中国のネット経済は経済発展の原動力にはなりえない
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注目のコメント
おもしろいです。
華民教授の主張で最も気に入った点は、
①中国のどの学者も必ず言及する「中国は、イノベーション(創新)で成長する」などとは言わないところ。
②ネット経済はゼロサムゲームだ、と喝破しているところ。
の2つで、これには同意です。
しかし処方箋については賛成できない部分があります。
輸出主導にすべきとか、一人当たりGDPを持ち出すところは、経済発展というものが「豊かになるの一本道」であるとの発想から抜け出せていません。
現代経済は生き物であり、また相手があって競争しているわけですから。
また毛沢東の破壊が鄧小平の成功に繋がったというのは、歴史的分析からみればその通りですが、巨大な経済になった今の中国にある種の「破壊」を求めるのは非現実的なので、これは教訓にはならないでしょう。ECも輸送能力が限界に近づいてきているので、踊り場に来ているのは確か。中国の経済を支えているのは今もまだ不動産と不動産投資に支えたれた鉄鋼。こちらも規制により過剰な不動産投資が抑えられているのでニューエンジンが必要です。物流改革が必要なのは中国も同じですね。
復旦大学の華民教授の講演。やや悲観的なのではないかと思われる向きもありますが、優れた着眼点をいくつも示していると思います。こういう悲観的というか批判的な論考ができるのは、中国に人材が豊かなことの表れで、シンガポールの官僚やエコノミストなどにはよく見られる発想だと思います。
悲観的に見えるというのは、
・中国のネット経済は他の雇用機会を奪っているだけで、新たな富を創造してはいない、ということですが、中国国外への展開も含めて、まだ今後の可能性はどうともいえないところが多いと思います。
・中国の内需はまだまだ小さいということですが、これもインフラ整備やネット経済と合わせて、かなり短期間で拡大しうるかもしれません。もちろん、指摘されているように、田中角栄の「列島改造論」とも見紛う膨大なインフラ整備、特に西部大開発を含む地方の開発は、経済成長に資する以上に負担となり、行政府の負債体質を深刻なものにするというのは大いにありうることだと思います。
日本の事例を反面教師としているのは素晴らしいことで、
・プラザ合意後の対応後の日本の産業が国外移転した例を非常な失敗であると見ています。このことは一帯一路政策への批判ともなりうるでしょう。
文化大革命が、改革・開放後の急速な発展を準備した、というのは私もそういう面があったと思います。文革がなくて劉少奇があのまま続けていれば、現在よりも早い段階で成長が停滞し、共産党も成果を挙げないまま腐敗して命脈が尽きていたのではないかとも思います。