【山田桂一郎】観光産業に必要な「体験」「高付加価値」「共感」
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今回のインタビューでは取り上げることが出来なかった話題の一つに「オーバーツーリズム」があります。今日のニュースにも出ていましたが、世界各地で観光客の増え過ぎによる弊害が問題になっています。
ヨーロッパではEUが「持続可能な観光地経営のためのヨーロッパツーリズム指標システム(ETIS)」を設定したことで、観光・リゾート地が持続可能な経営を行うために活用できるツールが確立されています。日本も過去にオーバーユース問題に取り組んできたことはありますが、これからは規制等だけでなくETISの様な地域が自主的に経営指標として導入出来るシステムの構築が必要ではないでしょうか。
今後、増え続ける訪日外国人旅行者によるオーバーツーリズム問題が深刻化することが既に想定出来ているのならば、観光先進国として先手を打つのは当然だと思います。他では得られない独自の体験を用意することで観光地の付加価値を高める、それによって比較的多く支出する、リピーターとなりうる観光客を引きつける、というのは日本における観光の一般論としては大いに妥当な方法だと思います。
極端な話、サウディアラビアのメッカのように世界で唯一の聖地、であれば毎年数千万人に上る外国人訪問者を確実に確保できて、リピーターも非常に多くなります。
タイやマレーシアあたりだと、かつては日本、今は中国や韓国などからの格安パックツアー団体客を大量に呼び寄せることで薄利多売の収益を上げています。そういう商売の仕方もありますが、日本の場合は家電製品がそうであったように、薄利多売では競合できず立ち行かない、ということでもあるのでしょう。ありふれたリゾートや歓楽の提供であれば、タイには太刀打ちできないのでしょう。
日本は、宗教や文化における世界唯一の聖地というわけにはいきませんが、和食なども含めて、文化的にはそこそこの知名度があります。
日本人の海外旅行でも、ハワイは相変わらず人気ですが、1980年代の日本人と現代の日本人ではハワイに求める者が異なっており、特に若い層だと文化的な体験を重視していると思われます。中国人の海外旅行でも特に若い層から同じような変化が起きていくのでしょう。
そのためにも、この記事にあるように、市町村単位で思いつきのような小さな予算の観光村おこしをするのではなく、より大きな地域で予算を確保し、データ収集を行い、それに基づく独自の観光体験を用意するというのは有効な方法と思われます。やはり中国人の若い層に焦点を当てた体験プログラムを用意するのが妥当であるとは思います。観光の超富裕層マーケットに関する記事ですが、観光だけに限らず、色々な分野のビジネスがマスにリーズナブルな一律価格で提供する形から、特別な体験を一部の人に高価格で提供する形に変わってくるはずです。ある種のフリーミアムとして。