今期(12/16-31)の注目点

ベトナムで10-12月期の経済成長率(実質GDP伸び率)が前年同期比+7.7%、2017年通年で同+6.8%と発表された。
フィリピンでは民間調査会社による大統領満足度調査が発表され、依然としてドゥテルテ大統領に対する国民の満足度が高いことが示された。

インドネシア:首都の交通インフラ開発進む

2017年12月26日、スカルノ・ハッタ国際空港からジャカルタ中心部を約1時間でつなぐ空港鉄道「スカイトレイン」の試験商業運行が開始した。運営会社のレールリンク・インドネシア社は、正式運行後には、1日あたり3万3000人以上の乗客を見込んでいる。
ジャカルタはアジア有数の激しい渋滞の都市として知られているが、空港鉄道の開通は渋滞緩和に向けた前進と言える。ジャカルタ市内のMRTやLRTの開発も進んでおり、時間は要しているが、着実にジャカルタ周辺の交通インフラは改善に向かっていると評価できよう。

タイ:政策金利は当面据え置きの方針

タイ中銀は12月20日、定例の金融政策決定会合を開催し、21会合連続で政策金利を現状の1.5%で据え置いた。
会合後の声明文においてタイ中銀は、世界経済の堅調な拡大が続き、内需も段階的に回復基調にあるとの認識を示した上で、インフレ率は政府目標の前年比+0.7%に近付いていると判断し、政策金利は現状の水準が適切とした。経済成長率の見通しについて、9月時点の+3.8%から+3.9%へと上方修正した。
今後のリスク要因としては、米国の禁輸政策の影響を受けて、為替相場が不安定になる点を指摘し、十分に注視していく姿勢だ。
また、ウィラタイ中銀総裁は12月25日、景気回復を支えるため、政策金利は当面は据え置くと発言している。
11月の現況指数は129.7となり、長期的な上昇基調を維持している。10月の小売売上高は前年同月比+6.0%と、9月の同+9.0%からやや減速したが、長期的には回復基調にある。
また、11月の自動車販売は7万8082台で同+20.6%と高い伸びを示し、累計では76万7348台に達した。したがって、2017年通年では、2016年の販売台数76万8788台を上回ることが確実となった。自動車販売台数が前年から拡大するのは5年ぶりとなる。
これらの指標を総合すると、依然として緩やかなペースではあるものの、景気回復は個人消費のレベルにまで波及しつつあると言えよう。

マレーシア:中銀、仮想通貨によるマネロン防止へ

マレーシア中銀は仮想通貨取引について、顧客情報や取引記録の開示義務に関する制度の草案を公表し、2018年1月14日まで意見の公募(パブリックコンサルテーション)を開始した。
同中銀は、仮想通貨は法定通貨ではないとの認識を改めて示し、仮想通貨を管轄する権限はないものの、マネーロンダリングなどの犯罪防止の必要性という観点からは制度構築をする必要があると述べている。
現状の中銀の仮想通貨に対するスタンスは、厳しい規制を導入するのではなく、あくまで犯罪防止という視点から関与していくとみられる。12月16日にマレーシア現地紙は、マレーシアでは月間7500万リンギ(約20億7000万円)の仮想通貨の取引が行われていると報じた。

フィリピン:大統領に対する満足度は「非常に良い」

民間調査会社ソーシャル・ウェザー・ステーション(SWS)は、2017年10-12月期の大統領満足度調査を発表した。今回は58となり、前回7-9月期の48から回復した。
ドゥテルテ政権発足後の最初の調査(2016年7-9月期)では64であり、緩やかな下落傾向ではあるものの、SWSが定義する「非常に良い」(50ポイント)を上回っている(注:「満足度」は、満足と回答した割合から不満と回答した割合を引いた値)。
満足度が特に高い地域は、ドゥテルテ大統領の出身地のダバオがあるミンダナオ地方で80であり、続いてマニラ首都圏の55となっている。
ドゥテルテ大統領は歴代大統領と比較しても、高い満足度を獲得している。
ただ、過去の傾向をみると、政権発足後2年ほど経過すると大幅に落ち込むパターンが多い。SWSは、フィリピンで信頼性の高い調査機関の一つとされている。ドゥテルテ大統領が2018年も高い満足度を維持できるか、要注視だろう。

シンガポール:堅調な製造業輸出が続く

11月の非石油部門輸出は、前年同月比+9.1%と堅調な伸びを示した。シンガポールの好景気は、製造業部門が牽引しており、その多くが外需向けである。輸出額は、在庫サイクルや輸出先の季節要因などで短期的に上下するため、中長期的に観察していく必要がある。

ベトナム:2017年通年で+6.8%成長

ベトナム統計局は12月27日、10-12月期の実質GDP成長率を前年同期比+7.7%と発表し、7-9月期の同+7.5%から加速した。通年では前年比+6.8%となり、政府目標の同+6.7%を上回った。ベトナムには韓国サムスン電子によるスマートフォンGalaxyの世界最大の工場がある。今年も、製造輸出に貢献してベトナム経済を牽引したと言える。
また、2017年通年の外国人旅行者数は前年比+29.2%の1292万人と発表され、観光業に関連するホテル・レストラン、商業も好調な経済成長に寄与した。なお、12月単月の外国人旅行者数は年間最高の127万6400人となり、クリスマス休暇シーズンを受けて同+42.2%と著しく高い伸びを示した。
12月の貿易収支は▲5億ドルの赤字だったが、2017年通年では輸出額が+21.1%と高い伸びを示し、26億7400万ドルの黒字となった。
輸出先を国別でみると、1位は米国415億ドル(前年比+8.0%)、2位はEU383億ドル(同+12.8%)、3位は中国353億ドル(同+60.6%)、4位はASEAN217億ドル(同+24.5%)、5位は日本168億ドル(同+14.2%)となった。中国向け輸出の著しい伸びが目立つ。
かつてのベトナムは、慢性的な貿易赤字の状態であったが、2年連続の貿易黒字国となり、貿易構造が大きく変わったと言えよう。

次回(1/1-1/15)の注目点

インドネシアで消費者信頼感(12月)、インドネシア、マレーシア、シンガポールで小売売上高(11月)といった消費者サイドの景況感を示唆する指標が発表される。