ポイントは貯めずに、使う、投資する。真のポイント賢者とは

2018/2/14
「ポイントを使いますか? それとも貯めますか?」。レジでよく聞かれるこのセリフ。損しないための回答は「使い切る」の一択だ。いくらポイントを貯めても利子は付かず、実際に使うまでまったくメリットを享受できないからだ。
しかし、「ポイント好きには節約好き、貯蓄好きの人も多く、節約のつもりで、実は真逆の行動をしていることも多い」と、消費経済ジャーナリストの松崎のり子氏は言う。では、ポイントとどう付き合えばもっとも「お得」なのか。ポイントとの正しい付き合い方を学んでいこう。(全3回)
なぜクレジットカードのポイントを無駄にしてしまうのか
日本人は世界有数のポイント好き?
──日本は世界有数のポイント大国で、2015年度の国内のポイントサービス市場規模は1兆4440億円(出典:(株)矢野経済研究所「ポイントサービス市場に関する調査(2016年)」)と言われています。さらに今後も増えていくとされていますが、日本人の「ポイント好き」は国民性なのでしょうか。
これぞ、という論拠はないのですが、消費者の傾向を見ていると、日本人は「無料」のサービスに弱いように感じます。
日本では、レストランに行けば水もおしぼりも「無料」で出てきます。街にも無料のサービスがあふれている。ポイントもまた、買い物の「おまけ」でもらえる「無料」のサービスのひとつ。
「無料」の多い環境が、日本人を「ポイント好き」にさせているのかもしれません。
当然ながら、すべての無料サービスにかかる経費は価格に含まれています。ということは、「無料サービス」をつけてもらうよりも、それを受け取らずに価格を下げてもらったほうが、財布から出ていくお金は減る。
ところが不思議なことに、「◯%値引きします」という文句よりも、「◯倍ポイントを差し上げます」と言ったほうが、お客さまが増えたという話もあります。
「買い物が安くすんだ」という実感はその場限りなので、ポイントが貯まっていくほうがよりお得感を得やすいのかもしれません。
ポイントを使えなくなる「メンタルアカウンティング」とは
──実際に出ていくお金は減っていないのに、ポイントという「おまけ」に目がくらんでしまうということですね。それは「ポイント好き」の人には覚えがありそうです。松崎さんご自身は、クレジットカード等のポイントをどのように使っていますか。
私の基本スタンスは「ポイントは日々の支出を節約するためにどんどん使う」というもの。
ですから、共通ポイントやショップの現金ポイントは小銭が足りないときにまめに使いますし、クレジットカードのポイントも、生活のなかで使用頻度が高く、使う機会の多い電子マネーに交換します。
ポイントと景品を交換する場合も、たとえば1000ポイント必要な和牛などのぜいたく品ではなく、100ポイントで交換できる、普段の生活で消費する食材を選びます。料理をしない男性なら、コーヒーやジャム、お酒などがいいでしょうね。
ポイントをどんどん使うことに抵抗がある人もいますが、それは、行動経済学で言うところの「メンタルアカウンティング(=心の会計)」の作用によるものです。
たとえば、家計を「生活費」「車を買うための積み立て」「マンション購入の頭金」など細かく区切って運用しようとすると、ちょっと生活費が足りないときに積み立てを崩すことを必要以上に避けたり、逆に、生活費が余ったときに「残りはパーッと使ってしまって大丈夫」と無駄な出費をしたりしてしまう。
自分のお金であることには変わりがないのに、心のなかで「〇〇費」と分けることで、おかしな縛りが生まれる。これがメンタルアカウンティングです。
つまり、ポイントをほかのお金と区別して、特別なもの扱いしてしまい、本来、もっと便利に使えるはずのポイントを使いこなせないという事態に陥っているのです。
ポイントを貯めて、生活家電のような高価な物と交換したり、和牛などのぜいたく品をもらったりしたい。そう考えて、ちゃんと実行できるならまだいいのですが、豪華景品をもらうためには、それなりのポイントを貯める必要があります。
「ポイントの有効期限がもうすぐ切れてしまうから、もうちょっと買い物をしよう」なんてことになれば、本末転倒。しかも、和牛のようなぜいたく品は、一度食べてしまえばそれまで。
「普段づかい」できれば日常の出費を減らすことができるのに、もったいないですよね。
そのポイント、円に換算するといくら?
