インドネシア:2017年2回目の貿易赤字

2017年12月のインドネシアの貿易収支は3億ドルの赤字、2017年通年では110億ドルの貿易黒字となった。単月赤字が1度もなかった2016年に比べると、2017年は単月で赤字の月が2回あり、月によって振れがやや目立つ年となった。

近年、インドネシアで貿易黒字が大きかった時期は、2010〜11年にかけてである。当時は原油価格が1バレル=80〜110ドル前後と高値が付いており、輸出を押し上げ、貿易収支は黒字基調となった。原油価格は2017年7月に底を打ち、上昇基調に転じて足元では1バレル=60ドル台まで回復した。
インドネシアでは自動車などの製造業製品の輸出が徐々に増加しているものの、依然として、原油や天然ガスといった天然資源が主要な輸出品である。今後の原油価格は、中長期的にはほぼ横ばいまたは緩やかな上昇が予想されている。そのため、インドネシアの貿易収支が恒常的に赤字化する可能性は低いとみられる。

タイ:景気回復、家計部門にも鮮明に

タイの2017年12月の企業景況感は50.2と発表され、11月の51.3から下落したものの、5月から8ヶ月連続で「改善」を示す50超は維持した。
同年12月の消費者信頼感は79.2となり、4ヶ月連続で改善が続いた。「楽観的」を示す100からは、依然として大幅に下回っているものの、過去5年間で最も良好だった水準の80台に迫っている。
2017年のタイは、企業景況感など供給サイドに関連する指標は、早い段階で改善へと向かったが、個人消費など需要サイドの回復が遅れていた。他方、最近のマクロ指標のトレンドからは、需要サイド、特に家計部門がしっかりとした回復基調になりつつあると評価できよう。


マレーシア:マハティール元首相が総選挙に出馬表明

2017年11月の小売売上高は、前年同月比+10.5%と好景気を反映して高い伸び率を維持している。
マレーシア・エアポーツ・ホールディングスは1月10日、2017年通年でマレーシア国内の空港利用者(国内線・国際線)が述べ9,653万6,000人に達したと発表し、2018年は1億人を突破するとの見通しを示した。国内の高成長によるビジネスや個人旅行の需要増に加えて、マレーシアは世界大手格安航空(LCC)のエアアジアの創業の地であり、ハブ空港のKLIA2が位置していることから、国内外からの利用者が増大しているとみられる。
なお、1月に入り、降雨が続いており、冠水等の被害が散見され、農作物の育成への影響が懸念されているが、現時点ではマクロ経済や産業に打撃を与えるほどの影響はでていない。
このほか、政治情勢では、2017年末、マハティール元首相が総選挙への出馬の意向を示したことが報じられた。
マハティール氏は、2016年に最大与党統一マレー国民組織(UMNO)を離党し、マレーシア統一プリブミ党をムヒディン元副首相(ナジブ首相により更迭)らとともに結党していた。マハティール氏は野党連合の議長も務めており、総選挙に際し、野党はマハティール氏を首相候補とする可能性があるが、他党の有力者の中には反発をする動きもみられる。

フィリピン:好景気を背景に貿易赤字拡大続く

2017年11月の貿易収支は、クリスマスの需要増にあわせて輸入が増大し、▲38億ドルと過去最大の赤字幅を記録した。
近年の輸入額は増大傾向が続いており、好景気に伴う家計消費の増大や、外国からの直接投資の増大に伴う機械・設備などの輸入が増加していることを反映している。こうした現象は、新興国の高度成長の過程では典型に起きるものであり、徐々に国内での消費財や機械・設備の生産ができるようになると、輸入が抑制される傾向へと転じる。

シンガポール:17年Q4は3.1%成長と好調

シンガポールでは1月2日、2017年10-12月四半期の経済成長率(実質GDP)が前年同期比+3.1%と発表された。金融・保険、サービス業が好調だった。また、7-9月期についても同+5.2%から同+5.4%へと上方修正が施された。
2017年通年では前年比+3.5%と、政府が当初目標としていた同+1.0〜3.0%から上振れ、2014年以来の3%台の成長を実現した。
経済成長率の前期比ベースでは10月-12月期は同+2.8%となり、7-9月期についても11月23日に発表されていた同+8.8%から上方修正され、同+9.4%へと改訂された。
2017年のシンガポールは、通年で世界的な景気回復やIT需要の増大を背景に精密機器を中心とした製造業が好景気を牽引し、年後半になって金融やサービス業部門も寄与したと評価できよう。
また、2017年10-12月期の住宅価格指数は速報値として138.6、前年同期比+0.7%と発表された。2013年7-9月期の154.6をピークとして下落が続いて、2017年4-6月の136.6が最低値となった後、2期連続で上昇が続いた。実際の需給関係なども考慮する必要もあるものの、シンガポールの住宅価格は緩やかな上昇が続く可能性が高まっていると言える。

次回(1/16-31)の注目点

次回のレポートの対象となる1月16〜31日では、フィリピンで2017年10-12月期のGP統計が発表されるほか、インドネシアとマレーシアで金融政策決定会合、インドネシアで外国直接投資額(2017年10-12月期)、タイで現況指数(2017年12月)と小売売上高(2017年11月)、シンガポールで住宅価格指数(2017年10-12月確定値)などが注目すべき指標である。