若者にカネを出して見守る。それが「大人」のやり方

2018/2/3
2017年、NewsPicksは丸ビルを舞台に一夜限りの酒場「丸の内ビジネス酒場」をオープン。お酒を片手に、見城徹氏、堀江貴文氏、亀山敬司氏、楠木建氏らゲストが本音トークを展開した。
今回、その中からDMM.com会長・亀山敬司氏のトークセッションを特別収録。丸の内や大手町にお勤めの来場者に向けて、「大企業とベンチャーの融合」をテーマに、脱力系ながらも本質を突く話が展開された。
ベンチャーの「無礼」を許容できるか
──本日の「丸の内ビジネス酒場」には、主に丸の内や大手町のビジネス街にお勤めの方が大勢詰め掛けてくれました。
亀山 DMMの亀山です。みなさんよろしく〜。今日は飲み放題らしいから、みんな飲もう!
高いディナーショーだから、俺もヒロミ郷に近づいたかな(笑)。ギャラはないから俺も飲む。ハイボールおかわりね〜。
亀山敬司(かめやま・けいし)/DMM.com会長
1961年、石川県加賀市生まれ。石川県でレンタルビデオ店を開業後、1998年にインターネット事業に参入。現在、動画配信、アダルトコンテンツ販売、ゲーム、3Dプリンター、英会話、FX、太陽光発電など、多岐にわたる事業を展開している。2017年1月、DMM.com社長の座を片桐孝憲氏に譲り、同社会長に就任。
──DMMは片桐さんに会長を譲られて1年経ちますが、うまくやっていますか?
頑張ってると思うよ。35歳の若造がいきなり上司になるのは、来た方も来られた方も大変。飲みに行ったりして、一生懸命コミュニケーションしてるよ。
この会場には大企業の人が多いらしいけど、この中に、外から上司が来た経験がある人は、どれくらいいるかな?
(会場、ちらほら挙手)
あら、意外と少ないのね。でも、これからは間違いなく、IT系の若造や外国人が上司として外部から来るケースが増えると思うよ。
AI(人工知能)の時代になるから、社員を減らして外からAIの技術部長を入れるなんてこともあるかも。大企業とベンチャー企業の融合だね。
既存の大企業は、信用も資金力もある、いわゆる「大人の世界」。ここ丸の内や銀座には、日本を代表する安定した企業が集まっている。
一方、IT系をはじめとしたベンチャー企業は跳ねっ返り気質で勢いがある。成長率は100~200%で伸びてるけど、1億の利益が2億になるとか、10億が20億になるレベル。こういう会社は、渋谷や六本木あたりに多いね。
JR山手線の路線図で見ると、丸の内や銀座は東側、渋谷や六本木は西側エリアにあるから「東の大企業、西のベンチャー企業」と言われる。なんだか番付みたいだけど、実際にけっこうエリアで分かれてる。
大企業とベンチャーが融合できれば面白いんだけど、ベンチャーの若い奴らって、まったく礼儀知らずが多いのよ(笑)。ホリエモン(堀江貴文氏)みたいに。
まあ、俺が言えた義理じゃないけど、あいつらは、打合せ中でもLINEが来たらスマートフォンをいじるし、無礼なのよ。
俺はもともとIT系じゃないから、会社で飲み会をすると、営業や販売の部署では社員が「お疲れさまです」って俺にお酌しに来る。でも、同じDMMでもIT系の飲み会だと、俺がビール持ってお酌しに行くからね(笑)。
エンジニアたちはそういう文化なわけ。礼儀作法よりも技術に興味がある。「こいつらに人の道を教えてやろう」と思っても、彼らにとっての「人の道」は俺たちとはぜんぜん違ったりする。
でも、世の中に新しいものを生み出してるのは、彼らであることも事実なわけ。
だから彼らに対して「礼儀がなってない」と怒ってしまうと何も前に進まない。東側大企業の「大人」はそれを許容して、西側の「子供」とどう一緒に生きるかが、融合のポイントになるんじゃないかな。
財務と法務は「大人」がチェック
──大企業がベンチャー企業の文化を許容しながら、それぞれの良さを生かして協力するには、何が大切ですか。
一番は、ベンチャー企業の勢いを削がないことだね。そのためには、彼らが暴れやすい環境を作ってあげることじゃないかな。