──そのように聞くと、メンタルアカウンティングによって「実はポイントをうまく使えていない人」はかなり多そうです。そのほかにも、「得」するつもりで「損」してしまうケースはあるのでしょうか。
そもそもショップが付与するポイントは、「次もよそではなく、うちで買い物してくださいね」とお客さんを囲い込むために始めたもの。
共通ポイントやクレジットカードのポイントも、基本的な考え方は同じですから、「今回の買い物でお得感を与える」ことよりも、「次の買い物でお得な気持ちになれる」ことを重視しています。
ポイントのそんな性質を押さえておかないと、カード保有者向けの「ポイント5倍期間」や優待デーなどの、いわゆる「おとり」にも簡単に引っかかってしまいがち。
買い物をする気がない人に、「得ができる権利」を与える。そうすると、「せっかくもらえる(はずの)ものなのに、使わないと損だ」と考えて、結果、不要な買い物をしてしまったりするのです。
そんなときは「ポイント5倍」と聞いてすぐに飛びつくのではなく、「本当にお得なのかな?」と立ち止まって、もらえるポイントを頭のなかでお金に換算してみましょう。
1%還元なら、1万円の買い物で100ポイント。これが1ポイント=1円換算なら100円。5倍だから500円。
こうやって計算すると、なんとなくの判断ではなく、具体的な検討ができます。
「500円をもらうために、今、わざわざ買い物すべきか?」と考えてみると、「もっと安く売っている店を探してみよう」「セールで値下げされるまで待とう」、あるいは「次のモデルが出るまで待ってみよう」などと冷静に判断できるはずです。
また、出張などでも手に入るからか、マイルを貯めている男性は多いです。
しかし、マイルを使いこなすのもなかなか難しいもの。貯まったとしても、有効期限内に旅行の日程を確保できないかもしれない。あるいは、「あと少し貯めればちょっといい旅行ができるぞ」と買い物をしてしまう落とし穴もある。
今は格安航空会社も増えていますから、本当はそちらを利用したほうがお得なのに、マイルを持っているばかりに、その選択肢が目に入らないということもあるでしょう。
「もったいなくて使えない」。ポイントの不思議
──「ポイント好き」が真のポイント賢者になるためには、どのような点に気をつければいいのか、ぜひアドバイスをお願いします。
繰り返しになりますが、ポイントを聖域にして大きく貯めようとせず、普段のお金同様にすぐに使うこと。ポイントを貯めれば貯めるほど、「もったいなくて使えない」リスクは高まります。
有効期限切れはまさにその代表ですが、極端なことを言えば、ポイントシステムが変更になるかもしれないし、お店がなくなるかもしれない。ビジネスパーソンなら、転勤した先に、同じポイントが使える店がないこともあるでしょう。
クレジットカードにも、現金でキャッシュバックがもらえるもの、翌月の支払いに充当できるもの、最近流行りの自動的に投資してくれるものなどがありますし、ポイントを電子マネーに交換すれば、普段の買い物ですぐに使えます。
仕事帰りにコンビニに寄って、晩酌用のビールやスイーツを買う習慣があるなら、そういうプチぜいたくにこそ、ポイントや交換した電子マネーを使うことをおすすめします。それなら、自分の普段の行動範囲で支出を増やさずにすむので、間違いなく「得」です。
それでもポイントを貯めたいという人は、必ず「出口」を決めて貯めること。
ポイントにはいろいろな使いみちがありますが、裏を返せば目的意識を持ちづらいということ。「今は使い先がないけど、いつか使うことがあるだろう」とか、「まだ決めていないけど、いずれ何か特別なものに使おう」と思っていると、貯めるだけ貯めて、使わないまま失効する悲劇につながります。
「マイルにして旅行をする」「キャッシュバックで現金にする」「他の共通ポイントや電子マネーに交換する」などなど、どんなことでも構いません。
貯めたポイントを何に使うのか。ポイントを「貯める」ことを目的化してしまわないためにも、使う意識を持つことが重要なのです。
もはや1兆円市場。 日本独自の「ポイント経済」
(編集:大高志帆 構成:唐仁原俊博 撮影:露木聡子)