんだ、この会社は?」と思い、面接に行ったら、現在、最高ビジネス責任者(CBO)を務める伊藤憲二郎から「ポケモンの映画は前売り券を買うと特別なポケモンが(ゲームに)もらえる。映画を見ると、そのポケモンが活躍するからますます好きになって、グッズも売れる」という強烈な話をされたんです。
ゲームと映画、グッズ販売をすべて結び付けているなんて、純粋に「すごいな」と感じた。それで、ポケモンのことはまったく知らなかったけど、すぐに入社を決めました。
2017年公開「劇場版ポケットモンスター キミにきめた!」では「サトシのピカチュウ」をプレゼントした。
河本:私も似たようなものですよ。前職は外資系の医療系メーカーで、海外のeコマースのサービスを日本に導入するプロジェクトに携わっていました。そのプロジェクトが終わったときに、紹介会社から株式会社ポケモンを薦められたんです。
ポケモンはピカチュウぐらいしか知らないうえに、会社の内容もよくわからなかったので、話を聞くだけのつもりで面接を受けました。でも、面接担当者の「将来的にはソフトを世界同時発売して、世界で広報をしたい」という話にピンときたんです。
当時のポケモンは、ゲームに関しては日本国内で先行発売し、その後に海外販売をするビジネス形態だったんですよ。それを世界同時に行うのなら私のこれまでの仕事が生かせるし、まさに自分のやりたい仕事だと思い、その瞬間に入社を決めました。
宇都宮:二人ともポケモンが好きで入社したわけじゃない。チャレンジや夢を面接で語る人たちがいる会社が面白そうだなと感じ、「ポケモンというビジネス」をしている会社に魅力を感じたってことだよね。
でも、これだけ長い間ポケモンのことばかり考えていると、絶対ポケモンが好きになる。河本さんは、ポケモンを暗記したんだっけ。
河本:「入社までにポケモンを覚えておいて」と言われて、全部で500(当時)ぐらい。研修後に名前を全部覚えていなかったら、現場に行かせないと言われたので、学生時代のように単語カードにポケモンの名前を書いて暗記しましたよ。
当時すでに30代だったので、異様な風景だったと思います(苦笑)。
宇都宮:私のときはテストがなくてよかった(笑)。

「Pokémon GO」に参加したいと社長に直訴

──「ポケモンというビジネス」に共感して入社したお二人が、前職の経験を生かせたなと感じるのは、どんな瞬間なのでしょうか。
河本:株式会社ポケモンに入社してからの10年間で、一番大きく、考え方の転換となったのは、やはり「Pokémon GO」ですね。
「Pokémon GO」プロジェクトの話をたまたま社内で耳にして、「ものすごいことをやろうとしているな」と思った。そのとき、普通の会社員であれば、組織から仕事を与えられるのを待つでしょう。
でも、私は前職で営業だったのにもかかわらず、上司に直談判してあるプロジェクトのチームに入れてもらったことがあります。そして、そのプロジェクトに参加したことで自分自身の成長があり、鍛えられた経験がありました。
それで、今回も「何でもいいからやらせてくれ」と、社長の石原や宇都宮に話をしたんですよ。結果として「Pokémon GO」に関わることができたし、やっぱりいい経験になった。直接の仕事内容が生きた例ではないですが、前職の成功体験が大きいと思います。
河本氏は、『Pokémon GO』世界初公開となった発表会の調整を担当。画像は、同発表会で公開された『Pokémon GO』の初公開映像より一部抜粋。
宇都宮:今でこそ「Pokémon GO」はすごいプロジェクトだと世間で言われていますが、当時はまったく未知数のプロジェクトでした。エンターテインメントは何が起こるかわからないので、情熱のある人が携わるのが一番いい。
そういう意味で、河本の行動も、河本を参加させる決断をしたことも、正しかったと思います。
私の場合は、株式会社ポケモンならではの特殊な業態に、前職の経験が生きていると思います。国内の社員は約200人ですが、直営小売りや、ライセンスビジネス、映画、ゲームなど、会社の規模の割に多数の業態やビジネスモデルがあるんです。
コンサルティング会社時代は短いスパンでさまざまな業態を担当していたので、それぞれのビジネス構造や、ビジネスの本質の部分などの課題をすぐにつかむことが必要でした。
その経験があったので、ポケモンのさまざまな業態においても、何が大事かということが早く頭に入りました。
──では、逆にどんなことに苦労されましたか。
宇都宮:「実業を知らない」というのが私のコンプレックスでした。たとえば入社してすぐの頃、当選はがきをユーザーに6万通送るという仕事を担当したんですが、やり方がわからず、誰にどう頼んでいいかもわからず、途方に暮れました。
河本:私にも似たような経験があります。前職では、ロジカルに物事を進めていくことが一番に求められていました。ここでは、クリエイターの考え方や思いを深く理解して進めていくことの難しさに直面しました。
たとえば、発売前のプロモーション用にポケモンを「こう使いたい」とクリエイターに依頼しても、「まだ全部が決まってないから情報を出したくない」と言われたり。
宇都宮:でも、ロジックでは計測できない「こだわり」のような部分こそが「ポケモンらしさ」を作っているんだよね。そういうやり取りが面白いと思えるようになることが、この会社の一員になった証しだと思います。
河本:私も、世界同時発売のゲームの広報活動でクリエイターとコミュニケーションをとるうちに、その重要性に気付きました。
クリエイターの思いを理解した上で、ロジックでない部分を踏まえて、どういうコミュニケーションを設計していくべきか。そう考えた途端に、自分のアウトプットも大きく変わりました。
宇都宮:そういう意味では、入社当初「この企画、面白いからいいね」で話が進むことが不思議でした。「コストが安い」とか「確率が高い」ではなく、判断基準が「面白そう」。
でも、エンターテインメントの基本って、期待値を大きく超えるとか、びっくりするとか、面白いとか、そういうところにあるんですよ。ロジックは過去の積み上げなので、予測可能なもので、限界もある。
だから、「面白いと思うから、どうしてもやらせてくれ」みたいな強い気持ちが、結局、最終的な判断基準になるんです。外れることもありますが、大きくヒットすることもある。
短いスパンでは結構失敗していることもあると思いますよ(笑)。でも、株式会社ポケモンは、そういう挑戦をさせてくれる会社です。むしろ、やらなきゃいけない。
河本:もちろん、成功の確率を上げるためのロジックは組んでいますけどね。後々、失敗の経験によって新しい商品が生み出されていることもあります。

