米政府閉鎖が物語る2018年の政治
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突発的な事件ではなく、長年にわたって積み重なってきた予算プロセスの崩壊が、このタイミングで顕在化した格好です。移民問題やトランプは、たまたまそこにあった引き金に過ぎず、例えば大統領選挙が違う結果になっていたとしても、違うシチュエーションで似たような事が起こっていたでしょう。
オオカミ少年の教訓通り、やはりオオカミはやってきたわけですが、本丸の債務上限引き上げは、まだこれからです。経済や市場に大きな影響が出なかったとしても、異常事態であることに違いはありません。政治がおかしくても機能する米国の姿はさすがですが、議会が機能していない点を評価する余地はないでしょう。
トランプの責任だと論じて済ませる訳にもいかない筈であり、むしろ、こうした機能不全への不信があるからこそ、トランプが誕生したという理解の方がしっくりきます。トランプ誕生時の問題意識に立ち返させられるという点では、就任一年目に適した出来事だと言えそうです。政府閉鎖や政府債務の上限拡大をめぐる大統領と議会の折衝の難航はオバマ政権でも起きていたことであり、やはり根本にあるのは毎年増大を続ける米国の財政赤字でしょう。
トランプ政権に問題があるとすれば、移民問題以前に、歳出の大幅拡大(インフラ整備)と減税を掲げる政権であることでしょう。それと、トランプ大統領個人が、政府閉鎖を物ともしないのではないかという印象を与えていることでしょう。
1971年のニクソン政権のドル・ショックは、50年代からの軍事支出、対外援助、そして貿易収支の赤字拡大によってもたらされました。その後、80年代のレーガン政権において貿易赤字と経常収支の双子の赤字を抱えるようになり、現在に至っています。
トランプ政権は財政支出は拡大し、貿易赤字は縮小させると主張しています。本当に貿易赤字が縮小して双子の赤字が解消されるなら大したものですが、楽観できません。むしろ状況はニクソン・ショックの時に近づきつつあるように見えます。そもそも、米国による国際秩序は米国が貿易赤字を抱え込むことによって維持されてきたもので、その役割が放棄されるのであれば、秩序のあり方も変わらざるをえません。