【独占1万字】顔出しNG。老舗を「ゼロ」から作り直した男の正体
コメント
注目のコメント
「雑誌のインタビューも、テレビ局の番組撮影の依頼も、ほとんど全てお断りしています。すみません」。それが中野社長にインタビューしたいと最初にお願いした時の、偽りのない、寺田倉庫さんからのお返事でした。
それでも幸運なことに、NewsPicksにインタビューをする機会をもらえました。私が個人的に興味をもったのは、台湾や中国の企業に飛び込んで、日本人として経営の腕をふるってきたキャリアです。プロの経営者として、高いプレッシャーと激しい競争にさらされた海外経験が、この寺田倉庫を「激変」させたパワーの根源の1つではないでしょうか。
中野社長の自宅はいまも台湾にあり、平日は飛行機で「通勤」をして、またおやすみの日には台湾に戻っていくという生活サイクルを繰り返しているようです。ルックスも行動範囲も、73歳にはとても見えませんでした。
またインタビューの最初に、経営仲間であったダイエー創業者の中内功さんや、ここでは名前を書いていない有名経営者たちが、いかにメディアから「時代の寵児」として持ち上げられ、そして表舞台から去ったかも語ってくれました。メディアで働くものとして、自らを問うことにもなりました。これはすごい。備忘的にメモメモ
・立て直しでなく、新しい企業を作った
・将来的に抱えている必要がない資産は全て売る
・「トランクルーム」「文書保存」「不動産」のメイン3事業ともやる意味はない
・損はしていないが儲かってない事業を抱えて1000人の社員がいるのは正気でない
・新しい会社を作るのに1000人は多いし、倉庫内の作業だけ出来る人は不要
・売却すれば雇用は継続されるので売却
・天王洲の不動産を高付加価値化
-原価の10倍で売れないと意味がない
-アートやワインはただ保管するのでなく鮮度や状態を保ちモノの情報を活用する
-BtoBは下請けになるのでBtoCに舵を切る
-一新した最新設備、安全性と立地を活かして華僑の客を取り込む(ワインの3割)
・100億規模がちょうど良い。新しいことをやるには何かを売却
・オーナー家とも一切相談せずに断行インタビューと執筆を担当しました。
特集取材をしていて、社員の方、関係者の方から、出てくる今の寺田倉庫のキーワードは、「圧倒的なスピード」です。「3ヶ月で普通なら1年かかることをやっている」と言う方もいました。
その圧倒的なスピードを引っ張っているのは、中野社長の感覚なのでしょう。直接お会いしてそんな印象を強く持ちました。
「ここまでやれば大丈夫」と「このスピードくらいでないと」と自分の中で持っている合格ラインをすごく明確に、人よりも厳しいところにその合格ラインを持っている。それは、アジア企業の経営に携わり、生き抜いてこられた経験からなのでしょう。
こういうプロ経営者がもっとたくさん出てきてほしいですし、中野社長の経験を、もっと次世代に伝えていきたいなと、若輩者ながら思った次第です。