株式会社ポケモンは、ポケモンのためにある

──「ポケモン」というひとつのブランドで、ゲーム、アニメ、映画……とさまざまなエンターテインメントを展開する株式会社ポケモンは、聞けば聞くほど特殊な会社ですね。
宇都宮:「株式会社ポケモンとは何か」と聞かれたら、私は「ポケモンを永続的に輝かせていくための装置」だと答えます。
会社の企業理念は、「ポケモンという存在を通して、現実世界と仮想世界の両方を豊かにすること」です。私たちは、ポケモンのために貢献し続ける存在だと思っています。
河本:素晴らしいのが、社員はみんなそれを信じていること。それ以外の説明のしようがない。
宇都宮:面接のとき、「株式会社ポケモンは、いつなくなるかわからないよ」と言われました。浮き沈みの激しいキャラクタービジネスの世界で、ポケモンしかやらないのだから、当然です。
でも、「私たちはポケモンにすべてを懸ける」という話をされて、「よし、乗った!」と思いました。そして、そういう覚悟を持って働いてきました。
河本:社内での議論の際に、「これは、ポケモンのためになるのか」という会話が普通に行われていますし、私も入社以来、常に念頭に置いて仕事をしています。
宇都宮:常に前進する技術と社会に合わせて、株式会社ポケモンも変化し続けなければならないとも思っています。それが、「ポケモン」が生き残っていくことにつながる。難しいことですけどね。
そういう意味でも、いろいろなことに好奇心を持っている人に来てほしい。会社の中にさまざまな事業があり、複数の業態やエンターテインメントが集まっているから、変化を楽しめる人はすごく向いていると思います。
河本:ロジカルな判断基準を超えたところに「ポケモンらしさ」があるのだから、新しいことの先には何ひとつ確証がありません。でも、そういうことを恐れるんじゃなく、「面白い」と思える人と一緒に働きたいですね。
宇都宮:今の若手の人たちは、子どものときからポケモンに親しんでいる、いわば「ポケモンネイティブ世代」です。
世界中に散らばっているポケモンネイティブの異業種の人たちが、これまでポケモンとは縁がなかった意外なものを掛け合わせてくれると、もっと面白いことが起きるでしょう。予想を超える掛け算を目指してほしいですね。
実際、多様性は受容できる会社なので、ゲームやキャラクターコンテンツ以外からも、多種多様な人材が集まっています。世界中から魅力的な仕事も集まってきます。
ポケモンに興味がなくても、私たちのように働けますし、入ったら絶対好きになるので安心してください(笑)。
そうそう、今、河本はみんながわくわくするようなプロジェクトを責任者として進めているので、発表のタイミングをお楽しみに。
(編集:大高志帆 構成:相川いずみ 撮影:露木聡子)