中古品業界は、小売業界の20倍の速度で成長しているとされる。中古衣料の販売にITテクノロジーを取り入れたスレッドアップ(thredUP)は、その注目株だ。

新品購入と変わらない体験を提供

質のいい古着や中古のアクセサリーを手に入れるには、ほんの10年ほど前でも、リサイクルショップへ出向き、たまたま売りに出ている良品を探すというのが一番確実な方法だった。
しかし、ビッグデータやモバイル、人工知能(AI)の時代を迎えた今はもう違う。他の多くの業界と同じく、中古品売買もテクノロジーによって生まれ変わりつつある。
デジタル化を牽引するのは、スレッドアップ(thredUP)をはじめとする企業だ。
中古品を買いたければ「イーベイ」や「クレイグズリスト」などのサイトが以前から存在するし、最近ではフェイスブックの個人間売買機能「マーケットプレイス」など、ソーシャルメディアを利用する選択肢もある。
しかしスレッドアップは、ITテクノロジーを使って衣料品ベースのプラットフォームと流通システムを確立し、新品を購入するのとほぼ変わらない体験を提供していると、同社のCEOで共同創設者のジェームズ・ラインハートは説明する。
「スレッドアップは、これまで中古品売買の魅力を損なっていたさまざまな作業をテクノロジーで代行している。当社は、買い手と売り手の間に入って、1つ1つの品物の検査、価格設定、撮影、販売を1日に最大10万点もの規模で行う。(中略)すべての品物は手作業で検査され、良質な衣料品だけがオンラインに売り出される」
スレッドアップでの買い物は、同社サイトで品物を閲覧、検索するだけ。アマゾンのような大手小売業者やブランドのサイトと変わらない。さらには、パーソナライゼーションのアルゴリズムによって、顧客の購入履歴に基づくお勧め商品を提案する機能も備える。
支払いには、スレッドアップに古着を売った際の売上金が使えるほか、通常の買い物と同じくクレジットカードも利用できる。購入が完了すると、注文した品は梱包され、発送される。手間いらずだ。

取り扱いブランドは3万5000種以上

そのうえ、サイトには1時間に約1000点のペースで続々と新しい商品が入荷する。同社の扱うブランドは「J.クルー」「ルルレモン」「ケイト・スペード ニューヨーク」「マイケル・コース」など、定番ブランドや高級ブランドを含めて3万5000種を超える。
そしてスレッドアップもアマゾンと同様、顧客体験のオムニチャネル化を進めるべく、オンラインと実店舗のバランスを模索している。2017年だけで3つオープンしたリアル店舗では、店内の商品をスキャンすると類似の在庫商品を多数検索することが可能だ。
「かつては売りたい服を地元のリサイクルショップまで持ち込まねばならず、売り値も、評価する人間によってまちまちだった。
しかし今ではすべて簡単になった。スレッドアップの専用売却キット『thredUP Clean Out Kit』を注文し、それに売りたい服を入れ、送料前払い済みの発送ラベルを使って送り返すだけだ」と、ラインハートCEOは語る。
「スレッドアップ独自の自動化システムにより、人手を介するより速く品物を処理・撮影し、オンラインに売り出すことができる。
また当社は、機械学習アルゴリズムを用いて、何をいくらで買い取るべきかを季節的傾向や過去のデータから判断しており、それら数百万のデータポイントを基に、小売価格と比べて最大90%オフの価格設定を行っている」

ミレニアルから富裕層まで、幅広い顧客層

ラインハートCEOは、スレッドアップで古着を売買している最大の顧客層はミレニアル世代だとみている。
これは非常に納得のいく話だ。ミレニアル世代はテクノロジーやオンライン活動に慣れ親しんでいるだけでなく、エコフレンドリーなライフスタイルを追求する人が多い。また意外なようだが、就職難や重いローンの返済にあえぐこの世代は、節約志向も強い。
しかしその一方で、65歳以上も大きな顧客層になっている。
仕事をリタイアして収入が減るこの年齢層には、スレッドアップを利用することで、良質なワードローブを比較的低コストで維持できる点が受けていると考えられる。またこの年代は、老後を楽しむにあたって、クローゼットを整理し、服を処分することも多い。
さらに驚くのは、富裕層までもがスレッドアップを利用していることだ。実際、同社の最もアクティブな顧客の最大10%が、この社会経済層に該当するとラインハートCEOはみている。
しかし、これもさほど説明の難しい現象ではない。無駄を出しているようでは成功者になれないからだ。加えて最近では、シェアリング・エコノミーを基盤としたビジネスを展開するCEOや起業家も増えており、彼らが中古品の売買というコンセプトを敬遠するとは考えにくい。

小売業界の20倍の速度で成長遂げる

こうしたアプローチにより、スレッドアップは、ゴールドマン・サックス、ハイランド・キャピタル、トリニティ・ベンチャーズといった大手投資会社からの支援を取りつけている。またすでに、以下の大きなマイルストーンを達成している。
・サンフランシスコ本社に1000人の従業員
・4つの物流拠点
・ニューヨークに広報部門
・配送エリアを26カ国から44カ国に拡大する見通し
・2017年の販売品数が1000万点に達する見通し
他の優れた企業と同じく、スレッドアップは進化を続けている。ラインハートCEOによると、顧客1人あたりが廃棄する衣類の量は年間約27~32キロにもなり、また彼らのクローゼットに収められている衣類は、小売価格にして約2200億ドルの価値を持つが、その70%は着用されていないという。
こうした無駄を減らすために、スレッドアップは先ごろ「Goody Boxes」(グッディ・ボックス)というサービスも開始した。15点ほどの衣類を顧客が購入前に試着できるというもので、古着をオンラインで購入することへの不安を和らげる効果が期待される。
中古品の販売といえば、非営利団体のグッドウィルや救世軍などが運営する昔ながらの事業があり、今でもそれらを支持する消費者は多い。こうした事業が支持を集めるのは、中古品を扱うだけでなく、地域社会に貢献する側面があるからだ。
しかし、スレッドアップのように、テクノロジーを活用して幅広い顧客層の需要に応える企業が登場したおかげで、中古品業界は大幅に活性化しつつある。実際、中古品業界は小売業界の20倍の速度で成長を遂げており、2021年に330億ドル規模に達すると予想されている。
ここから得られる最大の教訓は、イノベーションを起こすのに必ずしも新しいものを扱う必要はないということだ。場合によっては、以前からあるものを新しいやり方で扱うことが、最大のイノベーションになる。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Wanda Thibodeaux、翻訳:高橋朋子/ガリレオ、写真:AnikaSalsera/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.