2018年はもうすぐそこだ。新しいカレンダーをめくる前に、マーク・ザッカーバーグの新年の誓いを振り返ってみよう。
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは年初に、その年の抱負を発表する。風変わりな誓いもあれば、高尚な目標を掲げる年もあるが、毎年必ず実行してきた。ここで彼の過去の誓いを振り返って、私たちも新年を迎える心構えをしよう。

【2009年】毎日ネクタイを締める

地味なTシャツとフード付きパーカーが定番のザッカーバーグだが、2009年はひと味違った。
この年、アメリカは不景気の真っ只中で、フェイスブックはキャッシュフローの黒字化をまだ実現していなかった。フェイスブックは生き残れないだろうとみる人も多かった。つまり、2009年は会社にとって重大な年になると思われた。
ザッカーバーグはフェイスブックに次のように投稿している。「私のネクタイは、この1年がいかに重要で、真剣勝負の年になるということの象徴だ。だから毎日ネクタイを締めて、その決意を示す」

【2010年】中国語を勉強する

中国語を勉強するという誓いを立てた動機は、言うまでもなく、当時の恋人で今は妻となっている中国系アメリカ人のプリシラ・チャンの家族ともっと親しくなりたかったからだ。さらに、フェイスブックに大きな利益をもたらすであろう中国市場で、足がかりを築くという狙いも大きな理由だっただろう。
その決意は報われた。2014年に北京の清華大学で講演をしたザッカーバーグは、30分間の質疑応答を中国語で行い、好評を博した(NP注:原文では2013年となっているが、CNNの記事によると2014年の講演での出来事)。

【2011年】ベジタリアンになる

ベジタリアンになる、例外は自分で殺して処理した肉だけ。ザッカーバーグはフェイスブックの投稿で次のように説明している。「感謝の気持ちを実践したい。自分が食べるものや自分のために命をささげてくれる動物と、もっと結びつきを感じたい」
感謝の気持ちを取り入れた決意は、食習慣だけでなくほかの目標でも、精神と感情にプラスの影響を与える。

【2012年】プログラミングを勉強しなおす

ザッカーバーグをプログラミングの天才だと思っている人も多いが、実名制のQ&Aサイト、Quora(クオーラ)のスレッドを見るかぎり、そうでもなさそうだ。
IT企業の経営陣は、プログラミングのスキルを磨くべきだ。彼らがプログラミングに精通していれば、エンジニアとのコミュニケーションがより潤滑になり、製品開発に関する情報も提供しやすくなる。

【2013年】新しい人に会う

毎日(フェイスブックの社外で)新しい人と会うこと。この誓いはザッカーバーグに大きな力を与えた。新しい人と会うことによって、さまざまな視点や考え方を肌で感じ、ダイバーシティー(多様性)の価値を学ぶこともできた。
この年、フェイスブックのダイバーシティー担当グローバルディレクターとしてマキシン・ウィリアムズを迎え入れたことも、偶然の決断ではないはずだ。
人は多様な意見に接すると、自分の知識が広がるだけでなく、クリエイティビティとイノベーションへの意欲も駆り立てられる。

【2014年】毎日「サンキューレター」を書く

毎日、誰かに感謝の手紙を書いて、思いやりの気持ちを実践すること。ザッカーバーグはブルームバーグ・ビジネスウィークの特集記事で次のように語っている。「私はかなり批判的な人間だから、これは重要な課題だ。もっと物事を良くしたいといつも思っていて、基本的に現状に満足していない」
寛容を表現する行為を取り入れた決意は、さまざまな効果をもたらす。研究によると、寛容と親切にもとづく行為は、良い連鎖反応の引き金となり、その輪を広げていく。

【2015年】2週間に1冊、本を読む

この年は2週間に1冊、新しい本を読むことに挑戦した。異文化、信念、歴史、テクノロジー、あるいはこれらのうち複数のテーマに関する本が中心だ。
読書の効果は多岐にわたる。研究によると、本を読むという行為は語彙を増やすだけでなく、理論的な推理力の向上にもつながる。

【2016年】シンプルなAIシステムをつくる

映画『アイアンマン』に登場するAI執事ジャーヴィスを雇う。シンプルなAIシステムをつくり、家庭生活をパワーアップするのだ。
ザッカーバーグはフェイスブックの投稿で次のように説明している。「すでに存在する技術を調べるところから始める。続いて、システムに私の声を学習させ、音楽や照明、エアコンの温度など、自宅のあらゆることを声で操作できるようにする」
すべての経営者は、新しいテクノロジーに遅れないように努力しつづけるべきだ。ザッカーバーグはこの誓いを実践しながら、新しいテクノロジーを活用してフェイスブックが提供するものを向上させるための戦略を練った。
彼が1年間の成果を披露してまもなく、フェイスブックは人の感情を読む技術を開発していると発表した。偶然ではないはずだ。

【2017年】アメリカの全州を訪れる

自分が米国内でまだ訪れたことがない、約30の州に足を運ぶ。旅に関連する決意も、さまざまな恩恵をもたらす。非営利の研究機関トランスアメリカ・センターのある調査では回答者の86%が、旅は人生に対する気分や展望を改善すると考えている。
このような誓いを立てた主な理由は、気持ちを上向きに駆り立てたかったのだろう。INTJ型の性格(NP注:飽くなき探究心、独立独歩、俯瞰力と分析力などが特徴とされる)らしい考え方でもあり、人生の展望を明るくしたいという熱意に駆り立てられたのだろう。
実は、筆者が以前からひそかに思っていることがある(想像するだけで、どこかわくわくする)──ザッカーバーグは2020年の米大統領選に出馬するつもりではないだろうか。
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今年も新しい1年の抱負を考える時期を迎えた。ザッカーバーグの誓いを参考にすれば、「睡眠時間を増やす」「やせる」「フェイスブックで費やす時間を制限する」といった定番の誓い──1月1日に宣言して、2月が来るころにはあきらめている誓い──ではなく、新鮮な視点で考えられるだろう。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Rebecca Hinds/Organizational physician and entrepreneur、翻訳:矢羽野薫、写真:marchmeena29/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.