若手研究者の知られざるキャリアパス
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今日の昼に、 #jwave #stepone813 で、昨今の若手研究者問題や研究者の状況を紹介しました。この15年の大学改革の速度は速く、その一方で卒業後大学に戻る人は少ないですから、既に年長世代の人たちの大学認識は必ずしと現状と合致しなくなっています。ぼくが学部学生だった10数年前と比べても職場としての大学は大きく変貌しています。ごく短いコーナーではありましたが、今後もいろいろな機会にアカデミズムの紹介はしていきたいな、と思います。社会に対するアカデミズムの説明を怠ってきた/少なかったことが、いまの日本のアカデミズムに対する不信感や現場のニーズと検討外れの大学改革政策を招来したのではないかと考えるからです。
誤解をして欲しくないのは、研究不正と研究者雇用問題は別だということ(※)。ここで、西田さんが強調しているのは、問題の背景に研究者の雇用問題があるということであって、研究不正との因果関係や相関関係を述べているのではありません。ほとんどの任期付き職にある研究者はまともに研究活動を行っています。研究者雇用問題が、ポスドクや特任助教(准教授)などの有期雇用の研究者に相当なプレッシャーをかけるのはその通りで、実際私自身も安定雇用を得るのに10年かかりましたし、それまでは2、3年の有期雇用の繰り返しです。とはいえ、ジャーナルに出してもすぐつき返されるような(たとえつき返されなくても)レベルの低い研究をしていてもしょうがないです。その意味では、才能や資質をスクリーニングするためにそこそこ厳しい競争環境は研究者に取って必要です。そこで具体的な策として、雇用年数を5年にするとか長めに取る措置はあっても良くて、実際一部では5年任期を二回繰り返し最大10年というパターンも出てきています。また、わずかなポストですが任期付きから任期無しに移行するパターンも出てきています。ちなみに、研究不正に対する個人的な意見は、ここでピックされた記事のコメント欄で書きました(※)。
【※】https://newspicks.com/news/2771792若手研究者にそもそも「キャリアパス」なんてものは存在しない。
この問題は、研究のリスクを誰が取るか、という問題だと思います。
日本のような官僚アカデミズムの世界では、研究費の差配を官僚(文科省傘下のJSTの科研費が中心)が行います。
記事にもあるように、その「研究費に対する獲得競争によって研究の質は高まる」というのが官僚側のタテマエですが、研究費は税金であり、JSTとしてはその成果の評価でミソがつかないように、できるだけ安全で予定調和的な研究計画を要求します。「競争的資金」とは名ばかりで、競争しているのは資金を持つ側ではなく、資金を供給される持たざる側なのです。
予定調和のイノベーションなどあり得ないので、研究者は無理矢理具体的な計画を書き、現実と計画のズレに対する責任を研究者が負います。予定通りいかないと、追い込まれやすい立場にあるわけです。
本来、国が支給する研究費は、ビジネスで求められるような短期的利益に結びつかない、長期的視点をもって広い社会波及効果を狙ったリスクマネー投資であるべきなんですが、対象領域はそうなっていても、制度上"ファンド"側がリスクを取れない(公務員だから)ため、個々の研究者の人生にしわ寄せが言ってしまうのです。
それを回避するためには、研究費の差配をする専門の民間人を登用するなどして、そのパフォーマンスに応じて社会的制裁を受けるという形をとることで、研究費をもらう側が背負うリスクを肩代わりすることが考えられます。