【石川善樹】人類総「ホヤ化」の危機。小売業がAmazonに勝つ道は?

2018/2/18
小売業の視察に行ってきた
前回は「鋭い痛み」があってこそのリーダーの道というお話をしましたけど、例えば、普段来ないようなお店に来てみるっていうのも、ちょっとした痛みですよね。
おしゃれなカフェとかに間違って入ってみると、「おやおや、ダサい奴が来たぞ」っていう店員の視線が痛いですよね(笑)。
石川善樹(いしかわ・よしき)/予防医学研究者、医学博士
1981年、広島県生まれ。Campus for Hの共同創業者。東京大学医学部健康科学科卒業、米国ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。専門は予防医学、行動科学、計算創造学など。著書に『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』『疲れない脳を作る生活習慣』『仕事はうかつに始めるな』などがある。
……まあ、だからというわけでもないんですが、先日、1週間ほどニューヨークへ行って、全米小売協会の年次総会に参加してきました。
僕、小売っていうものにすごく興味がありまして。もちろんこれも、「これからのwell-beingを考える」ってことに関係してくる話です。
ところで、ここで一つお聞きしたいんですけど、みなさんは「ホヤ」をご存じでしょうか? 海にいる貝のことです。
なんで突然こんな話を出すかというと、僕が小売に興味があるってことと、この「ホヤ」が、ものすごく関係があるからなんですよ!
ホヤ(写真:Koki Iino/GettyImages)
人類に迫る「ホヤ化」の危機
まず、そもそも脳がある生き物っていうのは、動いているんですよ。
逆に、動いていない生き物には脳がないんですね。だから、動くっていうことは、脳がある生き物にとっては非常に重要なことなんです。
ところが、このホヤっていう貝は、動いている間は脳があるんですけど、自分が「今後はここで暮らすんだ」っていう安住の地を見つけると、自分の脳を食べちゃうんです。もういらないからということで。
で、Amazonとか中国の小売・流通を見ていて、僕は思うんですよ。人類はどんどん「ホヤ化」しているんじゃないかって。
「Uber Eats」とかを見ても、その場にいながらにして、どんどん便利なものが届くじゃないですか。
それって「脳、いらなくね?」と思うんです。
好きな店から料理を届けてくれるデリバリーサービス「Uber Eats」(写真:iStock/BalkansCat)
他にもVRとかARとかって技術が出てきて、どんどん動かなくても良くなっていっている。
これをさらに進めていったら、人類はいずれホヤになるんじゃないかと思うんですよ!(笑)
人類はいずれホヤになる!?(写真:David Wrobel/GettyImages)
人類のwell-beingを考えていった時、それは果たしていいことなんでしょうか?
やっぱり動いてこその人類だし、動いてこその脳なんじゃないか、と。
だから僕は、この「脱ホヤ」という志を持って、ニューヨークに視察に行ったわけです。
なぜなら、アメリカの小売業者の目下の悩みは、「いかにしてAmazonに勝つか?」ということであり、それはつまり「お店に来てもらう」という「脱ホヤ」的な発想につながるヒントがあるんじゃないかと考えたからです。