具体的には、ベンチャーは財務や法務が苦手だから、そこをフォローする。DMMでも各事業の財務と法務はホールディングスがチェックしている。
ベンチャーは事業を始めるとき、苦手な資金集めに駆けずり回るけど、その時間を技術開発に充てたほうがいいからね。
法務でいうと、GoogleやYouTube、Airbnbは今や世界の主流だけど、日本でいえばスタート時点ではほとんど法律違反だよね。ITは過去にないものを創造しているんだからグレーゾーンのものが多い。
でも大手企業はこれまで培った信用や責任があるからグレーには突入できない。そこに入っていって新しい価値を作れるのが、ベンチャー企業の良さなんだ。
そうは言っても、ベンチャーの若者は法律を気にせず突っ走ることもあるから、「どうみてもダメだろう」という時は止めてやらないと不祥事になる。それをチェックするのが大企業の役目じゃないかな。
大企業がベンチャー企業に「俺たちの成功体験を教えてやるよ」と言っても通用しない時代になってきている。それよりも「俺たちが守ってやるから」と環境を整えてやれば、若い奴らは勝手に暴れて力を発揮すると思うんだ。
大事なのは、大企業は金は出すけれども、口は出さないこと。テクノロジーやアプリのデザイン、社名などはすべてベンチャーに任せる。好きなようにやらせておいて、時々「お金がありません」と言ってくるのをフォローしていればいいと思う。
──それはなぜですか。お金を出すのに口が出せないとなると、大企業としては「いいとこ取り」をされた形になりませんか。
そうなのよ。大人は割に合わないのよ。最近の俺の仕事は、資金繰りや失敗した事業の廃残処理ばかり。つまらない仕事ばかりやらされてるのよ〜。
でも、答えは簡単で、口を出すとうまくいかないから。大企業が小さなベンチャー企業を買収・子会社化する例はよくあるけど、大企業の人材を技術や営業のトップに送り込むと、文化が合わずに、べンチャー側が「やりにくいから辞めます」となってしまう。
そうなったら、せっかく買収した意味がないよね。ロックアップ(退社を一定期間制限すること)という方法もあるけど、モチベーションが落ちた人をロックしてもしょうがない。
ベンチャー企業を買収したら、財務責任者(CFO)と法務だけ送り込んで、会社がちゃんと回るチェックさえしておけばいい。
テレビ局買収は「逆」ならよかった
いつも思うんだけど、大企業は会社に溜まっている資金をもっと吐き出して、ベンチャー企業や新規事業に突っ込むと日本はもっとおもしろくなるよね。
うちなんか資金がショートしない程度の勢いで、有り金をほとんど投資してる。金も水も流さないと腐るからね。
俺なら、新しくて面白そうなサービスが登場したら、当たるかどうかわからなくても、とりあえず金を入れておく(注:このイベントの直後、現金化アプリ「CASH」の運営企業を70億円で買収することが発表された)
DMM亀山会長・独占告白。「CASH」70億円買収の真意
大企業は、投資の重要性をもっと認識したほうがいい。10年以上前、ホリエモンや楽天の三木谷(浩史)さんによるテレビ局買収騒動があったけど、あれも本来は逆なんだ。
テレビ局がもう2~3年早く動いて、ホリエモンや三木谷さんの力がまだ小さいうちに彼らを買収していれば、TBSは楽天を、フジテレビはライブドアを傘下に収めて今ごろイケイケだったはず。
それを放ったらかしにしてきたから、力を持ったネットを変に敵対視・小物扱いしなきゃいけない。
自分たちを脅かす可能性があるものには、ひたすら金を入れておく。そうすれば、大企業が新しい技術やトレンドを吸収できるし、社員も常にイケイケになれる。大企業がベンチャーに投資する本当の価値はココだよね。
そのうえで、ホリエモンやミッキー(三木谷氏)のような人材が辞めないように、口は挟まない。これが、大企業ならではの「大人のやり方」じゃないかな。子育てでいえば、広場と公園を作って、「遊んでいろよー」と一歩引いたところで見ている感じ。
そこから生まれるものを拾い上げるほうが美味しいと思うよ。美味しいハイボールもう1杯お願いしま〜す!
(聞き手:野村高文、構成:合楽仁美、撮影:是枝右恭、デザイン:九喜洋介)